過敏3-2-1
部屋に入ると、男は、椅子に座りもせず、そそくさと動きまわり、そして、脱衣かごのような物を私の前に置いた。
「脱いだもの、ここに、どうぞ」
気をつかっているつもりなのだろう。
「とりあえず、シャワー、浴びてきていいかしら」
「そんなの後がいい。早く、こっち来て」
男はすでに全裸になっていた。おとなしそうな風貌とは逆に、そこは、黒く大きかった。また、洗っていないものを咥えさせられる。どうして、私が出会う男はいつもこのパターンなんだろう。ところがこの男はこれまでの男とは、違うことをしたのだ。
唖然とした。ここに昼寝にでも来たというのか。男は、ベッドの真ん中に仰向けになると、うーん、と伸びをし、だらしなく足を広げた。
「早く、早く、こっちに来て」
まるで、新しいおもちゃを見つけた子どもが母親にせっついているような、そんな口調だった。
とりあえず、モノは大きそうだ。勃てば、それなりに気持ちいいのかもしれない。フェラして、立たせて、入れたら先に帰ればいい。そう思った。
「あん、ああ、いい、気持ちいいよお」
咥えるとすぐに男は、まるで女のような喘ぎ声をあげた。私は、男のモノのおしっこ臭をかき消すために、唾液をたくさん出した。それが、潤滑剤となるのだろう。
仰向けになった腰を、下からびくびくと上下させている。しかし、どんなに亀頭を舐めても、口をきつくすぼめて、その速度を上げても、完全に勃起しないのだ。
これまでの男なら、これくらい舐めたら、私の手を押し返すくらいに硬くしてきたというのに。すると、男はこう言ったのだ。
「こっちに来て」
男は自分の顔を指さした。
「顔の上に跨ってよ」
どうしてこの男に命令されなくちゃならないのよ。私は少し腹が立っていた。
「シックスナインね」
投げやりな言い方になってしまった。しかし、男はめげないどころか、馬鹿にしたような口調でこう続けた。
「違うよぉ。顔の上にまたがるだけだよ」
顔面騎乗になれ。そういうことね。それをすれば勃つ、とそういうことなの。それなら、それで、勃ったら、とっとと入れて、終わりにしてしまえばいい。
「ああ、ああ、いい匂いだ」
男は、ふんふんと鼻をならしながら、アソコに舌を這わせてきた。ところが舐めるのは表面ばかりだったのだ。もっと、アソコを開いて、気持ちのいい突起を探して。
これならオナニーの方が百倍まし。もう、やめてしまおうか、と、そう思ったときだった。男の黒いモノが、むくむくと大きくなってきたのだ。
「ああ、もう、ほしい」
嘘だった。早く挿入して終わらせたかった。それだけだった。
「だめだめ。だめだよう」
「なにが、だめなの。私だって我慢できない」
さらに嘘を続けた。
「ボクだって、欲しいんだもん」
男は、すっかり小さな子のような口調になっていた。いったい何歳になっているつもりなのだろうか。私は、せめて、入れて終わりにしよう、とそう思っていたというのに。フェラして、顔騎して、その上、いったい何が欲しいというのだろう。
「なに、なにがほしいのよ」
怒鳴り声に近くなっていた。しかし、男は萎えるどころか、さらにその先端は、剥けて、先端からは、たらり、と、涎をたらし始めていたのだ。
「んん、早く、早くほしいよぉ。出して、出してえ」
そう言うと、男は、はじめて私のあそこを下から広げた。そして、これまでされたことのない小さな穴に舌先を押し付けてきたのだ。
男は、その小さな穴に、少しだけ舌をめりこませるようにしていた。細かい動きもできるんじゃないの。私は腹立たしくて、たまらなくなった。この顔面騎乗の体勢でいること自体も疲れるのだ。だから、この男は鍛えている女を選んだのか。
「やだ、そこ」
妙な感覚。初めての感覚に、私は思わず声をあげてしまった。微かな痺れとともに、ツンとした痛み。それがだんだんと快感に変わってきてしまっていたのだ。
「ああ、出そう、出そうなんでしょ。ちょうだい、早く、早く」
男は、喘ぎ声と共に、自分でしごき始めたのだ。
「そんなの、だめでしょ。ベッド、汚しちゃう」
「ボク、ちゃんと飲むから、平気だよぉ」
「ええ、飲むって」
「平気だよ。ベッド、びしゃびしゃにしても、平気だって、ほらあ」
そうだった。ここはラブホ。セックスをするだけの場所。
これまでは男の家だったり、シティホテルでのセックスだった。
中で出されたときは、男の精液をベッドにこぼさないように、アソコを手で押さえながら、シャワールームに急いだものだった。
「で、でも」
小さな穴が少し膨らむのを感じた。恐怖に似た感覚に、その穴をキュっとひっこめるようにした。やっぱりダメ。男の顔の上で、おしっこ。そんなのダメ。
「ほら、出そう、出そうなんでしょ。出して、いいからあ」
「無理よお」
そんなやりとりを何度か繰り返した。男は私のその穴に口をつけたまま、自分の手で
しごいてはやめ、を繰り返している。寸止めを楽しんでいるのだろうか。
その先端は、これ以上、もう出ない、という程に皮からせり出し、真っ赤になっていた。いまにも射精しちゃいそう。入れたい。私は、男の口から、逃げようとした。
しかし、それをさせまい、と、男は私の腰をつかんだのだ。そして、こう言ったのだ。
「ジュースちょうだい、ママ。ママ、もう出ちゃう、ボク、ごめんなさい。ママ、あ、ああ」
男の体がガクガクと二度ほど大きく震えた。その直後、腰をグンっと突き上げた。それと同時に、白い液が飛び散り、男はさらに大きな喘ぎ声をあげた。
挿れてもいないというのに。