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月蝕
【痴漢/痴女 官能小説】

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過敏3-1-1

 まさか、上から舐めろってこと。ベッドに仰向けのままの男が「早くこっちに来て」と、私そう言った。
 男は立ったまま、それを咥えさせる。これまではいつもそうさせられていた。
頭を押さえ、私の顔を両手ではさみ、前後に動かす。その上、喉の奥まで入れたがる。 これまで付き合った男はそんなフェラを好んだ。ところが、今度の男は違っていた。
 待ち合わせは池袋北口。改札を出たところにある花屋の前。池袋には、あまり降りたことはない。しかも、北口を使ったことは、これまで一度もなかったように思う。そのため、わかりやすい待ち合わせ場所をお願いしていたのだった。
「はじめまして。あ、あの、リカさん、ですよね」
 私は黒のワンピース。男は、茶色のジャケット、下はベージュのチノパン。メールでやりとりした通りの服装。すぐにわかった。
 その男は、丸顔で、髪には、ひよこのしっぽのようなハネがあった。まるで寝起きのよう。待ち合わせは午後一時。朝、シャワーを浴びるくらいの時間は十分にあったはず。
 違います、と、素通りすることもできたのだろうが、さすがに、それはしなかった。
「はい。そうです。はじめまして」
「じゃ、じゃあ、行きましょうか」
 おどおどとした言葉遣い。その上、猫背。年齢は、たしか四十五歳と言っていただろうか。階段を上るスピードはやけに遅かった。しかも、階段を上り切ったところでは息を切らす始末。
 体力、筋力の無さからすると、まるで老人。しかし、見た目は、どう見ても私より年下に思えてならなかった。年上を好む女性が多い、と、そうした情報から、四十歳以上の設定にしていただけなのだろうか。

 『S男四十五歳。晒して感じる貴女、 淫らでふしだらな姿を私の前で晒してごらん』

 晒してごらん。その言葉に惹かれて、やりとりをはじめた。猫背でトボトボとした足取りで歩く、この男。本当に、この男が考えたメッセージなのだろうか。思えば、メールでは、セックスについての話はあまりしてこなかったように思う。
 慣れていなかったのだ。出会い系で会うのは、この男がはじめてだったからだ。
北口を出て、少し歩いたところで、男は急に立ち止まった。
「ここ、ここの焼き小籠包、すっごく美味しいんだよ。帰りに食べてく」と、カウンターしかない店の前で、男は嬉しそうにそう言ったのだ。
 デートのつもり。まさかね。単にセックスをするだけ。出会い系って、そのためにあるのでしょ。ぶっきらぼうに、私はこう答えた。
「へえ、そうなんだ」
 私が言うか言わないかのうちに、男はこう続けた。
「美味しそうでしょ。けっこう並ぶんだよ」
 男は、いかにも自分がすごい店を知っているとでもいうように、自慢げにそう答えた。小籠包の美味しい所など、仕事の付き合いで何度も行っている。珍しくもなんともなかった。
 そのまま進むと、黒い壁の建物があった。ラブホというのは、もっと派手は造りなのかと思っていた。男は手慣れた様子で、光っている部屋の中から、一番安い部屋のボタンを押した。


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