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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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異変-5

早朝、屋根裏部屋に恵の姿があった。違和感を感じ起きてパジャマのままだ。

〈気になるの?〉

とマザーが恵に話し掛ける。恵は頷き、

(ええ、やっぱりおかしい。)
(今から見に行く。)

恵が気にしていた哨戒センサーに明らかな通信障害のノイズが含まれていた。それにいくつかのセンサーで位置情報が不明瞭になる時がある、今までに無かった事だ。事は急を要する。

恵は屋根裏部屋から階下に降り、玄関を出るとすぐ近くの納屋に入った。納屋には、自家用車や敷地内を整備する為の芝刈り機や用具類が置いてある。

自動車を納屋の外に移動させ、芝刈り機や用具類を納屋から出すとマザーに合図を送る。すると納屋の床が真ん中から左右に開いて地下室が現れた。恵は地下室に飛び降りて、壁際に置いて有るクローゼット開くと奥の隠し棚から強化スーツを取り出す。

全裸になり強化スーツを身に付け姿見で確認する。上半身は青い身体にぴったりフィットしたウエアで手首まである、下は赤いミニスカがその下のオレンジのパンツを隠していた。

太腿は薄い肌色のパンストで覆われ、膝まである赤いブーツをはいていた。背中には赤いマントを羽織り、胸に大きなVの字のマーク。最初見た時、冗談かと思ったがマザーが言うにはコミックのスーパーヒロインを参考にしたと言う。テレビドラマにもなっているらしい。

このマザーが作った強化スーツは、アルファの戦闘用スーツと同等の性能で、人類の対人兵器を受けても無傷で済み、べガァの物でも怪我を負わせるのは難しいと言う防御機能を持つ。

そしてこのスーツを着用すると恵の普段は強めの天然パーマが掛かった黒い髪が金髪のストレートに、身体は10才程若く変化する。これもアルファの人体改造技術を持ってすれば容易い。テレビドラマのヒロインは若いからとマザーは説明した。

恵はこのスーツに難色を示したが、活動中の恵を人間に目撃されても夢だったと思うかも知れないし、コミックのヒロインから口止めされれば口外しないのではとのマザーの説明だった。実際にはコミックのヒロインみたいに人助けはしないのだが。

コミックのヒロイン見たいに、シップの様に飛翔したり目から光線を出したりも出来ない。様々な環境で活動出来るようにと体を遺伝子操作で改造強化してはあるが。まあ、殴りあえば、人類では恵に勝てる者は居ないだろう。ベガァ人でも難しい。それに思わぬ危険な場面では両腕に嵌めたブレスレットが機能する。

恵を守る為シールドを張り、敵を撃退する為相手の動きを封じる事から破壊までを選択出来るビーム兵器が備わっていた。だが、戦闘の可能性が有る場合は、応援を求めるのが基本だが。

恵は、シップの前に立った。シップは全長10m弱で幅5m高さ3mの大きさだ。マザーが恵が乗り込む為の入り口を開く、恵は中に入り念の為に機器の点検を一通り済ませると格納室の透明なカプセルで横たわる自分自身を見つめる。

アルファの宇宙服に身を包み目を閉じていた。人工睡眠モードで生命維持装置も問題無く作動している。既に恵の体には慣れたが、最初の頃は本当の自分の体に戻りたいと思う事もあり、自分を見に良くここに来ていた。初めての『融合』であったし、元に戻れるかと言う不安もあった。そんな事を思い返しつつ、

「シャトルを使う。」

とマザーに久しぶりにアルファ語で話す。思考で無く音声で。マザーもアルファ語で、

「格納庫から出すわ。」
「気を付けてね。」

と音声モードで返した。恵は笑顔で、

「ええ、ありがとう。」
「これからは、通信は戻るまで控える。」
「リスクは負いたくないから。」

と返して船外に出る。地球外からシップまでの通信のやりとりをベガァ人に察知されたく無かったのだ。だが、恵はベガァ人は居ないだろうと思っていた。それを窺わせるデータは一切無かったからだ。

シップの隣に長さ2m、幅1m、高さ50cmのシップの小型版見たいな宇宙船が置かれている。その銀色のシャトルはアルファ人の一人乗り用だが、恵の体でもなんとか乗れた。楕円形の入り口から仰向けに寝る様に横になる。

すぐ入り口は閉じてゆっくりと上に浮上した。浮上しながら迷彩機能が働き透明になり見えなくなる。シャトルが納屋を出て空にスピードを上げ向かって行くと納屋の地下室の入り口は閉じた。



 恵の乗ったシャトルはあっという間に地球の外に出た。人類の原始的なレーダーや監視衛星に捕らえられる心配は全く無かった。さっそく、地球に近い順に哨戒ユニットのセンサーのチェックを始めた。哨戒ユニットのチェックは順調に進んだ。機器の動作も問題無く、ケイトは訝しむ。

(何の問題も無い。)
(じゃあ、あの通信障害らしき物やセンサーの位置情報の喪失は何だったのか?)
(太陽の異常な放射線による一時的な物かな?)
(今までそんな不具合は聞いた事が無いし。)

と少し戸惑っていた。マザーとの通信をオフにしている為、自分で思考しているだけだ。その為かいつもと違い違和感があり、恵は苦笑いする。

そして、太陽系の端に設置した最後の哨戒センサーをチェックしたがこれも異常が無い。恵は自嘲気味に、

(私が心配性なだけかも。)

と思い、マザーと連絡を取る事にした。念の為、地球に近づき人類の衛星の電波に紛れ込ませ、暗号通信を送る。

〔問題無し!〕

と送るやマザーがやはり暗号通信で、

〔戻るな!危険!〕

と即答してきた。恵は驚き、少しパニックになる。通信を改めて確認するが間違い無い。AIマザーは、パートナーのアルファ人を守るのが最も優先される様にプログラミングされている。戻るなとは、シップがマザーが危険な状態と言う事で有り、正輝もそうだろう。

(どうすべきか?)

恵は今までに経験した事の無い事態に見舞われた。


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