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人気少年【制約】
【学園物 官能小説】

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人気少年【制約】-8

『麻理子ちゃんね、引っ越すんだって。あした』

は?
『いや、ね。麻理子ちゃんは真緒くんに知られたくなかったみたいだけど、
あたしはさ、知らせなくちゃなと思って。真緒くんに。
実はさっき電話しよーかなー、でも余計なお世話かなーとか思って悩んでたトコなんだ』
耳を疑うよりも先に春霞を疑った。
「あは、ジョーダンうまいね春霞ちゃんは〜」
『冗談じゃないよ。あし嘘つかなーい。
もう長い付き合いなんだし、ちょっとは信用してほしいなー』
「でもさあ……」
信用してというには余りに唐突すぎる。冗談じゃないならこんな唐突なことあるだろうか。
あの麻理子が引っ越し、しかも明日にだなんて。
眠気に似た、異様な感覚が全身を包む。受話器を持つ手が震える。
「じゃ、じゃあ……春霞の言ってることは本当だとして……麻理子はどこへ引っ越すの?」
『仙台だってさ。親の仕事の都合っ』
頭の中で、何かが壊れるような音が聞こえた気がする。
ボクや麻理子の住むここは千葉県。仙台と言えば確か宮城県。遠すぎると言えるほどに遠い。
そんなところへ、明日……ボクの身近な人が……?
『冷静に……考えてみなよ真緒くん。なぜ今日、麻理子ちゃんはキミに告白したのか。』
「……」
そうだ。
奥手だったはずの麻理子が、突然ボクに大きくアプローチし、告白までしたのは……
この地に未練、後悔を残さないため、おそらく自分にけじめをつけるためだったんだ。
麻理子はボクの正直な気持ちが聞きたいだけだった。
ボクも、彼女も、付き合うことはできないという条件は同じだったんだ。
なら……『好き』と言うくらい何でも無かったじゃないか。それを、ボクは……
こんな後味の悪い結末あるものか。
『麻理子ちゃんはきっと今も誤解したまんま家にいるよ。このまま行かせちゃうワケには……いかないよね』
当たり前だ。
『行っちゃうのは確か明日の夕方だったはずだよ。あたしも、明日別れの挨拶しにいくから、真緒くんも一緒に』
「いや」
『ん?』

このままだと、麻理子は多分最悪の夜を過ごすことになる。
それを想像すると、胸が痛む。ボクだって、きっと最悪の夜になる。だから――

「いま、行こう」

『え、いま!?』
春霞は心底驚いたような声を出した。
「そっ。行くなら早い方がいいでしょ。だからさ、春霞自分ちの前で待ってて。いま行くから」
ボクは女の子達とはあまり込み入った関係にはならないよう心掛けてるので、麻理子の家がどこかは知らない。春霞の案内が必要だ。
『ちょっ、いきなりだなあ。あたしまだ制服だよ』
「制服でもいいさ。ボクだってまだ制服だし。じゃあ、いま行くから待っててね!」
『あ、うん。わかった!』
ボクは受話器を置き、バッグを手に取った。時計を見る。七時半を指している。
急がなきゃ。ボクは勢いよく部屋のドアを開け、階段をおりる。
「あれ、真緒ちゃんどした?どこ行くんだー?」
美兎がなんか言ってるが無視し、家を出た。


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