人気少年【制約】-7
"ずっと好きだったの。ずっと…。真緒のこと…
…お願い、真緒の気持ち聞かして。真緒の…正直な、気持ち"
麻理子の告白の言葉がリピートされる。
…電灯の光はボクを執拗に突き刺している。痛いほどなはずなのに、まったく気にならない。
付き合えないと知って落胆すると分かっていても、『ボクは麻理子は好き』
この一言だけでも伝えていれば、もう少しボクの後悔は薄れていたかもしれない。
――どのみち月曜日に麻理子に会って弁解すればいいハナシなのだけれど。
ただ、月曜日まで休日は二つも挟まれている。二日三晩もこのモヤモヤを抱いたまま過ごすとなると…危険だ。
麻理子もボクの感情を間違えて捉えたまま休みをすごすのだと考えると、胸が苦しくなる。
だが仕方がない。どれだけ自分を恨めしく思ったところで、時間は手を貸してくれない。そう、仕方がないのだ。
ふと、ボクの目を突き刺す光が鬱陶しく感じられた。
ボクは灯を消し、静かに目を閉じた。そうだ、少しでも時間を早めよう。
…瞼の裏に、今日の日の光景がストロボのように断続的に映し出される。
頭の中に、今日聞いた台詞が無整列に垂れ流される。
"真緒!実は私――なんでもない、ゴメン…"
"そういえば、真緒くんは麻理子ちゃんのあの事もう知ってるよね?"
……そういえばあったなこんな台詞も。
……
麻理子は、あの時『好き』以外の『なに』をボクに伝えたかったのか。なぜ『あの時に』伝えようとしたのか。
そしてそれを、なぜ引っ込めたのか。
半分だけ開き、すぐに閉じた麻理子の口。
気になる。
気になる!
――"あの事"ってなんだ。"実は"なんだ!気になる気になる気になる!
どちらも同じ答えのはず。一体麻理子はボクに何を隠しているんだろう。
ボクは飛び起きた。…春霞はもう帰ってきているだろうか。春霞から聞き出すしかない。
今出来ることは、今からやるしかない。
ボクは机へ向かうと、引きだしを開けていき次々に中をまさぐっていった。
ぐちゃぐちゃにしまってあるプリントの山を掘り返していく。その中に目的の物はあった。小学校の連絡網。
ボクは電話に飛び付くと受話器を取り、連絡網を見ながらその番号を押していった。
…受話器が若干酒臭くて不快だが、そんなことは言ってられない。
発信音が耳をくすぐる。すぐに発信音は声に変わった。
『ハイ雨宮です。どなたさまですか?』
出たのは春霞本人だった。
「あの…雪野瀬です。春霞?」
『あ、真緒くんこんばんはー。どしたの?』
くちゃくちゃとガムを噛む音が聞こえる。
「あの、麻理子のことなんだけどさ」
『エ?麻理子ちゃんのこと?』
くちゃくちゃが消えた。
「あの…今日の朝さ、言ってたじゃん。麻理子がボクに隠してること…。教えてよ、気になるんだ」
電話の奥で、春霞が少し思案する。
『あぁ〜、そのことね……そういえば真緒くん、今日、麻理子ちゃん振ったんだって?』
「えっ、知ってたの?」
『ウン。麻理子ちゃんが言ってた。』
「そんな…」
春霞にも告白のことが伝わってたという事実よりも、麻理子が"振られた"と伝えていることにボクは再び落胆した。
「あのね、春霞。ボクは振ったつもりはないんだ」
『ん、どゆこと?』
「付き合えないって言いたかっただけで…麻理子が好きじゃないワケじゃないんだ。むしろ好きだよ。」
麻理子に言いたかったことを、吐き出すように春霞に言う。
「でも、そんなこと言ったらさ、かえってアレじゃない?付き合うつもりもないのに好きだなんて…だからさ、その…」
『教えたげるよ』
「え?」
春霞がボクの言葉を遮った。