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人気少年【制約】
【学園物 官能小説】

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人気少年【制約】-6

「ばいばい、真緒。無駄な時間取らせちゃってゴメンね…」
麻理子が帰っていく。傍目から見ても明らかな程に暗い足取りだ。
――ダメ、帰っちゃ…ボクは…キミは…
「麻理――」
「真緒!実は私――」
こちらを振り向き、ボクの言葉を遮るように麻理子がそう言った。
真剣なまなざし。麻理子の口が半分だけ開いたが、すぐに閉じた。
「…なんでもない、ゴメン…」
麻理子は再び身を返し、暗い足取りのまま立ち去っていく。
ポニーテールは、横に揺れていない。いまの麻理子の気持ちをそのまま伝え表してるかのように。
やがて麻理子の姿が見えなくなった。
……麻理子……
ボクは罪悪感と後悔に打ちひしがれた。
「…おい、雪」
声が聞こえる。後ろを向いた。石田と風見がいた。
ボクを尾行でもしてたのか。どうでもいいけど。
風見は近寄ってきて、元気づけるようにボクの肩をたたいた。
「お前に責任はないさ。さ、帰ろう…」
風見がボクの肩を抱く。ボクは半ば風見に連れられるようにして歩き出した。
風見と石田がなにやらボクに向かって言っている。耳に入らない。
胸の熱さはいつの間にやら痛みに変わっていた。



「お帰り、真緒ちゃーん」
玄関にて、妹の美兎(みう)がボクを出迎える。
「ただいま…」
ボクは美兎を押し退けるようにして階段を昇った。はやく部屋に帰りたい。
「ちょっと真緒ちゃんー!人を押してどかすなんてヒドいぞー!」
ボクは無視した。

二階の廊下に並ぶ三つの部屋。ボクは真ん中のドアに手を掛けた。『真緒』と書いた名札が張ってある。
ドアを開ける前に、部屋の中から何か声がすることに気付く。誰かと話しているみたいだ。まさか…
ボクはぐっとドアを押し開けた。
部屋の中には案の定、姉の芽衣がいた。ボクの電話を使っている。
「あ、ゴメーンちょーど弟帰ってきちゃったから切るね!またすぐ掛けなおすから。うん、うん、バーイ!」
姉はガチャリと受話器をおいた。悪戯っぽい笑みを浮かべながらボクの方へ振り返る。
「おかえりなさーい真緒ー」
「…あのさー、勝手に部屋入って人の電話使わないでくれるかなあ」
「ケータイ解約されちゃったんだもの、仕方ないぢゃん!」
「じゃあ一階の電話使えばいいのに。」
「下まで行くのめんどいっしょ」
まったく、この人は…相変わらずグータラの塊みたいな人だ。
こんなんでも大学に通えているってんだからすごい。
「真緒もさー、ケータイ買えばいいんだよね。中坊にもなってこんな据え置きの電話なんか使ってる奴なんていないべ?」
「余計なお世話だよ」
携帯電話なんか持ってたら、色々とややこしくて面倒くさいことになること請け合いだ。
「ケータイは便利だから持っといたほうがいいよお。特に真緒みたいな人種には必需品だと思うよ。
明日ガッコ休みでしょ?おネーちゃんが一緒に買いにいってあげよっか?」
「だから余計なお世話だって。早く自分の部屋に帰ったらどう?」
少し冷たく言ったつもりだが、なぜか姉は笑い出した。
「アハハハ!はいはいはーい、帰りまーすよー」
フラフラとおぼつかない足取りで部屋を出ていく姉。姉はグータラなだけではなく酒飲みでもあるのだ。
ボクは一度ためいきをつき、制服も脱がないままベッドに転がった。
…電灯の光がボクの目を突き刺す。ボクはそれを好んで受け入れる。
今日のことを、冷静に思い返す。途端に、また後悔やらなにやらが押し寄せてくる。


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