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人気少年【制約】
【学園物 官能小説】

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人気少年【制約】-5

「友達と話しててサ、遅くなっちゃった…ゴメンね」
「ううん、来てくれただけで嬉しい。」
「で…用って、なに?」
わざとらしくならないように気をつけて言った。
用が何かなんて分かりきってるはずなのに、あえて聞くボクはひどく意地悪かもしれない。
「あのね…」
麻理子がまた下を向く。
次に麻理子が上を向いたのは、意外とすぐだった。
そして、ボクが待ち望んでいた言葉を麻理子が発したのは、それとほぼ同時のことだった。
「私、真緒のこと好き…」
途端に、ボウと胸が熱くなる。
麻理子はボクをまっすぐ見据えている。まっすぐ、まっすぐ。
まっすぐ見据えたまま、ボクに言った。
「ずっと好きだったの。ずっと…。真緒のこと…
…お願い、真緒の気持ち聞かして。真緒の…正直な、気持ち。」
麻理子の目が、ボクを突き刺す。
舌が痺れる。固まったように、唇が動かない。
答えは…決まっているのに。

ボクは麻理子が好きだ。

だからこそ、言えない。

麻理子の目。期待している。ボクの発言。『ボクも麻理子が好きだよ』…その言葉。
期待されてるなら期待に応えればいい。それは容易なこと。ボクも好きなんだから。
迷いに頭が熱くなる。
期待に応え、気持ちを伝える。それがなぜ出来ないか?…そんなの分かりきっている。

彼女を落胆させてしまうから。

――ああもう、何いまさらゴチャゴチャ迷ってるんだよボク!ボクは『それ』を伝えにここに来たんじゃないか!
――『ソフト』に、『傷つけない』ように、その事を伝える計画をさっきまで練ってたじゃないか。
それがなぜ今言えない。

ボクは麻理子と付き合えないと。

ボクは人気者。特定の人とずっと付き合うとなると、みんなとの距離が疎かになる。必然的に人間関係は複雑になる。
それにボクは、一人の女の子だけをずっと見て暮らすなんて器用なことをこなす"自信"がない。
現に麻理子だって、いまたくさんいるボクの好きな子の中の一人にすぎないのだ。
だから付き合うワケにはいかない。コレはボクのためであるし、彼女のためにもなる。
それを言いにきたはずなのに…『期待』する麻理子の目が、ボクの舌を痺れさせる。
脳裏に浮かぶ、落胆する麻理子、傷つく麻理子の姿が、ボクの唇を固めさせる。
言えない…

「ゴメン」
「え?」
謝ったのはなぜか麻理子のほうだった。
「真緒はみんなの人気者。私だけが独り占めしようなんて…いけないよね。」
「あっ」
ボクは驚いた。麻理子は分かっていたんだ。
ボクが特定の人と付き合うワケにはいかないこと。
麻理子はカバンを持ち上げ、身を翻した。
「そうだよ、人気者の真緒が…私なんかを見てくれてるワケないものね。」
「え!?」
麻理子が驚くべきことを口にした。
――違う、君を嫌いなワケじゃ…


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