人気少年【制約】-13
麻理子はふと目をとじ、なだれ込むようにボクの口に吸い付いた。
先程の二回とは比にならないほどに、情熱的で激しい、えっちなキスだった。
吸うだけではなく擦り付けている。ボクの唾液と麻理子の唾液が擦れあい、にちゃにちゃと淫猥な水音がたっている。
「ん……むちゅ……は………」
唇の隙間から、吐息に混じって声が出ていく。それがさらに興奮を高めていく。
熱くてとろけそうだ。とろけて混じる。混じってとろける。心地よさも、興奮も、雨音も……
いつの間にか濡れた塊がボクの口内をはい回っていることに気付いた。
ボクの舌を撫でている。求めている。朦朧とした意識のままボクもそれを受け入れた。
這いずり回り絡まり合う二つの熱く濡れた塊。じゅうっ、と唾液が染み込み合う音が聞こえる。
ボクと麻理子の唾液がめちゃくちゃに混ざり合い、喉に落ちていく。
そのままどれだけ、ボクと麻理子は口をむさぼり合い熱を与え合ってただろう。意識が飛びそうになってきた頃に、麻理子は顔を離した。
ぴちゃ……と音がしボクの舌と麻理子の舌に唾液の橋がかかり、消える。
それは、今しがたボクと麻理子は激しく口を擦り付け合っていたのだという確かな証拠だった。
麻理子の顔は更に紅潮している。先程の情事を象徴するように吐息が乱れている。
それを見ると、ますますボクの中の何かが首をもたげてくる。
麻理子は、その気だ。ボクと、今日最後までする気だ。
「沖田さん……ボクたち……」
そう言ってから、自分の呼吸も乱れていることに気付いた。
「ボクたち……今からするの?えっち……」
緊張しないためあえて柔らかい響きの単語を選択したつもりだが、かえって淫靡な雰囲気を醸し出してしまう。
麻理子はボクの問いにすぐに答えた。
「真緒は、いいの?私は……真緒と、したいよ……」
吐息混じりに、麻理子はそう言った。やはり麻理子は完全に『その』気だったんだ。
途端に、自分の身を覆うYシャツやらズボンやらが鬱陶しく思えてくる。
「するなら、さ。えと……服、脱がないと」
ボクは冷静に呼吸を整えながら言った。
麻理子は、ボクの一言ではっと目が覚めたように目を柔らかくし、ほほ笑んだ。
「あっ、そだね。それに、こんな場所で……あは、落ち着かないよね」
麻理子が立ち上がり、うーんと背のびをする。ボクもその気あるんだと分かって、心に余裕が出来たみたい。
「私の部屋いこうか。部屋でしよっ」
麻理子は明るめにそう言うと、ボクの手を絡め握りながら、ソファのすぐ隣にある階段をのぼりはじめた。
ボクの胸が、また一度ドキリと高打った。
麻理子がボクの手を突然繋いだことや、その手が異様に暖かかったことにもドキリとしたが、
『したいよ』とか『しよ』とかいう麻理子の言葉が、一番ボクの胸を高鳴らせた。
この二文字だか四文字には、文字の数や軽い響きに見合わないとてつもなく深い意味があるのだ。
麻理子はボクと"性行為"がしたくて堪らないし、今からするということだ。
ボクと麻理子は"性行為"をする。そのためには全部さらけ出しあって、互いに全部を受け入れ合わなければいけない。
それは、口に出すだけで恥ずかしくて赤面しそうな、一般的な場所では下品と呼ばれ一蹴されるような行為を、
互いにおくびもなく何度も繰り返し、叫び声をあげたり変な液を吹き出したり見せつけ合い発情し合うことを指すのだ。
その、なんていうかまあ、ダイレクトに言えば、あそこ触って、舐めて、あそこにあそこ入れて動いて、出して……やっぱり、なんだか下品だ。
そんな行為を麻理子はボクとしたくて堪らないし、今から、やる……
元はと言えば、ボクはただ『弁解』のためだけにココに来たはずなのに。予想だにしなかった展開だ……
目の前の麻理子を見つめた。Yシャツに透けるブラジャーに、短めのスカートから伸びる白い足と紺のニーソックスのコントラストがなんとも煽情的だ。