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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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メロンソフトと芝生と世界にひとつだけの笑顔-3


 すんごくもったいぶった口調で言ったしのちゃんが、三分の一くらい舐めたライトグリーンのソフトクリームをにゅ、と俺の顎の下に突き出す。遠慮なく、しのちゃんが舐めて溶けかけたクリームにしのちゃんの舌先の唾液が残ったメロンプラスアルファの芳醇な甘さを舐め取る。同時に俺の左手のコーヒーソフトにしのちゃんがぐい、と顔を近づけてちっちゃくてかわいい舌先で淡いブラウンのクリームをぺろ、と舐める。にがーい、と言うしのちゃんのすきっ歯がクリームと唾液で光る。今日はジーンズだから、履いたまま勃起すると痛いので眼の前で咲きかけている黄色い菜の花を見てしらじらしく「きれいだなあ」と思って血流をコントロールする。
 コーンごとぺろり、とソフトを食べ終わり、コーンを包んでいた赤と白のトリコロールの紙をゴミ箱に捨て、そのまましのちゃんと手を繋いで菜の花の間の小道をゆっくりと歩く。すれ違うのは、俺たちと同じような年格好の親子や、ちょっと年齢の高いカップルや夫婦。

「ね、あたしとお兄ちゃん、こいびとに見えるかな」

 しのちゃんが「な」の形に口を開いたまま俺を見上げる。さっきまでソフトクリームを舐めていた淡紅色の舌が唾液で湿って、三月頭の昼の光を受けて柔らかく光る。

「うーん、たぶん、親子だと思っている人がほとんどじゃないかな」

 あの二人はもしかしてつきあってるんじゃないか。26歳の俺と8歳のしのちゃんとの組み合わせを見てそう思うのは、よほどの深読みをしているか俺と同じようなペドフィリアかどっちかだろう。人間は他人を判断するときにどうしても自分自身のことを反映させてしまうものだ。

「えー、やだ。お兄ちゃんとラブラブだと思われたい」

 「な」の形だった口が閉じて軽く尖る。

「んー、じゃあさ、もっとこう、俺の身体にくっつくような感じで」

 言葉が終わらないうちにしのちゃんが俺の手を離し、左の脇腹にぎゅ、と8歳の身体を押し付けながら右の脇腹へ両手を回す。左側からしがみつくように俺の身体を抱きしめて、胸の下でにへー、と笑いかけるしのちゃんを左手で強く抱き寄せる。まあ、欧米とか、あと韓国なんかも結構密着度高いらしいけれど、世界のそのあたりでは珍しくもなんともない、大人の男と幼女との「ラブラブ」なハグ。いいんだ誰に何を言われても、いま俺たちを追い越していったJCとDCのカップルのうちの男の子がちら、と俺たちを振り返っても。俺としのちゃんは、強く愛し合っているんだ。愛って、意味するものは広いんだよ。DCにはまだわからないかもしれないけど。
 しのちゃんと抱き合って、菜の花が乗った風としのちゃんの髪の匂いが混じった甘い香りを嗅ぎながらさらにゆっくりと歩き、なだらかな坂になった小道を登りきると、以前はレースコースの内側に設けられていたっぽい、小高い丘のようになった芝生がそこに広がっている。ピクニックシートを広げて座っている家族連れの間を抜け、芝生の東の端っこ、駐車場が見渡せる場所にしのちゃんと並んでしゃがむ。ふー、と息を吐いたしのちゃんが、俺の身体にもたれかかってくる。かすかに汗ばんだしのちゃんの腕、オフホワイトのショートパンツから伸びるしのちゃんの素足。肩のちょっと下あたりから漂うしのちゃんのメロンの香りがかすかに残る息臭。春を告げるさわやかな東南東の風と、小学2年生の「こいびと」の肌のぬくもりで勃起しかけている煩悩とのギャップ。いや、今日ここへ来た目的は、そんなエロい多幸感に浸るためじゃない、浸ったって別にかまいはしないんだろうけど、ケジメが。

「あのう、しのちゃんさ……」

「ん?」

「俺、あの……実は、あの……」

「いどう、だっけ?いつになるかかわっちゃったんでしょ?」

 え。

「あ、ああ……なんで、しのちゃん」

「ママがちょっと言ってた。でも、お兄ちゃんからちゃんと聞きなさい、って、ぜんぶは聞いてない。ね、お兄ちゃんはいつぐらいに来るの?」

 「の」の形の唇が愛らしい。けど、そこに唇を重ねる気分じゃない。人目っていうのもあるけれど。

「うん……実は、はっきりとは決まっていないんだ」

 しのちゃんの目をちゃんと見ることができない。

「で、でも、宮古島に行かないってわけじゃないんだ。いつなのかが未定になったっていうだけで……だって、俺、俺……」

 言葉がうまく続かない。そのかわり鼻の奥になにかツーンとする痛みが走る。

「俺……しのちゃんと離れるなんて……無理だから……」

 なんでこうも気が利かないんだ。なんで自分のことしか言えないんだ。俺が寂しい、俺がつらいなら、しのちゃんだって同じじゃないのか。俺より18歳も年下のしのちゃんを気遣う言葉が、なんで出てこないんだ。
 ぎゅ、と、わずかに汗ばんだ小さな手が俺の左手を包む。

「お兄ちゃん。泣かないで」

 はっ、と、しのちゃんの顔を見る。心配そうに俺の顔を覗き込むしのちゃんの瞳にも、今にもこぼれそうな涙が浮かんでいる。

「お仕事だもん、あたしとママと、おんなじときにみやこに行くことができないの、しょうがないよ」

 しのちゃんが笑顔を見せる。大きな稜線を描いた目尻から、溜まっていた涙が一筋すー、と頬を流れる。

「あたしはママと一緒だからだいじょうぶだよ。でも、お兄ちゃんはひとりになっちゃうから、あたしが毎日電話してあげる。新しいお歌を覚えたら、お兄ちゃんに歌ってあげるから」

 真っ赤な目にせいいっぱいの笑顔を乗せて、しのちゃんは俺にとっていちばん愛らしく愛おしい、世界ににひとつだけの表情を見せてくれた。

「だから、お兄ちゃんもがんばろ。あたしたち『こいびと』でしょ。どこにいても、いつも一緒だよ」


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