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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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夏祭り-1

 朝のワイドショーが今日も猛暑に見舞われると報じている。喉の渇きを覚える前に水を飲むだとか、クーラーも惜しみなく使うだとか、キャスターが険しい表情で念入りに対策を講じるよう訴えている。

 地球が温暖化しているとは言うけれど、昔の夏も暑かったと思う。それでも、クーラーなど家にはなかったし、学校の教室にもなかった。熱中症などという言葉もなかった。かわりに日射病という言葉はあったけれど。むしろ暑さよりも光化学スモッグだとか放射能を帯びた雨だとか、それなりに物騒な環境ではなかったかと思う。

 暑いのはきらいではなかったから、日傘をさしたこともなかったけれど、お腹が大きい頃に汗を拭きふき歩いていたら、すれ違ったご婦人に『暑い中ご苦労さまね。日傘をさすと涼しいわよ』と声をかけられたのをきっかけに、日差しがきつそうな日は日傘を持ち歩くようにはなった。

 今日のお相手は同世代だから、真夏でも水も飲まずに炎天下で部活動をしていたとの思い出話に花が咲く。クーラーも得意ではないらしく、虫さえ来ないのなら野外で楽しみたいのだそうだ。心の中で、そういうのも悪くはないと思うけど、実行に移したことはない。

 喫茶店で待ち合わせて、遅めの朝食がわりにトーストとサラダで小腹を満たすと、いつものホテルに向かう。通りには提灯が飾られていて、今度の週末が夏祭りだと知らせるポスターも貼ってある。ホテルの部屋に入ると、クーラーは切りこそしないけれど、微風ぐらいにまで抑えてしまう。汗で衣服が湿ってしまう前に、さっさと裸になって、お互いシャワーを浴びては来ているから、まずはすることをして…という感じに過ごしていく。

 上になっている男が顎から汗のしずくを垂らしながら運動に勤しんでいる。

 「今日も暑くなるそうですね」

 ある程度性感が高まってくると、一気に昇りつめてしまわないようにするためなのか、男が腰の振りをゆるめながら話しかけてくる。

 「そうみたいですね。ここのところ暑い日が続いて」
 「すみませんね、汗が飛び散っちゃって。気持ち悪くないですか?」
 「いえ、わたしは大丈夫です。お互い様です」
 「そう言ってくれると助かります。なにせ汗っかきでね」
 「わたしもです。最近、以前より随分汗をかくようになってしまって」

 もう何度も同じようなやり取りはしているけれど、それは分かっていてのこと…であって、決して『若くない証拠』ではないと思っている。

 「ウチのヤツもそんなことを言ってましたね。でもまあ、若いと言えば若い証拠なんじゃないですかね。本当の老人になると汗もかかないって言いますからね」

 ふと田舎の親が脳裏をよぎる。常に手拭いを首に巻いたり腰に提げたりしていて、しょっちゅう顔や首筋、ときには襟元から胸に挿し入れては汗を拭っていたような気がする。

 「…ああ、失礼。『本当の老人』だなんてね。まるで、われわれがもはや老人の仲間入りをしているような言い方でしたね」

 男が、抜き差しのペースを上げていく。

 「まあ、もういい歳ではありますから…。でも、そんなこと思っていらっしゃらないでしょう?」

 わたしの身体の上で、感覚を調節しながらも、休むことなく抜き差しし続けている体力は、なかなかのもの…と思う。

 「いやいや、やっぱりいい歳ですよ。いい歳なんだけど、貴女と逢うとついつい張り切ってしまってね。させてもらった後は数日は寝込んでいますよ」
 「そんな御冗談をおっしゃって」
 「…どれ、逝ってばかりいるのが能じゃない。ちょっと一休みさせてもらいましょうか。…よっこらしょ」


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