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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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梅雨明け-1

 サイトで知り合った男とメールでやり取りをしていると、季節や天気の話題になることがある。

 「梅雨明けしましたね…。いよいよ暑くなりそうで先が思いやられます」

 猛暑の到来に辟易しているといった文章のやり取りは、それなりの歳を重ねた男女としてのたしなみのようではあるが、メールの主題は次回の密会の日時の相談なのだから、やはり場違いな感じは否めない。それでも、いい歳をした男女が互いの肉欲をいくらかでも誤魔化すためのカモフラージュとして、そんなやり取りも含めてたのしんでいる。

 「本当に暑くなりそうでたいへんですね。お米がとれなくなっては困りますけど」

 (夏は暑いのが当たり前)と母がよく言っていたのが思い出されて、ついお米のことなどに触れてしまう。昔の人は、クーラーなどない時代でも、暑さ寒さをよく凌いできたものだと感心する。大都会と違って、朝晩は涼しくなるから、寝苦しい暑さに苦しんだ記憶もあまりないけれど、実家には結局クーラーを設置することもなく、扇風機だけで今も過ごしている。あまりに古い扇風機は、経年劣化で突然発火したりするそうなので、去年の夏に新品を買ってあげたけれど。

 ラブホテルというところは、夏には冷房がこれでもかと利かせてあって、何もしていなかったら凍えてしまいそうな気すらする。部屋には窓などまずないし、あったとしてもいたずらに開けたりもできないから、空調設備は大事なのだろう。

 その点、和風のいわゆる連れ込み旅館では、クーラーもついているが、たいがい老朽化していて、冷房の利きはあまりよくもなく、室外機が苦しげに唸っている音がつきものだ。窓がないことはないから、特に騒々しくしてもいないようなときや、連れの男がタバコをふかしたりするときには、薄く開けて外の空気を入れたりすることがある。どれぐらい前から吊るしてあるのかわからないぐらいの風鈴が、風を受けて音を鳴らしたりもする。

 「意外といい音色だな…」

 男が、窓の隙間から外に流れ出ていくタバコの煙を目で追いながら、独り言のようにつぶやく。気障なセリフなようだが、風体は二枚目からは程遠いから嫌みに感じることもない。

 「そうですね…いい音色で」

 男は一戦交えた後の全裸の状態だが、こちらは一応、浴衣を羽織ってはいて、部屋に置かれていたくたびれた団扇を仰いだりしながら応じる。窓を開けた隙間から繁華街の雑踏のざわめきが聞こえてくる。遠くには高層ビルも見えている。昼日中、多くの人が熱い日差しを浴びながら通りを歩いているすぐ横で、いい歳をした男女がまぐわっているというのは、我ながらやましい気分になるが、そんな背徳感が好きだったりもする。

 男がそばに寄って来て唇を求めてながら、乳房を触り始める。窓を閉めようとすると、男が、

 「いいですよ、そのままで」

とわたしを制して、乳房を触り続けている。一段落すると、曇りガラスに身を隠しながら窓をさらに開けていく。

 「え? どうなさるんですか?」
 「ちょっと趣向を変えて」

 男は、いたずらっぽく笑いながら、敷いてある布団の位置をずらす。窓の傍から離したから、遠くに見える高層ビルから望遠鏡で覗かれたとしても大丈夫ではあるが、派手に騒がしくしていれば物音が外まで聞こえてしまうかもしれない。

 「空気の入れ替え…ですか?」
 「いや…こんなのもいいかな…と」

 窓を開け放したままで、わたしたちは二回目のまぐわいを始める。元々声を上げたりする質ではないけれど、男が突き込みを加えてくると、思わず掌で口元を押さえてしまう。そんな仕草が男にとってはよいようで、さらに突き込みに力を入れてきたりしている。

 男に組み敷かれて上を向いていると、開かれた窓の向こうには、白い雲を浮かべた青空が広がっている。一瞬、既視感にとらわれて、野外でのまぐわいがいつのことだったか思い出そうとしたが、思い出せもしないまま、男に身体を揺らされている。相手が夫ではないことだけは確かなのだけれど。考えてみると男の方はまぐわいながら空を見上げるということはあるのだろうか。

 そんなことすら思いながら、窓から空を眺めているうちに不意に男が果て、わたしの身体の上に体重がのしかかってくる。

 「空が見えますね」

 男がわたしの身体から離れる。

 「すみませんね。窓を開け放したままにするなんてね。…ああ、本当だ。きれいな青空ですね。…ああ、そうか。空をご覧になってたんですね」

 男が何かに納得したように言う。

 「えっ?」
 「いや、その…さっき、途中から、その…」

 どうやら、わたしの関心が突然空の方に移ってしまったことに、男も気付いていたようだ。

 「すみません…なんだかぼんやりしてしまって…」
 「いえ…気になさらないでください。なんというか、新しい発見もあったというか…」
 「新しい…発見?」
 「ええ。何というか、その…『心ここにあらず』みたいな女性といたしている…というのも、エラくいいもんだな、と思いまして」
 「…?」
 「いやいや。ホテルに行く金もなく、青空のもとで、頼み込んでおネエさんにヤらせもらってる…みたいな。おネエさんは面倒くせーなー、って思いながら股開いて男を腹の上に乗っけて『あぁ、空が綺麗だなー』なんて思っていて…。青春時代の一コマを思い出させてもらったような気がします…笑」

 そんな会話をしている男女に呆れたように、時折、風鈴がチリンチリンと音を鳴らしている。


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