急接近-4
「井上くん、最近痩せて来たし明るくなったよねー。」
それが社員からの評判だった。これまでは陰気臭くて見るとイラッとさせられたものだが、今は普通の同僚として普通に接するようになった。だがモテるとまどはいかず、最悪が普通になったレベルだ。その理由は
「でも髪型とか身だしなみがねー…」
とくに髪型は全く気にしていないようでイマイチ垢抜けない。それが残念だと思いながらも、髪型をしっかりしたところで自分には全くメリットがない為、アドバイスするスタッフは誰もいなかった。
「ねぇ、井上くん、髪型しっかりすれば結構イケるんじゃないの?」
夕梨花が鉄平に言った。
「ですねー。きっとモテるでしょうね。」
「じゃあ何で言ってあげないの?」
「萌香ちゃんは見かけで人を好きにはならないから大丈夫。俺はイケメンになった彰じゃなく、あんな感じの状態でもし萌香ちゃんに好きになってもらったら、自信つくと思うんですよねー。彰には色々自信を持って欲しいから。もちろん彰に似合う髪型は考えてますよ?でも髪型を帰るのは萌香ちゃんに告白した後。付き合えても、フラれても。」
「ふーん。色々考えてるんだね。でも鉄平くんがフェミニンマインドに入ってくれて良かった。色んな面で会社が良くなってる♪」
「でしょ?じゃあご褒美にしゃぶって♪」
「ンフッ、いいよ?」
鉄平は上の階のトイレで夕梨花に口でヌイて貰った。
時間は17時50分、もう少しで帰る時間だ。ホームページはもう更新ボタンを押すだけだ。その役割は毎回、月が変わる瞬間、0時にCEOである都姫がする事になっている。彰は特に今月は充実感溢れる仕事をした気分であった。
今日は鉄平はアンクルハート店長、麦田加奈子と遊ぶと言っていた為、彰はまっすぐ家に帰る予定だ。コンビニで弁当でも買ってさっさと帰ろうと思っていた。隣の萌香がこっちの様子を気にするような仕草を見せていたが、きっと自分より先に帰りずらいから、すぐ帰るか帰らないかを気にしてるのかなと思い、悩ませないよう、あからさまに帰るつもりの意思表示を行動で示す。
「あ、あの…」
バックを閉めた瞬間、萌香が話しかけてきた。
「は、はい…?」
思わずビクッとしてしまいながら萌香を見る。
「あ、あの…、い、今からって何か用事ありますか…?」
赤面しながらそう言った。
「い、いえ…」
「じ、じゃあ…ご飯行きませんか!?」
萌香にとって思い切って言わないと言えないぐらいに恥ずかしい言葉を彰に向けた。
「えっ!?」
耳を疑う彰。彰にとっては萌香から食事の誘いなど有り得ない事だったからだ。彰は体が固まってしまい、萌香は赤面し俯き気味に上目遣いで彰を見つめた。