愛する女の為に-12
(彰…、カッケーよ!いつの間にこんなに成長したんだ!)
鉄平は嬉しくて仕方がなかった。実に堂々としていて尊敬の念すら覚えた。都姫も物凄く嬉しそうな顔をしていた。
「萌香ちゃんの新しい魅力、最大限に引き出したいいファッションだと思う。そのチョイスも素晴らしいんだけど、何より萌香ちゃんの気持ちを考えてこのファッションを選んだってトコが私に大きく響いたよ。女からしたら嬉しいよね!そこまで自分の気持ちを込めて選んでくれた服を来たら、私だったら早くその人と街を歩きたい気分になっちゃうわ♪」
輝にとっては最大の賛辞だった。今までこんなに褒められた事もスポットライトを浴びた事もなかった彰は涙が出そうなぐらいに嬉しかった。密かに鉄平もうっすらと涙を滲ませたのは内緒である。
「私も、これ来た瞬間、感じました。ああ、私のコンプレックスを考えてくれたんだなーって。着ていて物凄く温かい気持ちになります。今までこんな服を着たことなかったけど、着てみたいって思います。」
萌香はチラッと彰を見てはにかみながら微笑する。
(ああ、報われたー♪)
全身から力が抜けそうなぐらいに安心した。
「この企画、決定ね!目立つようにホームページに乗せてね?今、萌香ちゃんが感じている気持ちこそ私達の目指すトコだと思うの。服で人生が変わるような感動を、それがアパレル業界に務める私達の願いだと思うのよね。この企画、どんどん推し進めて行きましょう!」
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げる彰に、少し遅れて萌香も頭を下げる。そんな2人に割れんばかりの拍手が湧き上がった。
「じゃあさー、萌香ちゃん、その服で外を歩きたいんだよねー?」
いきなり言って来た夕梨花に少し構えた。
「は、はい…」
「じゃあさー、その服来て井上くんとネックレス買いに行きなよー♪」
「え…?」
彰も驚いて戸惑う。
「服に似合うネックレスを選んであなた達の企画は完成しないわよ?服を選んだんなら、ネックレスも井上くんの思いが籠ったものを選ぶべきよねー。もちろん自腹で♪」
「自腹でなんて…。大丈夫です、自分で買いますから…」
彰の顔色を伺う萌香。
「いや、この企画は萌香ちゃんがいなかったら通らなかったんで、そのお礼の意味も込めて、僕が買います!」
「え…」
戸惑う萌香と彰の背中を押す夕梨花。
「さ、仕事はいいからデート、デート♪行ってらっしゃーい♪」
無理矢理オフィスを追い出されてしまう。
「ち、ちょっと…」
そんな2人に全員が手を振り見送るのであった。