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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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クリスマスイブ序章 〜小学2年生の「こいびと」との性夜〜-2


 五回目のチャレンジでも目当ての白いぬいぐるみが取れなかったしのちゃんが、ぷぅぅ、と頬をふくらませ、そのままちら、と俺に視線を送ってくる。はいはい、わかってますよ。財布から新しい五百円玉を取り出すと、一変して笑顔になったしのちゃんは「ありがとー!」と言いながらまたクレーンゲームのボタンと格闘し始めた。お兄ちゃんあんまり甘やかさないでね。今日も搭乗前にさおりさんがそう言っていたけれど、「こいびと」を甘やかすのも彼氏の役目のひとつだしな。
 最終的に千円札を二枚両替してまで獲ったぬいぐるみは、たぶん公式ショップで買うのと比べて相当割高になったに違いない。でも、ぬいぐるみの入ったビニール袋を胸に抱えてすっかりご満悦になったしのちゃんを見ていると、それによってこっちが大きな幸せを感じられることを考えたら安いもんだ、という気持ちになる。
 それに、ここが小学校低学年児の「こいびと」の特徴で ―そんな「こいびと」めったにいないだろうけど― クリスマスイブのディナーだからってやたらと高いレストランをご所望なさったりしないから、しがないLCC地上職の俺の給料でも無理せずに十分「こいびと」を満足させてあげることができる。ラッピングされたポーチを、「ありがとうございました!」と満面の笑みで接客してくれた欅坂系店員さんの息臭を堪能しながら受け取り、夕ご飯なに食べようか、と聞いた俺に即答で「ペッパーランチ!」と返事したしのちゃんは、いま俺の向かい側でチーズをトッピングしたビーフペッパーライスをすんごく楽しそうにスプーンで混ぜている。メロンソーダもたのんでいい?とおずおずと聞いてきたしのちゃんの仕草に、オーダーを取りに来た中年の店員さんが思わず「かわいいー」と破顔したあとの、しのちゃんの照れたような表情が俺的には最大にかわいい。そんないじらしさの一方で俺が頼んだわくわくダブルの目玉焼きは速攻でしのちゃんに奪われたけど。
 BGMにアリアナ・グランデやBoAが流れる中、俺としのちゃんは「クリスマスディナー」と呼ぶにはシンプルな、でも諭吉先生が吹っ飛ぶようなフレンチだかホテルディナーだかのテーブルに着いているどのカップルにも負けないくらい幸せな気持ちでいた。

「はい、あーん、して」

 スプーンの上に、焼き飯状態にいい色がついたごはんと焼けた肉とコーンを上手にレイアウトして盛ったしのちゃんが、そのスプーンを俺に向けて差し出す。クリスマスイブの浮かれた気分の中、照れもなにもなくスプーンをぱくり、と咥える。醤油ベースのステーキソースと黒胡椒で引き締まった肉汁、そしてしのちゃんの甘い唾液の混じった味を、クリスマスイブに「こいびと」とデートしている実感とともに味わう。
 ショッピングモールの地下にある専門店街で、しのちゃんが悩みに悩んでセレクトしたフルーツショートケーキをホールで買う。サービスでなぜか誕生日ケーキのようなろうそくをつけてくれることになっていて、「お嬢さんはおいくつですか?」と聞かれて「あ、ああ、あ、はい、は、8歳です」とコミュ障の実力を遺憾なく発揮し、ちょっと大きめの白い紙箱が入った袋を受け取る。

「おじょうさん、だってー」

 エスカレーターで一階へ上がりながら、しのちゃんがぬいぐるみの袋を俺の脇腹にぽんぽんとぶつけながら言う。

「店員さんからだと、俺としのちゃんは親子に見えたんだな」

「そうだよね、ふつうはパパだと思うよね。ほんとは『こいびと』だけど」

 にへへー、と笑われると、俺たちの会話を誰かが聞いて不審に思わないか、とキョドりたくなる気持ちが霧散していく。本物の父娘だって、娘が幼いときは擬似的に「こいびと」っぽく振る舞ったりすることもあるだろう。俺も、正々堂々としていりゃいい。
 俺のアパートに着くと、しのちゃんは早速ポーチとぬいぐるみを袋から出し、かわいー、かわいー、と言いながら手にとってチャックを開け閉めしたりぬいぐるみを抱きしめたりしている。俺は食卓の上にフルーツショートケーキをセッティングし、コンビニで買った百円ライターで八本のろうそくに火を点ける。

「しのちゃん、ケーキ準備できたよ」

 そう声をかけると、ベッドの脇でぬいぐるみとよくわからん会話を交わしていたしのちゃんは、たたた、と食卓に駆け寄ってきた。

「うわあ、すごぉぉい。おいしそう」

 四号サイズくらいの、決して大きいとは言えない、けど八本のろうそくの灯りが暖かくやさしくその表面をゆらゆらとオレンジに彩っている、いちごとパインとキウイのフルーツショートケーキ。しのちゃんという「こいびと」と二人っきりで過ごすクリスマスイブに二人で囲むクリスマスケーキ。

「お兄ちゃん、いっしょに、ふー、しよっ」


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