ブラザー-1
一日中女子と楽しく戯れた鉄平。今日早速歓迎会を開こうと女子社員らは盛り上がったが、次の日が休みの金曜日にしようと言う事になった。とは言え一緒に帰ろうとせがむ女子はたくさんいた。だが鉄平はもう少し資料を見たいと言い、たいていの社員が帰った後も事務所に残った。
事務所には夕梨花と、今日居たのか居なかったのか良く分からない程存在感がない唯一の男性社員だった井上彰と、CEO室にいる都姫だけが残っていた。夕梨花は井上彰の存在を気にしながら鉄平に話しかける。
「あの…、昼間はごめんなさい…」
「え?何が?」
夕梨花は恥ずかしそうにモジモジしながら言った。
「あの…、私だけ…、その…気持ち良くなっちゃって…」
クールな美形が恥じらう姿はたまらない。
「あ、気にしないで?今度ゆっくり…」
「うん♪」
夕梨花は嬉しそうに答えた。
「ホントは今からでも昼間の分まで鉄平くんを気持ち良くしてあげたいんだけど、彼氏と約束があって…」
「大丈夫だよ。彼氏との約束を優先しな?俺はいつでもフリーだから。したい時にしに来なよ。」
「うん、ありがとう。鉄平くん、好き♪」
夕梨花は鉄平にチュッとキスをして恥ずかしそうに小走りで帰って行った。
(いいなぁ…)
その様子を遠くからチラチラ見ていた井上彰。自分はいつまで経っても女子から相手にもされないのに、鉄平は今日入ったばかりなのにもうみんなのハートを掴んでいる事が羨ましい。
(あんかイケメンに生まれたら、そりゃ苦労しないよな、女子に。)
かと言って敵対視はしていない。ただただ羨ましいだけだった。そんな彰は家に帰り、密かに心を寄せている杉本萌香を想像しながらオナニーするのが日課だった。風俗に行く勇気もない彰はまだ童貞だ。キスどころか女と手を繋いだ事もない。自分は子のまま童貞のまま死ぬもんだと思っていた。
すると鉄平が彰の方に向かって歩いて来た。
(い、いじめられる!!)
学生時代から何かと揶揄われたりイジメられたりしていた彰は、常にいじめられるのではないかと言う恐怖を感じて生きている。身長も高く筋肉もありそうな鉄平が怖かった。少し手を震わせながら、気づかぬふりをしてパソコンを操作しているのであった。