イケメン、入社-2
オフィスでは鉄平のデスクをどこにするかで争奪戦が起きていた。
「ちょうどココ空いてるから!」
「ダメよ!私の隣!」
「ちょっと!私のデスクなんだけどー!」
「あんた退きなさいよー!」
「あんたこそ!」
仕事そっちのけで大騒ぎしていた。
「ほらほら、あんま騒がないのー!」
夕梨花が宥める。
「そこ空いてるんだからそこでいいじゅない。」
「ダメ!もうこうなったら席替えしましょ!席替え!」
「賛成ー!」
みんなイケメンの近くに行きたくて仕方がない。
「いちいち席替えるの手間がかかるでしょー!?そんな事ばかり言ってると、イケメン君、人事室に貰っちゃうからねー?」
「あー!ずるーい、夕梨花さん!だいたい不採用派だったくせにー!」
「あ、あれはCEOの決定には従わなきゃならないから…」
「調子良すぎー!」
「な、何よー!」
みんなのまとめ役の夕梨花まで騒ぎの中に入ってしまう。
「もー、めんどくさいから、その空いてるとこに決まりねっ!これ以上騒いだらクビ!みんなクビ!」
「あー!それでイケメン君、自分のモノにしようとしてるんでしょ!?」
「ま、まぁね。ンフッ♪」
「夕梨花さんこそクビっ!!」
活気と言えば活気、ただ煩いだけと言えば煩かった。ただそんか騒ぎもどーでも良く感じるぐらいに都姫は思い出せない記憶を一生懸命思い出そうとしていた。
「あー、もう…、全然思い出せない…!32歳のいい歳こいた女が年下のイケメンを家に連れ込んであんないやらしい事しちゃったとかさぁ、恥ずかしいって言うか情け無いって言うか…。それでこれから裸の写真を握られていいように性奴隷にされるとか…洒落にならないじゃん…。あーんもう!」
一人で机に顔をつけて項垂れていた。
騒ぎも落ちつき、午後になり夕梨花が新しいパソコンを買って来た。
「まずいなー、今日人がいなくてパソコンの設定してくれる人がいないんだってー。かと言ってみんなパソコン詳しくないし…。イケメン君には悪いけど、ちょっとパソコン作業は待っててもらうしかないなー。」
そう言うと、イケメン君の隣の席にいる酒井美雪が嬉しそうに言う。
「じゃあ私が業務についてたっぷりと教えてあげようかなー♪」
「あー!ズルーい!私が教える!」
「ダメ!私の方が色々詳しいし!」
「ダメ!私が教える!」
そんな中、誰もどうぞどうぞと言うギャグはしなかった…。
「あー、他に何したんだろー、私…。シックスナインとかしたのかなぁ…。ゃ、ヤダっ…」
みんなが盛り上がる中、都姫は一人、まだイケメン君との夜のダメージから抜け出せないでいる。