巨根の男-2
「こちらでいかがでしょうか」
着いたのはいわゆる連れ込み旅館。ラブホテルと違って年相応に和のテイストというところか。帳場を通って階段をギシギシと上がっていく。先客もいるようであでやかな声もかすかに聞こえてくるのは気分を高めるちょうどよいBGM。
「まずは着替えましょうか」
「はい」
布団に置かれた青とピンクの浴衣に。
「お風呂はどうしますか。ボクは一応綺麗にはしてきましたが」
「わたしも一応…」
(了解です…)と男が微笑むと抱き寄せられてディープキス。胸元から手がさし込まれて乳房を揉みしだいてくる。お返しにと男の胸板から背中を撫でさする。お互いの手が上半身から下半身へと延びていく。男の手が浴衣の裾を開いてショーツの上から陰部をまさぐる。わたしも…
「!」
思わず手をとめるわたし。愛用している『SMMK』を凌ぐ一物に行き当たる。女が驚くのには男も慣れているようで、わたしの手にそっと手を重ねてくる。
「あなたのお相手をさせていただきます。粗末なものですがお望みに少しでも近いとよいのですが…。お納めいただけますか? ご覧いただくだけでも構いません」
一物を擬人化させて代弁しているようで気持ちを和らげようとしてくれているようだが、薄い生地越しに掌に触れているのはまさに肉の塊…。今さら、恐れ入りましたと逃げ出すわけにもいかないけれど、これはR-40のまさしく凶器…。
「では、まずはお口でお味見いただけますか?」
男が下着を脱いで浴衣の裾をはだけて脚を投げ出す。わたしは脚の間に入ってそそり立つ巨大な肉棒におずおずと顔を近付ける。
「頂戴します…」
挨拶はしたものの、どうしたらいいか戸惑う。巨大なパフェを目の前にはしゃぐ若い娘ならまだかわいいのだろうが…。それでも先端に口づけし、舌で舐め唾液をまぶしていく。
普段よりも倍は時間をかけながらようやく心を決めて口を大きく開く。愛用のディルドをたわむれにフェラチオするときの口の開け方では入らない。こんなに開けたら顎の関節がどうにかなってしまうのではないかと思うくらい思い切って口を開けて、ようやく先端を口中に収めた。
巨大な肉棒を口中に収めて、鼻孔を膨らませて呼吸している。舌にはわずかに舌先が動かせる程度の余裕しかない。それでも徐々に口の周りの筋肉がほぐれもしてきたのか、舌の動きはよくなってきた。すぐに喉の手前につかえるが顔をいくらかでも前後させれば、曲がりなりにも口淫の型になってはくる。
「ありがとうございます。気持ちいいですよ」
社交辞令としか思えないが男が丁重に礼を述べてくる。閉じていた瞼を開いて男と視線を合わせるが、こちらの顔は鼻孔が細長くなるほど鼻の下を伸ばした馬面になっているはずで、恥ずかしい。
「疲れたらいつでも休んでくださいね」
このような物を咥えたままではとても会話はできない。顔面も引き延ばされているからアイコンタクトも容易ではない。一旦、肉棒から口を放す。
「疲れたわけではないのですけど…、このあたりが鍛えられている感じがします…」
わたしはぁはぁと息を乱しながら、両手の指で自分の頬のあたりをマッサージしてみせる。
「いつの間にかお顔の筋肉が衰えてしまっていることもあるみたいですが、奥様は舌の動きもとてもお若くて、素晴らしいですよ…。普段はいっぱいお喋りされたり…?」
「いえ…。そのようなことはほとんどなくって。一日、声を出すこともなかったりする日もあります…」
「フェラチオがお好きなんですね…」
「嫌いでは…ないかも」
「失礼しました。ぶしつけなことを伺ってしまって…。さて、貴女さえよろしければ、是非、このまま…」
「…はい」
「その前に、念のため…。ご主人とは…夫婦生活はいかがですか?」
「…その…いわゆるレス…で」
「はい。重ねてぶしつけなことを伺って申し訳ありません。もし、近いうちにご主人となさる…ことがおありでしたら、そのときに、ひょっとすると奥様の『かたち』の変化にお気づきになってしまうかもしれないと思いまして…」
(これだけ大きいから、形が変ってしまう…ということ?)と驚きながらも、セックスレスの夫が恨めしく思い出されてくる。フェラチオだけに意識が集中していたが、口だけでなく膣にも収めることになるのだ。いくら巨大とは言え、赤ん坊の頭ほどではないのだから、大丈夫なはず…。
「…確かに…夫とは比べ物にならないほどご立派でいらっしゃいますけど…大丈夫です。その点は」
きっぱりと答えるわたしがユーモラスだったようで男が少し微笑む。
「ご主人以外のご友人とのご予定も大丈夫でしょうか?」
「え?…はい。特に予定はありません」
「かしこまりました。ゴムは着けたほうがよろしいですか? 持参はしているのですが…」
「大丈夫です…」
「ありがとうございます」
布団に横になるが男は覆いかぶさっては来ない。並んで寝て愛撫を施してくる。お腹にかすかに残る妊娠線をなぞっていたから、経産婦であることは確認したかもしれない。