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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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電話遊びの日々-2

 会話をしていると『女優で言うなら誰に似ていますか?』などと訊かれることがある。逢ってもいいかと思っていても、このようなことを訊かれると一気に気持ちがしぼんでしまう。

 自分では女優の某に似ていなくもない…ぐらいは思っていて、ちゃんと複数の他人から言われたこともあるが、そのようなことは自分の口から言いたくもないし、『○○さんに似ている…って言われたことがあります』などという言い回しも好きではない。

 何より、お互い思い思いの相手をイメージしながら会話を愉しんでいるはずが、実在人物の貌などが入り込んできてしまっては、そこまで築き上げてきたイメージの世界が台無しになってしまう。『○○』という女優を例に出すのも考えものだ。自分よりも一回りは年上の人だから、相手がシニアの世代であれば通りはよいだろうが、相手が若かったら通じないかもしれない。

 相手にそのようなことを訊くことを無粋だと気づかない男は、逢ってみても『はずれ』に違いない…と決めつけている。スリーサイズやヘアスタイルなどをこまごまと聞いてくる男も同類だと思っている。だから、相手がそのようなことを尋ねてきたら、途端に相手をゾンザイに扱ってしまうようになり、心の中では受話器を置くまでの秒読みが始まっていく。

 とはいえ、より的確な例えができるように…などという考えは微塵もないが、自分はいったい誰に似ているだろう…とは思ったりもする。運転免許証を取り出して自分の証明写真を眺めてみる。なんとも生気のない無表情の女がこちらを見ている。うつろな表情と言ってもいいぐらいだ。この貌で女優『○○』に似ているなどとは口が裂けても言えたものではない。

 数年間は共にすることになる身分証明書だから、毎回、免許更新のときには写真写りが気にはずるものの、どうせ誰かが見るものでもない、と結局、免許センターで係員に撮影してもらうだけになっていて、すっぴんでもないがメイクをしっかりしているでもない中途半端な容貌になっている。

 ふと、今日、街角でポケットティッシュを渡されたことを想い出し、コートのポケットから取り出してみる。毎度のことだが、挟み込まれた紙の小片には、陳腐なコピーに同世代と思しきいわゆる熟女の写真。いつもはろくに見ることもないが、今日の『熟女』はどこか雰囲気が違う。

 肌の色などは補正しているのかもしれないが、なんというか脂のノリが違う。メイクの効果が多分にあるだろうが目力が違う。生気がみなぎっている笑顔がわたしの免許証の写真とあまりにも対照的だ。ただの宣伝写真に過ぎないと思おうとしても、自分との違いがあり過ぎる。

 名の通った映画女優だったら容貌を自分と比較してあれこれ思いに耽ったりすることもないだろうが。手元の紙の小片のモデルはすぐ身近にいそうないわゆる『素人』の雰囲気が濃い。いかがわしい写真の撮影とモデル自身もわかっているだろうに、いやな顔一つしていない…という感じ。むしろ嬉々としている。モデルとしてのプロ意識ということなのだろうか…。

 『よかったら、わたしとテレホン○ックスしませんか?』

 陳腐なコピーにも魂を込めるような…そんな『熱意』のような気持ちが伝わってくる…と言ったら大げさに過ぎるだろうか。

 普通の写真と裸体の写真をつなぎ合わせたのだろうかとも思って、継ぎ目はないかと目を凝らしたりもして…。ふと我に返ってそんなことをしている自分に呆れる。

 こんなことに捉われている時間があったら、同じポケットティッシュを受け取ったであろうどこかの男と、たわいもない会話でもしている方がいい…。などと、都合のいいことを考えて記載された番号に電話をした。

 『誰かに似てたりするんですか?』
 『そうねぇ。特に誰かに似ているってことはないわね…よくいるオバサンですけど』
 『いいですねぇ。ワタシ誰誰に似ているのよ! なんて言われちゃうと萎えちゃうんですよね。よくいるオバサン、フツーのオバサンがいちばん好きです…』
 『そう言っていただけると、気が楽になるわ』
 『楽しくお話ししましょうよ』
 『ええ』

 フィーリングの合いそうな男につながった。わたしはソファーにもたれてテレホンセックスを始める体勢を整える。

 『よかったらわたしとテレホンセックスしませんか?』


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