午後の総務-1
昼食が 終わり午後が始まる10分前に宮崎が席に着こうとする時 渡部が声を掛ける
「宮崎さんお願いが有るんですが」
「良いわよ 私高いから」
「晩御飯牛丼一杯でどうです?」
「却下」宮崎は笑いながら渡部を見た
「何?」
「私明日 私午前中居ないので この注文お願いしたいのですが」
「何?」渡部の席に来ようと席を立とうとするのを 渡部は止めて
「今 送りましたからパソコン見てください」
パソコンを宮崎が開くと宮崎のパソコン画面動き始め
「何・何・何・」 宮崎が驚いた様に画面を見つめた
画面が変わり 注文画面が出ると
「これとこれ 明日朝確認して間違いなかったら 送信してください
変更があったらここを変えてください」
矢印が動く 画面が閉じられ
「これが今送ったやつです」 矢印が一つのアイコンをクルクルまわる
「渡部君 人のパソコンで遊ばないの」 言いながら渡部を見る
「明日お願いしますね」と涼しい目で宮崎を見て宮崎が目を伏せた
渡部はあす午後の出社に成ると 前田に申告した
以前の渡部の仕事振りなら嫌味が先に出るのだが 前田は頷くだけだった
水曜日渡部は 百貨店に居た 紳士服売り場に入ると斎藤が近寄ってくる
「何着かお願いしたいからよろしく」と渡部が言うと
此方へと案内され 渡部の全身を斎藤は図り始め
「以前より多少 大きくなってますね」 呟きながら 生地を持ってきた
斎藤と生地を見ながら選んでいると 後ろで靴売り場の相沢さん今月で
退職だってと社員が話すのが聞こえ
渡部は幾つかの生地を選び注文すると 靴売り場へ向かった
相沢が寄ってくる 新しい靴有るかな? 相沢は微笑んで
奥に入ると 3足の箱を抱えて来た 渡部はスツールに腰かけ
靴に足を入れ 履き心地を確かめていると
「この間ありがとうございました」 藍沢が頭を下げた
渡部と別れ家に帰ったら 気持ちが落ち着き 再出発の意欲が出た
一度 家に帰りやり直そうと思ったと話して来た
渡部は何も言わず 相沢を見つめ頷いた
売り場を出るとき 相沢が深々と頭を下げ渡部を見送ってきた
午後出社し 席に着くと渡部は 仕事に没頭していた
目の前の電話が鳴り 受話器を取ると英語で話始めてきた
渡部が英語で応答しているのを驚いた顔で 皆が見て来る
電話はニューヨークの銀行の頭取が来週こちらに来ることと
支払いの入金の件だと話してくる 保留ボタンを押し
電話だと伝えると英語の出来る山本は取引先に同行で不在だと経理が言う
経理が困った顔をし 渡部は経理に電話を回し渡部が通訳して
支払いの処理が終わった 相手が君の英語は綺麗だ
こちらに住んだことあるのかと聞いて来る
日本生まれの日本人ですと答えると笑いながら
日本に来た時は旨いもの食わせろ芸者ガール呼べと笑いながら話しかけてきた
芸者ガールはダメだよと笑いながら電話を切ると
渡部さん英語凄いですね と経理の女子社員が眩しそうに見つめてきた
席に戻ると 課員たちが一斉に何か言いたそうに渡部を見て
自分の仕事に戻って行った
木曜朝 何時もの様に席に着くと 前田が立ち上がり
飯田君と呼ぶ飯田の指に指輪が光っていた
飯田君がこの度結婚する事に成りました 飯田が頭を下げ
式は三か月後だそうです準備もあり寂しいですが 今月一杯でお別れと成ります
課員から拍手が沸き起こり 経理部からも聞こえた
飯田が別れの言葉と謝辞を述べ 何時もの仕事へと皆が入って行った
渡部が昼食を終わらせ 席に戻ると飯田が寄って来た
渡部が振り向くと 飯田がありがとうございましたと頭を下げてきた
「あの日 帰ったら 心が平だったの まるで風のない湖の湖面見たいに
判ります?」と語尾を上げた
「彼から 何度も求婚されたのだけど 不安だったんです
先生みたいな人と合ったらまた溺れてしまう自分がいるみたいで
でも渡部さんと会った後 心から先生の影消えちゃったんです
渡部さんが消してくれた見たいに 本当にありがとうございました」
頭を下げ 飯田は席に戻って行った 宮崎が戻って来て
「久美ちゃんと何か有ったの?と」聞いて来た
渡部は宮崎に向かい
「昨日ありがとうございました 明日夜空いてますか?
晩御飯牛丼おごります」とおどけながら言った
「人妻を夜誘う?まして私が牛丼?成敗する」と笑いながら答え
間が開き
「良いよ晩御飯付き合うよ主人昨日から日曜まで学会だから」
宮崎の夫は大学教授と聞いた事がある
「牛丼よりランク上げなさいね渡部」
「畏まりましたお姉さま」とお互い笑いあいながら
午後の仕事へと 入って行った