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鬼の棲む部屋
【ホラー 官能小説】

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鬼娘かわいい-4

正人は頭をかいて、ため息をついた。
逃げ帰って来たあと、鈴木史奈からの着信はない。

「むー、惚れ合っておる者がまぐわうのは許す。そのドラッグとやらを使っておなごを慰みものにした男はけしからん。天罰を与えてやろうぞ!」

かなりご立腹なので、正人まで天罰に巻き込まれそうな気がして、謎の女の子にお菓子を献上した。

正人にも下心がなかったわけではない。鈴木史奈の部屋に呼ばれた時は、かなりどきどきしていた。

「その史奈というおなごも、けしからん男も、ここにおぬしが住み着いておるのを知っておるのだろうに」
「あっ、たしかに。やばいかも」

驚いて逃げてきても、鈴木史奈がブルドックにドラッグのことがばれているっぽいと話せば、トラブルに巻き込まれそうな気がした。

「天罰ってなんですか?」
「あんぱんちじゃ!」

あまり頼りにならない気がした。
最近、正人は運が悪いのか良いのかわからない。事故物件の部屋に住んだら、かわいい女の子がおまけでついてきたのは悪くないが、オナニーをじゃまされるのはよろしくない。
欲求不満でへんな夢までみたので、ムラムラして下心で不動産屋の女性従業員に近づいたら、トラブルに巻き込まれてしまったようだ。これは大変よろしくない事態である。

(警察に通報してブルドックと鈴木さんが捕まるまでに、俺、無事で済むかな。通報したのが俺だってすぐばれて、ブルドックの仲間とか仕返しに来たりするとかもありそうだし。う〜ん)

「おぬし、その史奈というおなごを助けてはやらぬのか?」
「助けるって、どうするんですか?」
「けしからん男に脅されておるのだろうに。おぬしを頼りにしておるから、わざわざ会ったのではないのかの?」

たしかに空き部屋を私用で使ったのがばれたのに、ブルドックと一緒に史奈が正人と会わなかったということは、ブルドックには内緒で、正人と会った可能性もある。

インターフォンで建物の入口て呼び出して10分ほどで、鈴木史奈は正人の前に姿をあらわした。

「警察には行きたくない。捕まるかもしれない。こわいの」
「でも、今のままじゃ、ブルドックに好きなように利用されてるだけだよね?」

駅前のファミレスで、正人と鈴木史奈は相談をしていた。正人は謎の女の子に言われて、しぶしぶ鈴木史奈に会いに来たのである。連絡先は不動産屋のメールアドレスしか知らないので、直接、会うしかなかった。

「ブルドックに、ペーパー・アシッドを使われてたりして、体調とかおかしくなったりしない?」

妊娠のほうが怖くて、たまに寝つけない夜もあるらしい。テンションが上がって酔っている興奮状態でセックスするので避妊具はつけてもらえない。産婦人科で経口避妊薬(ピル)を処方してもらって服用しているが不安らしい。

正人は謎の女の子に言われて会いに来た時には下心は失せている。ブルドックと鈴木史奈がドラッグ使用を正人が知っていることを、ブルドックに内緒にしてもらう方法を必死に考えていた。

幻覚剤SLD。
乱用すると、次々とめまぐるしく躁鬱の状態が繰り返し起こっていく。また、他のドラッグに比べて脅迫観念が強い特徴がある。
幻聴・幻覚・精神異常をきたし、たとえば壁の絵が動いている、天井のシミが人に見える、と不安に関係する症状が起こる。その他ひどいことになると、空を飛べると思いこんでビルの窓から飛び降りたり、力がみなぎったような錯覚から、電車を止められると思い込み電車に飛び込み、死に至るケースもある。
幻覚が体から完全に消失しても、フラッシュバックを断片的に経験することもある。こうした作用は日常生活の中の、ちょっとした精神的なストレスや抗ヒスタミン剤の使用、さらに、音楽やネオンサインの光などが引き金となって起きる場合がある。

(事故物件の部屋にいる謎の女の子と暮らしているけど、昼間は見えませんとか話したら、俺のほうがおかしいと思われるかもしれないな)

「あの人と別れるには、会社を辞めて転職しなきゃいけないし、引っ越しもしなきゃいけないのは、私、わかってるんです。でも、不安で踏み切れないんです」
「あ、そういうことか!」

正人は母親の再婚から、2回転職して実家を出て無職の状況を恥ずかしいが鈴木史奈に話した。

「鈴木さんなら、俺みたいに目先の給料とかに釣られないで仕事を探せる。大丈夫じゃないかな」

ハッとした表情で、鈴木史奈が正人の顔を見つめていた。

「なんかすいません。山崎さんは大変な時なのに、私の相談に乗ってくれて。いい人ですね」

正人はため息をついた。いい人と言われて告白するとふられる体験を、3回ほど経験済みだからである。

「あっ、ここは私が払いますよ」
「押しかけて呼び出したのは俺のほうだし、ブルドックに俺のこと内緒にしてもらえる約束もしてもらったから、おごらせてください」
「わかりました、次は私がおごりますから」

(なんだ、鈴木さん、次とか言ったか。まあ、気のせいだろう)

「山崎さん、私、ちょっと、元気でました。ありがとう、おやすみなさい!」

帰宅して報告すると、謎の女の子は、ひとつうなずいて、あくびをすると寝袋に潜り込んで眠ってしまった。

(もしかして、起きて待っててくれたのかな?)

正人は眠っている謎の女の子の頭を撫でてあげたくなった。しかし、急に目を覚まして機嫌が悪くなるかもと思い、さわらなかった。

翌週の水曜日の午前中、正人が届いた洗濯機で洗った洗濯物を干していると、鈴木史奈が正人の部屋に訪ねてきた。

「お昼ごはんを作りに来ました!」

相談を聞いて、その後はどうなったかは気になっていた。しかし、脈なしと思い電話番号も交換せずに帰ってきてしまったので、正人のから連絡することはなかった。
どうやら史奈は正人のために、スパゲッティーを作ってくれるらしい。


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