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鬼の棲む部屋
【ホラー 官能小説】

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鬼娘かわいい-3

「ただいま……いないか」

洗濯物を部屋まで持ち帰ったが、謎の女の子の姿は部屋になかった。冷蔵庫の中の冷えぐあいを確認した。
洗濯物をたたんで整理すると、スーパーへ食糧の買い出しへ行った。冷凍食品を買い、インスタントのカップ麺は買わずに、いなり寿司を買ってみた。

どうやら日が傾き夕方になると、謎の女の子は見えるようになるようだ。
4つ入りのいなり寿司を2つ、謎の女の子は食べた。

「お稲荷さん好きなんですね。もう1ついかがですか?」
「よいのか?」
「俺は1つもらえればいいです」

3つ目のいなり寿司を謎の女の子は食べてから、正人に濡れタオルを渡されて手を拭いていた。かわいい手だと正人は謎の女の子の手を見て思った。

(俺、欲求不満なのかな。こんな女の子の手がきれいで、ちょっとエロいと思うなんて)

正人は空き部屋の間、この子は日が暮れたあと、ぼつんと一人ぼっちで家具も何もない部屋でいたのかと思うと同情してしまった。

「おぬしが住みつくまで、たまにおなごが来ておった」

謎の女の子から、正人は驚いた話を聞き出した。
不動産屋の下見で従業員が客を案内してくるという話かと思っていたら、不動産屋の従業員がこの事故物件で上司と関係する密会の場所にしていたらしい。
正人は部屋に案内するときに、不動産の男性従業員と女性従業員か店から車を出して案内してくれたのを思い出した。
恰幅のいい小太りのブルドック顔の運転手の男性従業員だった。そして女性従業員が、正人の話をメモを取りながら満面の笑みで接客していた。

「キャンプみたいでいいですね」

ランタン型の電気スタンドが床に並べられている。あぐらをかいた小太りの従業員の男性に寄りかかっている女性従業員は、全裸姿で微笑している。
従業員ふたりの声や息づかいや、その密会の様子が正人の頭に浮かんだ。

(へんな妄想してしまった。プルドックの全裸まで)

「おぬし、昨日、行水しておった時も見えたのじゃろう?」
「見えた?」

オナニーしていて、弁当屋のアルバイト店員のフェラチオを正人は妄想した。
謎の女の子によると正人が浴室で妄想していたことや、急に頭に浮かんできた不動産屋の従業員ふたりの密会は、実際の出来事らしい。

「鬼の神通力なのじゃ」

謎の女の子の力か部屋に働いていて、正人が最近出会った人たちの感情、それも淫らな感情が高揚した時を思い浮かべることができるらしい。

「鬼は人の感情の力を喰らい育つ?」
「そうじゃ。だから幽霊や妖怪とはちがうのじゃ、わかったか!」

正人は翌日、不動産屋が連絡用に教えてくれたパソコンのメールに

「空き部屋を勝手に私用で使ったらいけません、ダメ絶対!」

と送信したら、昼過ぎに女性従業員から電話がかかってきた。

「明日、お時間ありますか?」

不動産屋は水曜日が定休日のところが多く、正人が契約した不動産屋もそうだった。不動産屋の従業員は私服姿、ジーンズにパーカーというラフな服装で待ち合わせの駅にやってきた。

「あの、どこまで知ってるんですか?」

正人は不動産屋の密会の妄想をした夜は夢をみた。正人は不動産屋のブルドック顔の上司になりきっていた。

「鈴木さんじゃなくて史奈って呼んだほうがいい?」
「……ついてきて」

正人は不動産屋の女性従業員、鈴木史奈の暮らしている、一人暮らしのワンルームの部屋に案内された。

「お店の名刺も名札も名前は偽名なの。でも、君は私の名前を知ってる。あの人が君にあの部屋を使ってたのを話したんでしょ?」

鈴木史奈は、不動産屋のブルドック顔の上司、竹野滋の仲間だと思ったらしい。

「私に近づいた目的は何ですか?」

ブルドック顔の竹野滋は舌の上に海外の切手をのせて、鈴木史奈と濃厚なディープキスをしていた。

「あの切手は意味がわからないんだけど教えてくれる?」

鈴木史奈は青ざめると涙目になって正座したままうつむいて、しばらく黙りこんでいた。

ペーパー・アシッド。
幻覚剤の一種リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)を染み込ませた切手。
鈴木史奈は会社の飲み会のあと、帰り道でほろ酔いで隙だらけのタイミングを狙われた。
物陰に強引に引きずり込まれて、切手を舌の上に乗せたブルドックにキスされてしまった。
気づいた時にはラブホテルで、行為は終わっていた。

「おー、よく撮れてるぜ」

史奈がラブホテルに入るときにはしゃいでいる様子や、行為のあと膣内からどっぷりと白濁した精液が吐き出されてくる動画を竹野滋に見せられた。

「同じ職場だし、つき合おうぜ、な?」

竹野滋は結婚していて、その時、妻は妊娠9ヶ月目。史奈はペーパー・アシッドを使われたことに、すぐには気づかなかった。
テンションが上がって、記憶が途切れている。覚えているのは、気持ち良さ。

「動画、見たんでしょ?」
「なんのこと?」
「とぼけないでよ。あの人にいくら払ったの?」

どうやら竹野滋は仲間から金を集めたりクスリと交換するかわりに、鈴木史奈を抱かせようとしているらしい。
鈴木史奈は払った竹野滋に払ったと言われた金額と同じ金額を払って、竹野滋以外に抱かれるのは拒んできた。

「俺は気になって確認したかっただけで金をせびりに来たわけでも、ブルドックの仲間じゃないよ。帰る!」
「えっ、あ、ま、待って!」

鈴木史奈の暮らす部屋から、正人は走って逃げ出した。

「あやつらのせいで部屋が穢れて清めるのがめんどうじゃった。ドラッグ?」

YouTubeで解説動画を見せ、正人は謎の女の子にドラッグというものがあって、悪用されていることを教えた。

「使われ続けると、やめられなくなる」
「おぬしは、そのおなごが困っておるのを、見捨てて逃げてきたのか?!」


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