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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(中編)-5

闇商人エラルドは、バーデルの都での商人としての立場というものがあるので離れられないと思う。
市民の権利は闘技場で優勝したり、情人の貴族が市民の権利を与えてくれると得られると聞き出した。
つまり貴族に賄賂を払えば、市民の権利を得られるとわかった。金額はわからないが、もし貴族の者の情人となれば賄賂は格安になるのではないかと考えながら闇商人エラルドは、武器商人ヴァリアンの話を聞いていた。

「奴隷市場のオークションで落札された少年は、貴族に市民にしてもらい保護されるわけですか」
「王都の貴族や商人に買われていく女性たちとは少しちがいますね。少年に市民の権利だけでなく、教育して養子にしたり、最近は結婚する方もいるようです」

話題はブラウエル伯爵と王都の子爵ヨハンネスの結婚の噂となった。

「王都でも、まだ男性同士の結婚はめずらしいようですがね。フェルベーク伯爵領では男性同士の結婚は、すでにブラウエル伯爵という先例があるので、参考にして行われています」

フェルベーク伯爵が、貴族の伴侶の美少年を強引に奪い取ったことで、貴族から反感を買い、それが火種となり、執政官ギレスがフェルベーク伯爵を暗殺するまで発展している。
その情報は貴族たちによって隠されているので、武器商人ヴァリアンも知らなかった。

「バーデルの都も、バルテット伯爵が統治されている頃は貴族や小貴族の身分の方たちが暮らしていました。フェルベーク伯爵領からバーデルの都へ移住する貴族の方が増えれば、フェルベーク伯爵領の法律へ近づいていくかもしれません」

闇商人エラルドは、バルテット伯爵が統治していた頃のバーデルの都の市場を利用して商売をしていたので、過去のバーデルの都の雰囲気も知っている。

ロンダール伯爵はメイドのアナベルと、ドレチの村へやって来た。

「そんなにバーデルの都には地震の影響があったのか。闇市が開かれているのはわかったけど、フェルベーク伯爵領からバーデルの都に人が集まって来ているんだね?」

ロンダール伯爵はフェルベーク伯爵領が男性の同性愛を推奨している制度など、ニルスとエイミーが聞いてきた話を聞いていた。

「ニルスは誘われなかった?」
「私がずっと隣にいましたからね」

ロンダール伯爵はエイミーの返事を聞いてうなずいた。

「ニルスをひとりで行かせなくて良かった。なるほど、フェルベーク伯爵領のせいで、バーデルの都の雰囲気がまた変わったわけだ」
「王都からの貴族らしい者は見かけませんでした。賭博場や遊郭は建て直しは行われず放置されていて、それは領民の居住地も同様でした。奴隷市場だけが損傷が軽微だったので修繕され、取引が再開されているのが現状です」
「エイミー、なら家を無くした人たちはどうしているのかな?」
「空き地で集まり、野営のような事をして暮らしています」
「執政官ギレスも地震で死んだかな?」
「都の衛兵は、闇市を取り締まることもなく、都の大門と奴隷市場のみを警備しているようでした。執政官ギレスがバーデルの都に滞在しているかについては、闇市や酒場の噂では確認を取ることはできませんでした」

ロンダール伯爵は「僕の可愛い妹たち」の占術によって、執政官ギレスやフェルベーク伯爵がすでに亡くなっていることを把握している。
フェルベーク伯爵領とバーデルの都は領主がいない。
ニルスとエイミーのバーデルの都の情報では、執政官ギレスやフェルベーク伯爵は生きていることになっていた。

執政官ギレスとフェルベーク伯爵が恋仲であることを、ロンダール伯爵は知っている。ニルスと女ディーラーのエイミー
が大勝負した時、親衛隊の隊長ギレスとフェルベーク伯爵が一緒にいた。

フェルベーク伯爵が、自領に他の伯爵領にはない特別な法令を施行したことは、ロンダール伯爵はフェルベーク伯爵と親衛隊の隊長ギレスの関係を把握していたので、ニルスやエイミーからフェルベーク伯爵領の情報を聞いても驚きはなく、むしろ納得できた。

ロンダール伯爵は、ニルスとエイミーの情報から、バーデルの都の奴隷市場はフェルベーク伯爵領へ王都から移住した男色家の貴族が介入している事を知った。
なぜ、ロンダール伯爵がバーデルの都の視察を、ニルスとエイミーに行かせたのかを、ふたりからロンダール伯爵は質問されたが、その質問に答えたのはメイドのアナベルであった。

「バーデルの都は、呪われた土地に鎮めのために建造されたものです。地震によって破壊されてしまい鎮めの力を失ってしまったら、伯爵領全域に影響が出ることになります」
「呪われた土地ですか?」

ニルスとエイミーが顔を見合せ、アナベルからバーデルの都が蛇神を信仰する信者が弾圧されて集団自決することで、呪いの儀式を行った土地だと教えられた。

「蛇神を信仰する信者たちは今の伯爵や貴族たちの先祖との戦に敗れ、風葬地に集まり自決したのです」

自分たちの命を生贄にして、蛇神の影響を受けて、贄となる呪いをかけた。

「蛇神ナーガは、肉欲や生殖の神ですが贄として人の命を奪います。遊郭がすっかり焼け跡になったのは、遊郭の遊女たちや地震の時に遊郭に来ていた客の命は呪いによって、蛇神の贄となったのでしょう」

そう言われた瞬間に、エイミーが青ざめて震えた。ニルスが慌てて抱きしめて背中をさする。
ニルスにもエイミーが何を感じ取ったのか、抱きしめた瞬間に理解できた。
高笑いした遊女が放火した。

「はははっ、死ねばいい。みんな死んでしまえ!」

泣きながら叫び、遊女は焼けていく遊郭の中を歩いていた。牝の指輪の呪いで、牡のリングをつけた客が来ずに明日の朝には死ぬ遊女が、他の遊女や客を道づれにするつもりで火を放ったのである。

「自決した信者の怨念は自分たちと同じように、今も蛇神に人の命を捧げさせようとします。そして、人が亡くなるほど地の穢れが強まります」


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