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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(中編)-6

「地の穢れ?」
「バーデルの都の場合は、過去の呪いの儀式によって、蛇神の影響を人の心が受けやすくなります。貴方たちは牡のリングと牝の指輪で、火を放った遊女よりも身を守る力を身につけているので、怨念の影響は受けません」

騎士ガルドが見かけた母娘が男性の困窮者を見かけて、ばら撒かれた硬貨を拾う娘を連れて隠れたのは、シャンリーが虐殺した時に商人ロイドが欲情して人妻を襲ったように、男性が女性を襲うことがあるからだった。

ロンダール伯爵はバーデルの都に、フェルベーク伯爵領から男性の同性愛者が流れ込んでいることを聞いて、メイドのアナベルに言った。

「蛇神の信仰では男色は禁じられていたはず。牡のリングを男性につけさせて、交わり女性の隠れた力を引き出そうとしたぐらい異性との交わりを重視したが、同性愛者を敵視した。もし、蛇神の影響を受けて人が欲情しても、同性にしか興味を持たない人しかいなくなったら、信者は子孫を残せず絶滅する。そうなると蛇神に贄として命を捧げる者もいなくなるわけだ」
「では、フェルベーク伯爵領も偵察しますか?」
「僕は絶対に行きたくない、ニルスにも行かせられない。ニルスを行かせて、もしも何かあったらエミリーに恨まれるからね」
「それは男色に興味を持つということですか?」
「ロンダール伯爵領やこの村は、蛇神の影響や凶運を受けないように僕らがいろいろな方法で維持しているけど、フェルベーク伯爵領は中途半端に影響を受けているようだ。関わらないほうがいいかもしれない。バーデルの都やフェルベーク伯爵領からの難民の受け入れはする必要があるかもしれないけど」

ロンダール伯爵領とテスティーノ伯爵領には、フェルベーク伯爵領で迫害され人権を奪われた女性たちが逃げて来ている状況だった。
また、バーデルの都で困窮した者の中で心が蝕まれていない者は、ガルドが金を恵んで助けた母娘のように、他の伯爵領へ逃げ出している。

バーデルの都の倒壊した居住地では、難民たちがテントを張って野営生活をしていた。復興に着手されていない居住地の跡地で野営して暮らしている人たちは闇市の商人に倒壊した家から見つ出した品物を、わずかな食糧と交換して糊口をしのいでいる。
体力や腕力のある男性は廃墟をあさって品物を見つけられるが、女性や子供が真似をして負傷したり亡くなっていた。

「市場で手に入れてきた食糧を分けてやるから、一晩、抱かせろよ、な?」

言われて肩に手を回された若い女性が言い寄ってきたバロウの腕を払いのけ、にらみつけた。

「やれるなら誰でもいいんだろ、私の体にさわるな!」
「チッ、こっちは親切で声をかけてやったのに!」

その若い女性は唾を吐き捨てると、まだ未練がありそうな目で見つめている男から離れて行った。
野営している女性たちの中には、商人の男性に体を売ったり、掘り出し物を食糧に交換してきた男性に抱かれる者もいたが、彼女はそれをしなかった。
彼女は男性たちが賭博場の廃墟をあさる前に、地震があった翌日の朝に賭博場の客の遺体から財布袋を集めた。
血のついた装飾品も奪った。
それらを商人に少しずつ転売して、身を売らずになんとかしのいでいた。
彼女は自分がやったことを恥じて誰にも言わず、廃墟から盗んだ金や品物をテントの下に埋めて隠していた。
大地震の時、彼女は牝の指輪の契約を別の主人に変えるために、仮死状態になっていた。遊女の多くが煙を吸って意識を失い死んだが、彼女は離れの建物で儀式に失敗して死骸になってもいいように保管されていた。牡のリングをつけた新しい主人は火災で死んで、彼女は指輪を外れた状態で目を覚ました。
呪いによっていつ死ぬか怯えながらも、生き抜いていた。元遊女の彼女は、もう金のために男性に抱かれる生活には、うんざりしていた。

「おかえりなさい。あれ、ユーリ、すごく機嫌悪そう、何かあったの?」
「うん、馬鹿な男が声をかけてきた」

遊女見習いだった少女エルマ、この少女は牝の指輪をつけていなかった。
震災の時に、エルマは離れにいた。
リング持ちの客を取れずに眠っている死を待つ遊女や主人交換の儀式で仮死状態になっている遊女たちの生死を確認してくるのが、震災の時のエルマに任された仕事だった。普段の遊女見習いの仕事は、雑用や遊女の身のまわりの世話などである。遊郭の主人が、エルマに亡くなっている人とまだ息がある人を確認するように命じたのは、男性に確認させに行かせたら、確認ついでに男性が眠っている遊女を犯しているところを見つけたからであった。
エルマと主人交換の儀式に失敗して目を覚ました遊女ユーリは、ふたりで遊郭から逃げ出した。

テントの中でユーリは、エルマの身体を貪るように求めた。男性に抱かれるのはうんざりだが、肉欲はある。
エルマは遊郭では見習いの遊女に先輩の遊女から手ほどきを受ける事がある噂を聞いていた。あくまで噂だと思っていたが、広めのテントを手に入れ、ふたりで暮らし始めてしばらくすると、ユーリからエルマは体を求められて、キスや愛撫を受け入れた。
ユーリは男性に膣内を精液で満たされる快感も知っている。遊郭から逃げ出しても、快感の記憶はたまに生々しく思い出されて欲情するとエルマに甘えた。
エルマに牝の花を舐めてもらい、牝の花に沈めた指先でくちゅくちゅとかき回して愛撫されると、ユーリは身をくねらせて淫らなあえぎ声を上げた。
バーデルの都の瓦礫だらけの居住地には女性の同性愛者も暮らしていた。

蛇神に贄を捧げることによって、シャンリーは強い呪力を得ようとして、遊郭に女性の同性愛者を生み出していた。
蛇神の贄にする怨念から、ユーリとエルマは逃れて生き抜いていた。

ロンダール伯爵は地震が蛇神の影響によって起きたと考え、バーデルの都に異変が起きているかどうかを確認したかったのである。
異変が起きていればニルスやエミリーは無事では済まなかった。


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