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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(前編)-5

クリフトフ将軍によると、ダンジョン探索に慣れると手荷物はできるだけ減らして、魔物を討伐して得られる品物を使って野営しながら進むらしい。そのほうが疲れないからだと説明された。

マルティナはダンジョン探索は初めてなのに、最下層のさらに下を目指すと聞いて、クリフトフはひさびさにハンターの腕前を披露できると思いつつ、今回は試しだと言っておいた。初めてダンジョンの探索に挑む初心者パーティーでは、絶対に最下層までは到達できない。
人数もクリフトフとマルティナのふたりのみ。

(ふむ、これはやりがいがあるな)

ダンジョン探索は4人から6人でパーティーを組んで行うのが基本で、ふたりで探索に向かうのは浅い階層で短時間だけ潜る時にベテランが行う方法だった。
ダンジョンの最下層よりも、さらに別の階層が存在する噂はあった。
ダンジョンから外へ戻ってみると、潜ったのとはまったくちがう地域に出た。それは、途中で別のダンジョンへつなかる階層が存在するからだという噂である。あくまで噂であるのだが、そうした階層を使ってマキシミリアンがダンジョンで暮らしているというのは、ありそうなことだとクリフトフは思った。

「最下層の番犬が見つからなかったら、もしさらに下の階層があっても扉や階段があらわれない。その時は、また地上へ戻ってやり直しだぞ」

各階層に討伐すると下の階層への通路を出現させるボスの魔物がいる。最下層のボスの魔物は、双首の巨大な魔犬オルトロス。しかし、クリフトフ将軍によるとなかなか遭遇できないらしい。

地上へ戻って、また再生したボスの魔物を討伐して、最下層まで到達することになるらしい。最下層のボスの魔物を見つけるのが難しい。ただし、目撃例はあるが討伐された記録がない。
そのため、魔犬オルトロスの階層が最下層とされているが、さらにニアキス丘陵のダンジョンには、さらに下の階層がある可能性があるという。

「ハンターがダンジョンを探索するのは最下層まで制覇するためじゃない。魔物を討伐して得られる品物を手に入れるためだ。ただ、俺やマキシミリアンは最下層まで調査するために潜っていた」

3度目の探索で、マルティナとクリフトフはマキシミリアン夫妻に招待された。

「あ、かわいい」

マルティナの足元に、双首の黒毛の子犬が、とてとてとおぼつかない足取りで近づき、しっぽを振りながら見上げた。
マルティナが思わず抱き上げて、柔らかな体の毛を撫でまわした。
子犬もマルティナの顔をペロペロと舐めて、はしゃいでいるように見える。

「なんだと、そんな魔犬オルトロスが子犬だとっ?!」

クリフトフ将軍がとても困惑していた。通路の向こうから、マキシミリアンが手をふってゆっくりと近づいてくる。

「ふたりとも、36階層まで降りてくるのは大変だったろう?」
「はい、3回目です」

マルティナがマキシミリアンに答えた。
マキシミリアンは通路の行き止まりの壁に両手の手のひらをあて、短く呪文らしきものを唱えた。
壁がずずすっと床に吸い込まれるように下がり、隠し通路と下への階段があらわれた。

「公爵様、他の階のように扉が現れるわけではないのですね」

床に魔犬オルトロスを下ろして頭を撫でてから、マルティナは隠し通路へ足を踏み入れた。オルトロスは隠し通路の手前に座って、マルティナたちを見ながら、少しさみしげに鼻を鳴らしたような声で鳴いていた。

「オルトロスはあの階層の番犬だから、こっちに連れて来られるのを嫌がるくせに、ああやって呼ぶんだよ。危なくなったら、暗い空き部屋の隅っこにじっとしてるように教えてある」
「おい、マキシミリアン、噂になってるでかい魔犬は、ボスじゃないのか?」
「罠だよ。でかい魔犬が引きつけているあいだに子犬が逃げて隠れる。気配を消すのが子犬は上手だ」

マキシミリアンは、そのまま魔物娘のオーグレスに、クリフトフとマルティナを会わせた。
オーグレスは、マキシミリアンとよく手合わせをする大部屋で、腕立て伏せをしていた。

「おっ、ちょうどいいところに。御主人様、あたしと手合わせを。ん?」

オーグレスは、マキシミリアンのあとからついてきたクリフトフとマルティナに気がついた。

「クリフトフ、彼女の訓練で手合わせしてくれないか?」

大男のクリフトフは、ゼルキス王国の兵士たちから熊将軍と呼ばれている。
オーグレスとクリフトフが両手をがっしりと組み合わせて力比べをしているが、クリフトフがオーグレスを押さえ込むことができない。

「なかなかすごい腕力だ!」
「そっちこそ!」

パッと同時に手を離して距離を取る。クリフトフが軽く背を丸めて身構え、オーグレスがゆっくりと、クリフトフの背中側へまわり込む。
クリフトフは目を離さず、オーグレスに合わせて体が正面になるように向きを変えていく。

「とりゃああっ!」
「ひゃっ!」

クリフトフが殴りかかってきたオーグレスの腕をつかんで投げ技で返した。
床に背中から叩きつけられたオーグレスが、のぞき込むクリフトフを見上げて驚いていた。

「はははっ、オーグレス、投げ技は魔法じゃないぞ。クリフトフ、ひさびさにやるか!」
「おう!」

クリフトフとマキシミリアンが組み合うと、投げ技と返し技をオーグレスの披露した。
マルティナとオーグレスは、息を飲んでふたりの技の応酬を見つめていた。
マキシミリアンがクリフトフを体勢を足払いで崩れさせると、崩れて倒れ込みながらクリフトフも脚を使い、マキシミリアンの体勢を崩しにかかる。

「オーグレスに投げ技を教えてやってほしい。打撃や蹴りは威力と鋭さは抜群なんだが、まだ投げ技を知らない」

クリフトフ将軍とオーグレスが、それぞれの技を体をぶつけあい教えあっているあいだに、賢者マキシミリアンと参謀官マルティナは大部屋から抜け出した。


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