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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(前編)-6

「マルティナ、ここに僕がいるのを、誰から聞いたのかな?」
「細工師のロエル様からです」

マキシミリアンは通路で立ち止まりロエルからの手紙を受け取った。そして細工師ロエルと弟子のセストが、エルフの王国からミレイユに招かれゼルキス王国に滞在しているという伝言を聞いた。
マキシミリアンは歩きながら、異界の門の破壊作戦を騎士団で細工師ロエルの意見を参考に準備している事も聞いた。

ミミック娘とマルティナは握手を交わした。マルティナの瞳が紫色なことに、ミミック娘は興味を持った。

「その瞳、貴女はホムンクルスなのですね」

マルティナが驚いてミミック娘の顔をまじまじと見つめ返した。

「ミミック、マルティナはホムンクルスなのか?」
「御主人様、こちらのマルティナ様は私たちに近い存在です」

神聖教団から聖騎士ミレイユのそばへ派遣される時に、マルティナは自分が人間ではないことを告げられた。
マルティナがホムンクルスであること。その秘密をマルティナは、ミレイユにも話していない。

ホムンクルス。
生殖ではない方法で生み出され、育てられた人の姿をした人間ではない存在。神聖教団の法術の技術力の結晶のような、貴重な存在である。

「あまり驚いていないようですね」
「マルティナ、今から、エルフ族の秘密をひとつだけ君に教えたい気がするんだけど、神聖教団には報告しないと約束できるかな?」

世界樹からエルフ族の子は生み出されている。生殖せずに生み出される。ただし現在は、女児しか生まれてこない。

「マルティナ、オーグレスやミミックがダンジョンの中で錬成召喚されたり、エルフ族の子が世界樹から召喚されるようにして、君も召喚されてハユウで育てられたからといって、僕はそこには驚かないけどね。無事に大人になるまで生き残っていることはめずらしい」
「公爵様は、ホムンクルスについても御存知なのですか?」
「無事に大人になるまで成長したホムンクルスというのは聞いたことがない」

神聖教団は、夜の女王ノクティスと同化した聖騎士を召喚するために、試練に挑むことができる才能を持つ子供をハユウの特別区に集めて育てた。マルティナの姉、聖騎士の試練に挑んで蛇神の異界へ連れ去られたエルヴィールとマルティナは、血のつながりはなかった。
もしもエルヴィールと血縁者だったとしたら、マルティナも蛇神に祟られていたはずと神聖教団の神官たちは言った。

「公爵様、ホムンクルスは、大人になるまで生き残れないという話は初めて聞きました」
「ホムンクルスは、紫色の魔石を使い錬成召喚する。だから瞳の色は魔石と同じ色をしている。他にもステファニーストーン、アメジスト、スティヒタイトクリスタルなどの魔石が使われる。マルティナの召喚石は、ヴァイオレットモルガナイトという魔石かもしれない」
「召喚石?」
「君の前にいるミミックは、鍵のかかった宝箱と中身が丸ごと召喚の触媒になっている。上層階の魔物たちは討伐されてもまた出現するようにミミックやオーグレス、他にもいる娘たちは召喚術であらわれたから、討伐されたら再生しても記憶はなくなる。ホムンクルスは、大人になるまでに過去の記憶が維持されずに魔石に戻ってしまうことが多い。再び召喚された時には以前の記憶や人格は失われてしまう。再び召喚された容姿は同じでもね。大人になる前に新しい人格になって、途中まで成長しても、記憶や人格が保持されずに消えてしまう。そういう意味で生き残れない」

マキシミリアンは、マルティナにホムンクルス錬成召喚術のありがちな失敗について説明した。

「瞳の色が同じで、他人から見た目はかわってなくても、記憶や心が失われて変わっていたら、同じ人といえないと僕は思う」
「伯爵様、魔石へ戻ってしまったあと、再び召喚されたら、以前の記憶を思い出すことはないのですか?」
「ホムンクルスの錬成召喚術の限界は、その問題を解決できなかったんだよ。だから、ホムンクルス錬成召喚術は行われないように禁じられていたはず。聖騎士の試練を受けさせ、神と呼ばれるものを魔石にして力だけを使おうとしたのかもしれない」

いにしえの神を融合したあと、ホルンムクスが魔石へ戻れば、神の力の宿った魔石ができると考えた者がマルティナを召喚した可能性があると賢者マキシミリアンは、マルティナに語った。

ホムンクルスのマルティナが魔石へ戻らなかったのは、姉のエルヴィールと強い感応力でつながりができて、マルティナの凶運を引き受けたからなのだが、それは神聖教団の神官たちにはわからない。姉の回復のためにマルティナが術を用いたことを、聖騎士ミレイユしか知らず、ミレイユは神官たちにマルティナが追及されないように、マルティナが行った行為を隠したからである。

「伯爵様、エルフ族の秘密を私に教えたのは、いずれ魔石へ戻って忘れてしまうからですか?」
「魔石へ戻らないようにする方法は実はもうわかっている。ミミック、儀式の間でマルティナを調べる」
「了解しました、御主人様」

ミミック娘が箱の中に頭の先まで沈み込んで行き、マルティナの目の前でパタンと宝箱のふたが閉じた。

「僕がダンジョンに来るまでは、ミミックがダンジョンを管理していたんだ。マルティナたちがダンジョンに来たのも、ミミックが気づいて教えてくれたから迎えに行ったんだよ」

マルティナを儀式の間で待っていたのはミレイユの母親、マキシミリアンの妻のセレスティーヌだった。

「セレスティーヌ様、お久しぶりです」
「結界に問題はないかしら?」
「はい、問題なく維持されています」
「貴女がクリフトフを連れてダンジョンに来たということは、ミレイユがゼルキス王国に戻っているということね」

セレスティーヌは大陸全体へ蛇神の異界からの障気の流入を防ぐために、ゼルキス王国の国境をふくめ大陸各地に魔力の障壁による結界を張った。


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