王都奇譚-7
さらに、女性でありながら女男爵という爵位を君主から与えられ、認められた憧れの法務官レギーネに、ゴーディエ男爵に狼藉を受けている姿を見つめられていることに、踊り子アルバータは混乱していた。
女性である限り、男性に狼藉されても我慢して受け入れなければならない。法の番人であり、時には君主でさえ法で裁く女性がアルバータを黙って見つめているのは、そのように教えられているような気がした。気高く美しい法務官レギーネも、女性として屈辱を受け入れているのかと思うと胸が引き裂かれたような痛みすら感じて、涙があふれそうになる。
ゴーディエ男爵は、アルテリスやヘレーネのように感じ取る力は、誰かを心の底から愛したことがない上に、自分自身すら愛していない人物だったので、踊り子アルバータの心を察することはてきなかった。王の側近として知られるようになってからは、権力者として宮廷だけてなく社交の場の舞踏会でも、つながりを求めてくる多くの貴族の女性たちの相手をする機会がある。ゴーディエ男爵は政務だと考えて、宮廷議会を裏でまとめ、王が望むことを同意して承認する組織に作り変えようとしていた。
誰かと恋をして胸を焦がし、肉欲に溺れる人物ではなかった。
激しい舞踏のために鍛えているアルバータの身体つきが他の貴族の女性とちがうのでめずらしく感じ、若いゴーディエ男爵は踊り子を興味本意で犯してみたくなったのだと思い込んでいた。
アルバータを誘う貴族の男性たちは、高額の報酬を提示して自分の邸宅へ招こうと交渉してくることはあった。アルバータはその誘いをすべて断っていた。
「アルバータ、愛蜜が花からあふれてきている」
こねられる敏感な淫核の下で、アルバータの牝の花はほころび、白濁の粘液だけではない愛蜜が混ざっている。
「ち、ちがう、そんな愛蜜なんて、んあっ、あっ、んんっ」
慌てながら否定し、両脚を閉じて腰をくねらせて指先から逃れようとするアルバータだったが、ゴーディエ男爵の身体で自分からは牝の花は見えない。ただ、愛撫で快感が身体を突き抜けていたのは確かだった。
ゴーディエ男爵は牝の花を弄るのを止めて、ふくよかなうっすらと青い静脈が透けて見えている艶かしい乳房に手をのばした。乳輪の中心には淡い鮮やかな薄紅色の乳首がたたずんでいる。その乳首には可憐さがあった。
ゴーディエ男爵の指先が乳輪周辺を囲むように指先をすべらすと、これ以上、快感に翻弄されている顔を法務官レギーネに見られないように顔を横に向け、ぞくりと走り抜けた快感に身を小さく震わせていた。
アルバータがしなやかな鍛えられてはいるが細い腕で丸出しの乳房を隠す前に、ゴーディエ男爵は双乳の谷間にその整った肉欲や興奮とは無縁にも見える顔を埋めた。
「くぅっ、んんっ、んっ!」
止めてくれと懇願するのも聞き入れられないだろうと、アルバータが快感に声を上げないことに目を閉じ集中する。
しかし、ゴーディエ男爵は小ぶりの可憐な蕾を吸い、舌をこそぐように舐め愛撫する。
(ああ、ダメっ、そんなに吸ったり舐めたりされたら、おかしくなるっ、んっ、いやっ、また声が出ちゃう!)
ふくよかな双乳や先端の敏感な蕾をゴーディエ男爵に責められ、アルバータの内股がびくびくと震える。声を殺して、目を閉じて眉をしかめているアルバータの身体がゴーディエ男爵の下で悶えるうちに、閉じ合わせていた両脚の力が抜けて、わすかに隙ができる。
ゴーディエ男爵は、王の愛妾の3人で最も幼い美少女のミリアよりもアルバータは歳上で、華麗だが腰づかいの艶かしい舞踏とは裏腹に、アルバータは破瓜の出血や膣洞のきつい閉ざしはなかったものの、まだ肌を合わせる肉欲の交わりに慣れていない可憐さがあることに気づいていた。
「危ない、ゴーディエ!」
ゴーディエ男爵は法務官レギーネに、ふいに声をかけられた。
踊り子アルバータの瞳の色が澄んだ青から深紅に変わっていた。目を開いたアルバータの口元に微笑が浮かび、口を開いた時には犬歯が鋭く変化している。
レギーネの声に、ゴーディエ男爵は腕で咄嗟に自分の喉元をかばっていた。踊り子アルバータは、ゴーディエの右腕に咬みついている。
傷口から流れる血をアルバータが目を閉じ、喉を小さく鳴らして、こくこくの飲みこんでいく。頬はほんのりと上気し、眉をしかめて愛撫されていた時とはまるでちがう淫らな表情だった。
「レギーネ、教えてくれて助かった」
ゴーディエ男爵の血を啜ったアルバータが、ふはっと唇を腕から離して、恍惚とした表情となりおとなしくなった。
「喉を食いちぎられなくてなによりでした。王が言っていたのは、踊り子アルバータは、覚醒して咬みついてくるという意味だったようですね」
「しばらくまた傷がふさがるまでかかるかな、これは」
ゴーディエ男爵が、自分の腕の牙が刺さった傷を見て言った。
「ふふふ、初めての血が、ゴーディエ男爵の血ではこれから他の者の血では、きっと物足りないでしょうね」
法務官レギーネが笑いながら、ふー、ふーと荒い息を吐き、まだ瞳が深紅のままで興奮したまま、視線が定まらずに恍惚としているアルバータを見つめた。
「腕の傷をふさぐのは簡単です。ゴーディエ、彼女が血を与えられ、今、とても艶かしい満足そうな表情をしているのを見て、貴方も少し興奮したのではありませんか?」
血を啜られているうちに、ゴーディエ男爵の股間の逸物が痛いほど勃起してしまっていた。
「今のうちに、アルバータを犯しながら貴方も咬みついて、本当の悦びを彼女に与えてやってはいかがですか。腕の傷もすぐふさがりますよ。それとも、その逸物を咬まれて快感に溺れながら、アルバータの下僕になりますか?」
「レギーネに見られているのは落ち着かないが、逸物を食いちぎられて死ぬわけにはいかない」
レギーネはゴーディエ男爵の興奮をふくんだ声を聞いてぞくぞくした。