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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-1

ザイフェルトの身体すべてから発していた無垢な念にアルテリスのなかの母性が反応して、ときめきのようなものを感じてしまった。
胸に顔を押しつけられて押し倒されながら、嫌じゃなかった。むしろ気持ち良さもあった。

「アルテリス、念の力を全身で発してしまうと、目の前のザイフェルトみたいに立ち上がるのもつらいぐらい体が脱力してしまう。念の力を集中するのができないとあの状態になる」
「ふふん、あたいは昨日の夜に教えてもらったからできるけど。なるほど、そういうことか」
「アルテリス、フリーデに………と頼めるかな。私たちが教えるのは気まずい」
「そうだね。あたいが手取り足取りザイフェルトに教えたら、フリーデに妬かれそうだもんな」
「私が教えて、男好きになられてもフリーデに怨まれるだろう」

ザイフェルトは木陰で安静に寝そべらせて眠らせておいて、テスティーノ伯爵とアルテリスは話し合いながら、マリカが用意して持たせてくれた昼食の弁当を食べていた。

「ザイフェルト、お昼ごはんですよぉ、えっ、アルテリスが食べていい?」
「こらこら、わざとそっと声をかけて、ザイフェルトが弁当をくれたことにするのは止めなさい」
「しょうがないなぁ、ザイフェルト、起きないとイタズラするぞっ!」
「う〜ん、フリーデ、もう少し、むにゃむにゃ……すぅ、すぅ、すぅ……」
「ザイフェルトは、こんなに寝起き悪い奴だったのか、フリーデに起こしかたを聞いておかなくちゃだな」
「しかたない。少し驚くかもしれないが私が起こすとするか」
「えっ、伯爵様、もしかして、あれをする気か?」

アルテリスが3歩後退する。かわりにテスティーノ伯爵がザイフェルトのおだやかな寝顔のひたいに手をかざして、ゆっくり目を閉じた。

「すぅ、すぅ……ううん……うわっ!」

ガバッとうなされて目を覚ましたザイフェルトがまわりを見渡し、はー、はー、と息を吐いている。
アルテリスがザイフェルトに水筒を手渡した。

「ほら、水。ザイフェルト、落ち着け。伯爵様、たまに手加減なしだからな。お昼ごはん食べちゃいなよ」
「あ、はい。おはようございます」

眠っているザイフェルトに念の力で、テスティーノ伯爵は殺気を送り込んだ。
近くにいると、アルテリスはテスティーノ伯爵の殺気の念の影響を感じ取ってしまうので、3歩ほど離れたのである。

昼食後はザイフェルトの修行について、テスティーノ伯爵がストラウク伯爵に相談するために早めに戻ることにした。

アルテリスはザイフェルトが念を集中させる訓練の相談をフリーデとしており、テスティーノ伯爵とストラウク伯爵もザイフェルトの念の力の修行について話し合いをしたので、マリカがストラウク伯爵から頼まれて、夕食の支度までザイフェルトの相談を聞くことになった。

マリカの巫女の力は感応力である。

「念の力の修行はしていませんから、役に立つかわかりませんけど、スト様が言うにはどちらも同じ力で、使い方がちがうということらしいです」

ザイフェルトに、マリカがストラウク伯爵から教えてもらったことを話した。
ザイフェルトはマリカの話を聞いて、以前よりも実感としてわかる部分が増えている。
胸の前で両手に均等に力をかけて合わせて、少しずつ離したときに自分の気配を感じる。それも感応力によって自分の発している念の力を感じ取っているからだとわかる。
マリカが手のひらをザイフェルトに向けて、その手にザイフェルトが手のひらを合わせる。
目を閉じてマリカの手の感触や温度のちがいを感じ取っていた。

「ザイフェルトさん目を開けて下さい」

目を開けると、ザイフェルトの手とマリカの手は、マリカの指の太さほど離れていた。

「たぶんこれ以上、手が離れてしまうと目を閉じて集中していないと、私の手を感じられないと思います」

ザイフェルトは目を開けてしまったら、マリカの離れた手の気配をわからなくなってしまった。

「自分の念の力、他人の気配のように、山に踏み入れば山の気配があって、温泉でお湯につかるとお湯を肌で感じるみたいに、山の気配も感じられるそうです。ザイフェルトさん、次は少し家の壁に手を当ててみて下さい」
「こうか?」
「壁の感触が手に伝わってきますよね。それをおぼえておいて下さい。目を閉じてもいいですよ」

ザイフェルトは壁の感触に意識を集中してみた。
マリカも隣て壁に手を当てたり、撫でたりして感触をおぼえようとしていた。
ザイフェルトも壁を撫でてみた。

「村の人とかが、今の私たちを見たら、何をしてるかわからなくて、きっと変な顔をしますよね、きっと」
「壁に何かあるのか、とか聞かれて一緒に壁を撫で始めるかもしれない」

マリカとザイフェルトは再び目を閉じて手のひらを合わせた。

「ザイフェルトさん、これからさっきさわった壁の手ざわりを思い浮かべてみて下さい」
「わかった」

ザイフェルトが壁の手ざわり、少し冷たい感じや小さなざらつきなどを思い浮かべた。

「そのまま壁の手ざわりを、私に伝われって思ってみて下さい」

するとマリカの手の感触が、壁をさわっているような感触に変わった。
驚いたザイフェルトが目を開けた。

「ザイフェルトさんと、私はだいたい同じように壁を感じていたんですよ。同じ壁をさわってましたから、当たり前かもしれませんけど。ザイフェルトさんが壁を思い浮かべているあいだ、私も壁を思い浮かべていたんです。それから、ザイフェルトさんが想像した心の中にある壁を、私に伝われって考えた」
「そうだ。そうしたらマリカの手が壁の手ざわりになった」
「気づいてないみたいですけど、私にザイフェルトさんは壁の手ざわりの念を、手のひらから私に送ったんですよ」
「手のひらから、念を送った?」
「私にザイフェルトさんがさわっていたのは、手のひらだけですからね」


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