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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-2

「たしかに。でも、念というか思い浮かべていただけなんだが」
「私もザイフェルトさんと同じように壁を思い浮かべていたんですよ。だから、つながりができたんです。私たちの心のなかに思い浮かべた壁が、とても似ていたので、ザイフェルトさんが思い浮かべた壁の手ざわりが伝わったのと同じになったということです。言葉にすると、少しややこしいですけど。私もザイフェルトさんに伝われって思ったんです。私の思った壁がザイフェルトさんの心のなかにあって、私の想像した壁の手ざわりも伝わったのと同じになったわけです。ふたりでつながっていたのは、手のひらだった。だから、私もザイフェルトさんの手が壁の手ざわりに感じました。感応力というのは、心のなかに同じものがあってつながりを感じることなんです」
「想像しているものがちがっていたら、伝わるのか?」
「私が壁を冷たいと思っていて、ザイフェルトさんが熱いと思っていたら、ずれていますよね。でも、念の力が強い人が熱いと思ったことを感応力が強い人が受け取ると、温度以外の壁の手ざわりが同じなので、たぶん感応力の力が強い人はまちがえたと勝手にザイフェルトさんの思い浮かべていたのと同じ、熱い壁を思い浮かべてしまいます。相手の心のなかにある壁の温度を変えてしまうことになります。ちがっていたら、伝わるというより、思ったことを変えられてしまう。でも、念の力や感応力を使わなくても、私たちは同じことを言葉でしていますよね。ん〜、私が赤と言ったら、ザイフェルトさんも赤色を思い浮かべますよね」
「そうだな、赤色を思い浮かべる」
「私が、それは夕焼けの色の赤とか、血の赤色とか、同じ赤色と言うけれどちがう赤色だと話すと、ザイフェルトさんの思い浮かべている赤色が、夕焼けの空の色になったり、血の色になったり変わりますよね」
「たしかに変わるな」
「スト様が話す、つながりができるということは同じ気持ちがあって、同じ思いになるってことかもしれません。スト様みたいに、わかりやすく喩えられなくてすいません」
「そんなことない。すごくわかりやすくてありがたい。マリカ、ありがとう」
「もう少し、ザイフェルトさんと力を使って、イタズラをして遊んでいたいんですけど、私、もうそろそろごはんの支度をしないと。壁をさわるイタズラが、何か修行の役に立ちましたか?」
「おもしろかったよ、とても」
「フリーデさんと、仲良くいろいろ試してみて下さいね。ふふっ、もっといいことがありますよ」

ザイフェルトは食事ができるまで、寝所の部屋に戻って考えていた。
アルテリスを押し倒してしまった時に、一瞬、すごい快感があった。気がついた時には、頭を小突かれていた。
夢中でしがみついたのは覚えているが、もしも、あの感覚がアルテリスに伝わっていたとしたら……。
アルテリスが慌てながら、ザイフェルトに何を言ったのか思い出した。

「お、おい、ザイフェルト、起きろ、あたいの胸に顔をうずめてもいいのは、伯爵様だけだっ!」

ハッとザイフェルトは、アルテリスが慌てた理由に気がついた。アルテリスは感応力があって、念の力の修行をテスティーノ伯爵としていると聞いていた。
あの時、ザイフェルトはアルテリスのふくよかな乳房に思いっきり顔を押しつけてしまっていた。

(アルテリスは、俺がボーッとなってしまったあの快感を感じ取ってしまっていたのか。それなのに、頭を小突いたり、すぐ起き上がったのもすごい。いや、それよりも、俺はアルテリスにやらしいことをしたのと同じか、それよりもまずいことをやらかした……のか?)

抱きつき乳房に思いっきり顔を押しつけて、快感を感じさせた。胸を揉んだり、キスをしたり、最悪の場合は犯して感じさせたのと同じことをしたのかもしれないと、ようやく気づいた。

「こらっ、ザイフェルト、あたいの胸をさわったんだから、伯爵様にあやまらないと、フリーデに言いつけるよ!」

何をアルテリスがフリーデに言いつけるのか。なぜ、アルテリスはテスティーノ伯爵にあやまれと言ったのか。

(テスティーノ伯爵の伴侶のアルテリスを、俺は目の前で強姦したのと同じようなことをした?)

それでいつもなら日暮れ近くまで修行するところを、テスティーノ伯爵は切り上げて、ストラウク伯爵にザイフェルトをどうするべきか相談しているのかと考えて、ぞわぞわと鳥肌が立った。
アルテリスは帰ってフリーデと話したいことがあると、どこかに連れ出して、まだ戻って来ていない。

「ザイフェルトにあたしは、伯爵様の前で恥ずかしいことをされたんだ。フリーデにも恥ずかしいことしてやるっ!」
「アルテリスさん、んあぁっ、嫌あぁぁぁっ!」

アルテリスにフリーデは今ごろ裸にされて、ものすごく恥ずかしいことをされているのではないかとザイフェルトは想像してしまった。

(うわっ、まずい、まずい、これはまずい、どうしたらいいんだ?)

動揺しているザイフェルトは、修行に使っている森林の空き地で目を覚ました時に、テスティーノ伯爵がのぞき込んでいた顔やうろおぼえだがとんでもない恐ろしい夢をみたことをさらに思い出した。

そして、マリカと話していた時の言葉遊びの赤色の連想が、夕焼けと血だったことや、マリカの微笑みながら最後に言った言葉にザイフェルトは不安をかきたてられた。

「フリーデさんと、仲良くいろいろ試してみて下さいね。ふふっ、もっといいことがありますよ」

(恐ろしい、マリカの言ったもっといいことってなんだ!)

普段はおとなしく可愛らしいとしか思えないマリカの微笑みが恐ろしい。

ザイフェルトが死刑執行を待つ罪人のような気持ちで、ひとりで誤解して苦悩していた。

師匠アノスリードは、念の力を使えなかった。師匠のように念の力を使わない武術を極めていく者かもしれぬと、ストラウク伯爵は考えていた。しかし、ザイフェルトにも才能があるとわかった。


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