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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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牡のリングと牝の指輪-1

奴隷商人ニルスは、奴隷商人となる前は王都暮らしの男爵家の子息である。男爵という爵位は、本人の代だけで継承しないこともできる。名門貴族の家系のように宮廷官僚を輩出している男爵家の場合は、爵位を継承し続けている。
貴族の家系の子息でも、ニルスのような次男のそれも妻妾の子となれば、王都で暮らしていても宮廷官僚への道は閉ざされているようなものであった。
男爵家の本妻の腹から産まれた長男が亡くなり、親類筋にも爵位を継いで官僚となれる人物がいないという条件が整わなければ、ニルスのような妻妾の産んだ子に宮廷官僚となる人生は訪れない。
それでも、何があるのかわからないので妻妾の子には、王都から離れた土地で遊学させておくというのが貴族の慣例となっていた。
若い頃のモルガン男爵のように、他の宮廷官僚の貴族と問題を起こして、長男だがほとぼりが冷めるまで、遊学して身を隠す場合もある。
ニルスの場合は王都での出世は諦め、小貴族として仕えるか、貴族の血筋であることを捨て平民階級の者として生きるかしか道はない。
ニルスを産んだ母親が亡くなって、ニルスは父親のルーク男爵から王都を離れてしばらく暮らすようにという手紙と路銀を邸宅の執事から渡された。
手切れ金といったところだろう。本妻は長男、三男を産んでいる。後継者問題が起きた時には、ニルスには行方がわからなくなっていてもらっているほうがありがたいという考えがあからさまにわかる対応である。こうして、ニルスにすれば大金が渡された。
妻妾の子ニルスは、王都を離れ、バーデルの都で路銀を増やそうと、賭博場で有り金を全部賭けて大勝負に挑むことにした。
素人勝負のやり方は、調子良く勝っているうちはまだ警戒して、賭け金は小出しにしている。ある程度まで稼いだところで止めるか、勝負に出て、賭けを始めた時の元手は確保できれば負けはない。しかしそのまま、ずるずると小出しの勝負を続ける。
少しずつ負け出すと焦り、負けたら取り返しがつかない金額を賭けて大勝負に出るというのが、素人勝負の大負けへの流れである。
ニルスもその流れで有り金を全部を賭けて勝負しようとしていた。
王都まで帰れば、また父親から金をたかって旅に出ればいいという甘えもある。
この夜、その負けの流れからニルスは抜け出す幸運に恵まれた。
リヒター伯爵領で行われた結婚式の効果の幸運を、ニルスは賭け事に使ってしまった。ここから、彼が奴隷商人になる運命の道へ踏み出したともいえる。
彼は賞品の奴隷と、旅に出た時の10倍の大金を前金で得た。

(大勝ちすると、特別待遇になるという噂は本当だったんだな)

安宿や村人の家に金を渡して泊まり歩いてきたニルスは、大きなベッドで寝そべりニヤニヤとまだ興奮していた。最後の大勝負の時に勝った興奮が、余熱のように残っている。
今夜から豪華な部屋に無料で宿泊でき、賞品の奴隷が今夜から彼を満足させてくれると聞いた。賞金の受け取りに1ヶ月待たされると聞かされ、今夜受け取りできる前払い分の賞金だけでもよこせと彼は譲らずごねた。奴隷、10日間の無料宿泊という条件つきで残り賞金の受け取りの金額は後日交渉という必死の賭博場の主人から提案に彼は同意した。

ターレン王国では下着1枚か全裸で眠るのが習慣だが、村人の家ではそれもできなかった。彼は入浴して全裸でベッドで横たわり、用意させた酒を飲んでご機嫌だった。野営では入浴もできなかった。路銀の減りが気になって、酒も我慢していた。

「失礼致します、ニルス様のお部屋はこちらでよろしかったでしょうか?」

扉の向こうから女性の声がして、ニルスはベッドから飛び起き、客室の扉を勢いよく開いた。

「私はエイミーと申します。今夜から私は貴方を御主人様として仕えさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」

全裸の上からロープ1枚の姿で、ニルスの部屋に訪れたのは、ニルスと勝負して負けた若い女ディーラーだった。
この夜、賭博場に女伯爵シャンリーが視察に来ていたのである。

「貴女の与えた損害の金額は、決められた規則に従って払ってもらうわ。貴女が勝って得る報酬の割合と同じ、損害の半分を貴女は払えるかしら?」
「それは……分割で期限を決めて必ず払います」
「ダメよ。貴女だって今まで報酬は即金で受け取ってきたじゃない。あの坊やが貴女を気に入ってくれるといいわね」
「それは、まさか……」
「貴女は賞金の奴隷になりなさい」

1番星という木札を使った賭博がある。22枚の木札の裏側には数字が書かれている。ディーラーは先に1枚、表側に並んだ木札の中から1枚を選び手元において伏せておく。
残りの21枚の木札から、客は伏せられた木札を2枚選び、そのうち1枚を選んでディーラーや他の客と勝負をする。もっとも小さな数字の木札を選んだ者が場に出された賭け金を得る。
客はディーラーの木札が公開される前に自分の木札の数字を公開して、勝負からおりることができる。おりると賭け金は半分返却される。
勝った者は、参加者全員の賭け金を総取りできる。同じ数字で引き分けになることはない。例外はディーラーが勝利放棄した場合のみである。
ディーラーは引き当てた木札の数字が1から5の場合のみ、数字を公開する前に勝利放棄の引き分けを宣言することができる。ディーラーが勝利を放棄しているため、参加者がディーラーとの数字くらべで負けていても、場に出した自分の賭け金を戻してもらえる。
数字の1が最も強く1番星と呼ばれる。
客は自分の木札を開く前に2倍、4倍、8倍、10倍を宣言できる。勝てば総取りする金額が上乗せになる。負ければ、勝者に不足分を上乗せして支払う。
10倍勝負はめったに宣言されない。
報酬の倍取りを参加者が宣言すると、他の参加者は勝負をおりて、倍取り宣言の参加者とディーラーの勝負になりがちてある。

「誰もおりないのに、貴女は勝負を受けた。なぜ?」


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