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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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両性具有の秘術-10

リヒター伯爵も蛇神の異界の淫夢をみながら、眠る時間が長くなっていく祟りを受けていた。ロンダール伯爵も祟りを受けたが、アナベルが身代わりとなっていた。夢の内容を聞いてロンダール伯爵はアナベルに、ターレン王国が建国される以前は、蛇神ナーガを信仰する者たちの国があった歴史を語った。
建国後も蛇神ナーガを信仰する者は処刑されていた。各地でそれぞれ反乱を繰り広げた者たちは、その後は合流し風葬地に集結。風葬地の砦に立て籠り王国軍と対立。最終的には圧倒的な王国軍の攻撃を受け鎮圧された。

「ターレン王国は蛇神ナーガの信者を弾圧して、王国を樹立した。今のランベール王は13代目にあたる。およそ400年から500年ほど過去にあたる。死の眠りは、そこに関係したものらしい。ステファニーの死は無駄じゃなかった。アナベル、僕らの先祖は蛇神ナーガに祟られて、祟りから逃れるために呪術を用いるようになったのかもしれない。なぜ今になって、死の眠りの祟りが起きているのか、そこがわからない」

ガルドとシャンリーが、辺境の村を焼き討ちにした。国内では認められていない奴隷を酷使していたことも怨みの念の力として作用し、異界の門が出現していることを、ロンダール伯爵は知らない。

ロンダール伯爵の祖先は、辺境で奴隷を従わせるための呪術を行った。奴隷の肉体に呪印を刻むことで呪いをかける。逃げ出したり主人に逆らえば、呪いが発動する。ロンダール伯爵の一族と辺境で行われていた奴隷の酷使には呪術を伝えたというつながりがあった。ガルドは奴隷たちを手下にして、かつて呪術で奴隷を酷使した者たちの末裔、つまりターレン王国へやって来た移民たちの末裔を凌辱して殺害した。その犠牲者は蛇神ナーガの贄となり、異界の門が開かれた。異界の門が開かれると、蛇神のしもべが具現化して出現する。
異界の門が出現する以前から、障気は長期間にわたり、じわじわとターレン王国に流れ込んでいた。
目に見えぬ障気の影響を受けた者は、死の眠りの祟りを受ける。
ロンダール伯爵は一族が過去に行った行為のつながりがあると知らず、辺境の焼き討ちされた村の犠牲者の遺骨を呪詛の呪物として使用したことで、国王ランベールやリヒター伯爵と同様に祟られたのだった。

王国の建国に関する歴史は一族の当主に伝えられているが、その後に一族の者が辺境で呪術で何をしたのかまでは、呪術師の一族であることは知る者だけが知っているという存在として隠されてきたので、伝えられていなかった。
誰かを呪詛して相手を呪殺すると、呪いをかけられた者だけでなく、かけた者も代償として命を落とす。そのため、ロンダール伯爵が呪術師の一族の当主であることを知る者は、今ではシャンリーのように呪術を用いる者だけとなっている。
辺境の村の住人たちは先祖が行っていた呪術による奴隷の酷使や道具のように凌辱していた報いを受けたともいえる。しかし、それはすでに忘れ去られており、ガルドという傭兵と手下たちによって、理不尽な暴力を受けて殺害されたという認識しか持てなかった。

時代を越えて人のつながりがあることを前世の記憶を持つ者たちは知っている。
ステファニーやアナベルにも、本人たちは思い出すことはない事だが過去の因果があった。
アナベルは夢の中で女性を凌辱するおぞましいものになっていたという。
もしも、リーフェンシュタールがアナベルの前世の姿を霊視すれば、アナベルの前世が蛇神の巫女のひとりであることに気がつくだろう。転生している巫女は、リーナの錫杖に隠れて異界へ渡った亡霊の神官たちに利用されて死んだ者たちである。ステファニーは、前世ではローザの儀式に関わった双子のかたわれであった。前世でローザに対して行った凌辱をロンダール伯爵とアナベルによって自分が受け、儀式のナイフで贄にされるとは想像もしなかっただろう。
蛇神ナーガを信仰する神官たちは、蛇神ナーガにより永遠の不老不死の命を授かると信じた。
障気の塊の蛇神のしもべとして、憑依した者の記憶を蓄積しながら、滅ぼされるまで存在し続ける。意識としては生きている瞬間もあるが、肉体はない。生者へ憑依することで、かりそめの生を受け、憑依したものが死を迎えると、記憶を持って蛇神の異界へ逃げ戻り、淫獄で凌辱し蠢き這い回るものは、不老不死を望んだ者たちの末路である。

アナベルは転生し、前世で蛇神の神官たちの因果に関わっていく運命を生きている女性であった。
蛇神のしもべと成り果てた者たちより、前世の因果に関わっている運命を生きるのほうが人間らしい生活ができている意味では、かなりましなのかもしれない。
アナベルは、前世では憧れていた上位の神官たちが、どのような存在に成り果てたのかを淫夢の中で体験したのだった。

ロンダール伯爵は、シャンリーが使っているナイフが、蛇神の神官が贄を捧げる儀式に用いるいわくつきの物だと知っていた。ロンダール伯爵からすれば、それはシャンリーの懐古趣味のようにしか思えなかった。

蛇神の偶像
蛇神の錫杖
儀式のナイフ
蛇神祭祀書
シャンリーは、蛇神の錫杖以外を呪物を所持していた。
蛇神崇拝の最終目標は不老不死である。その不老不死の秘術は、シャンリーに伝えられていない。
蛇神祭祀書は、読む者の力に合わせた秘術を教える魔導書である。
ステファニーをシャンリーは贄に捧げたことで、シャンリーは蛇神祭祀書から、両性具有の秘術についての知識を得た。
贄の巫女と交わり、術者の身代わりに呪術の代償として命を捧げる淫らな秘術。
術者自身の命をふくめて多数の者の命を代償として行う呪術は、強い効果を発揮する。しかし、両性具有の秘術で身代わりを用意すれば、他人の命だけで自分の命を犠牲にした呪術と同じ強い効果が得られる。
シャンリーはこれまで自分の命を犠牲にする呪術を行った事がなかった。
この時からシャンリーは、ひそかに他人の命を身代わりの犠牲にする事を考えるようになる。


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