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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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思想家モンテサント-5


若い三人の弟子たちの話を聞いていたモンテサントは、ザイベルトがなぜモルガン男爵を暗殺しなければならないのか、どんな考えを持って暗殺するつもりか、説明を求めた。

ザイベルトはベルツ伯爵の子息の子爵メルケルに妻を強姦され許せず殺害した重罪人であること。その時、誇りを傷つけられたと感じて殺害してしまったことも師のモンテサントに話した。
ベルツ伯爵は、貴族殺しの大罪人のザイベルトを王都に突き出さず、子爵メルケルの死を落馬の事故として王都には報告することで事実を隠蔽してザイベルトを逃がした。
貴族殺しの重罪人の妻フリーデも王都へザイベルトが突き出されていれば、一緒に処刑されていたはずであった。それをベルツ伯爵から救われた。

「俺が犯した貴族殺しの大罪をベルツ伯爵が隠したことが、もし宮廷議会の官僚たちに知られたら、ベルツ伯爵自身も処罰されてしまう。俺は、妻の命を救われた恩を返さなければならない」

「なるほど、ベルツ伯爵も、バルテット伯爵と建白書に連名で署名して活動していた。このままでは、王都の名門貴族による宮廷に任せていれば、いずれランベール王に命や領土を奪われかねないと考えたのだろう。モルガン男爵が暗殺されたら、宮廷議会に伯爵や伯爵家の血縁の中流貴族たちが招致されると予想してのことだろう。だが、モルガン男爵が暗殺されたあと、何が起きるか私も予想してみたが、ザイベルト、君はどう思う?」

「わかりません。俺は、妻のフリーデと生きていられさえすればいい。それだけを、今は考えているんです」

モルガン男爵が暗殺されたあと、暗殺したザイベルトを捕らえる。もしくは、ザイベルトではない誰かが捕らえられる。
捕らえられた罪人から供述を取り、伯爵の誰か、リヒター伯爵あたりから刺客は命じられたことに供述を仕立て上げて、ランベール王は伯爵から命と爵位や領土を奪うと、モンテサントは言った。

「モルガン男爵は見殺しにされるということですか?」

子爵リーフェンシュタールに、モンテサントはうなずいた。

「ザイベルト、君がモルガン男爵を暗殺することで、伯爵たちの誰かが命を奪われる。領主の後任に王都から人が赴任してくるか、女伯爵シャンリーに委任するかはわからないが、ベルツ伯爵の予想通りにはならないと私は思う。それでも、君は刺客としてモルガン男爵を誅殺するつもりか?」

「俺は、それでもやらなければ、妻をベルツ伯爵に捕らえられている。モルガン男爵を殺せば、ベルツ伯爵は妻を返し、地主の地位を捨て出奔することを許すと約束した」

しかたなくモンテサントは、ザイベルトに妥協案を提案した。
すぐに王都のモルガン男爵の邸宅へ襲撃には向かわず、モンテサントの身辺警護をしてモルガン男爵の暗殺の機会を待ってはどうかとザイベルトに言った。
パルタの都の執政官はベルマー男爵、つまりモルガン男爵の忠実な下僕であることを、ザイベルトに教えた。

「モルガン男爵がパルタの都を訪れ、ベルマー男爵と密会する時を狙い討つ。それが成功してもしなくても、ベルツ伯爵領には戻らずに、すぐに王族の血縁であるリヒター伯爵領へ君は逃げるのだ。ベルツ伯爵領や他の伯爵たちは、君や君の妻君をかくまってはくれないだろう」

このまま、モンテサントが貴族階級の若い門弟たちやパルタの都に在住する中流貴族たちと、ターレン王国の情勢についての対話を続けていれば、パルタの都の執政官のベルマー男爵に目をつけられる可能性があると危惧されていた。
衛兵たちの親である中流貴族たちは、衛兵の息子たちに、そうした怪しい動きがあれば、モンテサントに事前に知らせるように言われていた。

「先生も、ザイベルトも、二人とも、リヒター伯爵領に来ればいいんじゃないですか。ここは王都に近すぎる」

カルヴィーノがそう言ったのだが、この二人はパルタの都を離れなかった。

子爵リーフェンシュタールは、領地に戻ると、ベルツ伯爵領の子爵シュレーゲルに、仲間に加わる誘いとザイベルトの妻のフリーデの無事を確認する内容の手紙を書いて、カルヴィーノに運ばせた。
この手紙を読んだ子爵シュルーゲルが出奔し、ザイベルトの妻フリーデを、カルヴィーノと一緒にバーデルの都から救い出し、リヒター伯爵領へやって来ることになる。

後日、モンテサントは衛兵から、王都から宮廷官僚が訪問している情報を聞き、訪問しているのがモルガン男爵とは知らなかったが、情勢についての宮廷官僚の意見を聞こうと、ベルマー男爵の官邸へザイベルトを引き連れて赴くことになっていた。

その当日の昼前に、パルタの都の門が開くと同時に北門と南門の2つの門から、騎士ガルドの軍勢が攻め込んだ。
南門からは騎士ガルドが、北門からはソフィアが、500人ずつに人数を分けて指揮を取っていた。
大門を守備する衛兵よりも、圧倒的に人数が多いガルドたちの軍勢は2つの大門をすぐに制圧して、昼間から大門を閉ざした。

モンテサントは執政官の官邸で、パルタの都の執政官ベルマー男爵と宮廷官僚の名門貴族があらわれるのを、ザイベルトと一緒に応接室で待っていた。

パルタの都が封鎖された。
ガルドとソフィアはそれぞれ100人に大門を守らせ、誰も逃がさないようにした。人を逃がせば、王都か伯爵領に情報が漏れ、王都側と伯爵領側のどちらからもパルタの都が包囲されかねない。

そのままパルタの都の中心である大井戸のある中央広場で、ガルドとソフィアは合流した。
この大井戸はパルタの都の住人たちにとって、貴重な水源となっている。
ここを100人に守らせ、娼館の主人マルセロに対応を頼んだ。住人に水を配給するのを止めたりはしなかった。

騎士ガルドは、衛兵たちの屯所を制圧するために600人を連れて向かった。
ソフィアは100人の兵士をあずかり、別行動を取った。ソフィアが制圧に向かったのは、執政官ベルマーが滞在している官邸であった。


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