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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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パルタ事変-1

騎士ガルドがパルタの都を占拠した時期に、ベルマー男爵は執政官として住人の女性たちから、かなり恨まれていた。

パルタの都の大半の住人は、中流貴族の家族たちだった。
例外は、伯爵領官邸に食客として滞在しているモンテサントやザイベルトのような人物たち、あとは王都から赴任してきた執政官ぐらいである。

パルタの都の中流貴族たちは、王都の名門貴族や伯爵たちのように官邸や自分の館ではなく家で暮らしている。使用人を雇うこともない。
家の使用権に対して毎月、パルタの都の執政官へ納税することが義務づけられており、納税することで立ち並ぶ家で暮らすことができる。これを怠ると家の使用権を奪われて、パルタの都から追い出されてしまう。

中流貴族たちは、伯爵のように爵位と領土を与えられていないが、小貴族と呼ばれている。王都の名門貴族は、男爵という爵位を親から襲爵する。中流貴族たちは、血筋をたどれば伯爵たちの傍流か、名門貴族の傍流である。
伯爵領における地主階級、伯爵と村人たちの間で村の長としての役割を行う者たちと似ている。
ターレン王国の身分制度は、異国から渡ってきた少数の支配者たちが、もともと住んでいた多数の原住民たちを身分制度によって管理するためのものであった。
小貴族と地主の違いは、地主階級の者はもともと住んでいた原住民と交わることで、血統の正統性が失われている者も多い。ザイベルトのように、貴族である伯爵の血統の者と交わるように保護され、村人たちとは交わらず、男爵の血統の末裔であることを語り継がれている者は、小貴族と呼ばれても本来は差し支えないのだが、すでに血統を維持するように保護されておらず、自分の先祖について何も語り継がれていない者がほとんどであるため、地主階級は、すでに小貴族とは呼ばれなくなっている。
小貴族たちは、村人たちと交わることなく、爵位を持つ貴族や小貴族の家庭の者と風習に従い婚姻してきた。

小貴族たちは王都に出向して宮廷以外の官職に従事したり、伯爵領で収穫期に上納される作物を計量して、パルタの都に運搬するなどの官職に従事している。任された役目に合わせて、パルタの都の家に家族を残し、規定の期間を任地へ赴任し官職の務めを遂行する。
地主たちは、任地から離れることなく、一緒に家族と暮らしているが、小貴族たちは任期の間は、パルタの都にいる家族と離れて暮らす。

夫は赴任しているが、妻だけがパルタの都の家で、パルタの都の仕事をしながら帰りを待っている家庭もある。
まだ幼い子供の世話をしながら赴任している夫の帰りを待っている若い母親だけの家庭もある。
父親は赴任しているが、母親と年頃の娘だけで暮らしている家庭もある。

こうしたパルタの都ならではの事情も関係して、モンテサントがパルタの都の伯爵領官邸に滞在し続けている。
モンテサントは、若者たちに知識を教えているだけでなく、ザイベルトのいた村で、旅人のアリーダとヘレーネが滞在して病や怪我の治療を行っていたように、モンテサントはターレン王国に残された魔法技術の調査や研究の知識を使い、パルタの都で困っている人たちの相談を受けて誠実に対応してきた。

ターレン王国には、ゼルキス王国や遠く離れた平原の国々では失われた法術が残されている。女領主となったシャンリーがランベール王に施した呪術以外にも、愛と豊穣の女神ラーナを信仰する神聖教団の布教が行き渡った地域では、禁呪として禁じられた法術が、ターレン王国には残されていた。
それは避妊や堕胎の法術であった。
モンテサントは女性たちから、避妊や堕胎の相談を受けて対応していたが、夫以外の誰と交わっているのかを、女性たちは絶対に口にしなかった。モンテサントは、女性たちにもそれぞれ思うところがあるのだろうと深く詮索はしなかった。
女性たちの悩みの原因が、まさかパルタの都の管理や治安維持を任されている執政官のベルマー男爵やモルガン男爵にあるとはモンテサントも考えなかった。

家の使用権の納税を1ヶ月分だけ免除する代わりに、夫には内緒で体だけの関係を持つことを要求される。
夫に条件の良い赴任先を回す代わりに、夫の留守中に体の関係を持つことを条件として提示される。
年頃の娘の縁談の話を取り持つ代わりに夫には内緒で、母娘で体の関係を要求される。
他にも見返りとして体の関係を求められるだけでなく、夫に知られたくなければと脅されたり、ずるずると泥沼にはまるように、ベルマー男爵に目をつけられた女性たちはひそかに体の関係を求められていた。
モンテサントに打ち明ければ、ベルマー男爵に直談判しかねないと女性たちは考えて、誰が相手なのかを口にすることはなかった。そして、ベルマー男爵のことを恨んでいた。

こうした裏事情を、パルタの都で剣術修行をした令嬢ソフィアは、モンテサントと親しく話す機会はあったが知らなかった。もしも知っていれば、モルガン男爵に体の関係を求められても孕んだりしないように、避妊の法術を施してもらっていただろう。
また、令嬢ソフィアがパルタの都にガルドと乗り込んだ時には、モンテサントがとっくにリヒター伯爵領へ帰っているものだと思い込んでいた。
モンテサントは女性たちが気がかりであったことや、伯爵領だけでなく王都の情報を知るにはパルタの都の方が伯爵領より都合が良かったので、滞在し続けていたのである。

モルガン男爵とベルマー男爵は、モンテサントとな面会の前日から官邸を抜け出していた。そのため、ガルドとソフィアが訓練した志願兵たちとパルタの都に乗り込んだ時、モンテサントは官邸で護衛のザイベルトと官邸で待たされていた。

令嬢ソフィアはガルドとは別行動で、執政官の官邸を制圧するために動いた。そこで、モンテサントと再会することになった。
執政官の官邸で働く中流貴族の職員たちと同じように、モンテサントを拘束しようとした兵士たちが、ひどく困惑しているところにソフィアがやって来た。


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