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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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思想家モンテサント-3


今の宮廷を変えることは難しい。ローマン王が崩御したあと、次の王が即位するときに、かつてニクラウス王が即位した時のように、伯爵を即位させられたら、伯爵領からの官僚を多く登用できる。それをモンテサントはバルテット伯爵に、教えたのである。

しかし、バルテット伯爵はモンテサントの考えならば、次の伯爵を誰にするか生前から宣言して周知徹底しておかなければ、たやすく乗っ取られると気づいて、ゾッとしたたのだった。
もしも、モンテサントを手放していなければ、ローマン王の生前に後継者に関する建白書を出しておくことに協力しただろう。モルガン男爵の予想しない時期から宮廷議会に意見を伝えておけば、ローマン王が暗殺されて急死した崩御後に、強引にランベール王を即位させることはできなかった。
また、パルタの都の管理官ベルマー男爵官邸からローマン王の生前であれば、建白書は妨害されることがなかった。むしろ、ベルマー男爵は、バルテット伯爵がローマン王に嫌われると考えて、建白書を喜んで宮廷へ出していたはずである。

パルタの都で、モンテサントは中流貴族のディオン男爵に、バルテット伯爵の建白書が妨害される可能性を考え、ローマン王が崩御することがあれば宮廷議会へ出して欲しいと、書状の中身について説明して渡しておいたが、ランベール王が即位し、ディオン男爵は急死した。

ランベール王が即位した時に、モンテサントは、伯爵たちが宮廷議会に招集されるとしたら、国が滅ぶかどうかの瀬戸際になってからだろうと、子爵リーフェンシュタールに話して聞かせた。

ランベール王が志願兵を募集し、平民階級のガルドを騎士の爵位を与えた時、モンテサントは、ターレン王国は戦を始める気だとすぐに理解した。

宮廷議会が、もしゼルキス王国への遠征軍を出すとすれば、バルテット伯爵か、リヒター伯爵のどちらかを将軍にして出征させることで、バルテット伯爵とリヒター伯爵の関係を切り離すと予想していた。しかし、ランベール王は、平民階級のガルドを騎士に叙任して、遠征軍を率いる将軍とした。

ターレン王国が戦を始めるには時期尚早だと、モンテサントは考えている。
ゼルキス王国は、魔法技術力の高い神聖教団と手を結んでいる。
ターレン王国は、国の政策として神聖教団との関係を絶ってきた。ターレン王国には国教というものがない。これが、ターレン王国の魔法技術力の進歩を妨げてきた。

(モルガン男爵は、王都の名門貴族。伯爵でさえ宮廷から排斥した人物。平民階級の人物に騎士の爵位を与える進言をすると考えられない)

「モンテサント先生、バルテット伯爵とオーギャストが捕らえられました!」

子爵リーフェンシュタールにとって、子爵オーギャストとその恋人であるシュゼットは親友である。
モンテサントにとっても、バルテット伯爵は、もともと仕えていた人物である。子息オーギャストは、モンテサントに悩みを打ち明けて弟子となっていた。
一瞬、子爵リーフェンシュタールからの報告に、モンテサントは呆然となった。
パルタの都には、ターレン王国の伯爵領の情報が集まってくる。

「バルテット伯爵は、王都トルネリカで捕らえられたのか?」
「それが、バーデルの都で、ランベール王によって捕らえられたそうです」

バルテット伯爵の投獄に続き、爵位と領地剥奪。そして、ランベール王が黒薔薇の貴婦人こと妻妾のシャンリーに伯爵の爵位を与え、バーデルの都の領主にすることがパルタの都へと通達された。

8人の伯爵のうちバルテット伯爵は、元宮廷議会の官僚だったこともあり、王族の血筋のリヒター伯爵以外の他の6人の伯爵たちをまとめていた。

ベルツ伯爵は、このバルテット伯爵の投獄から、今の宮廷を仕切っているモルガン男爵をなんとかしなければ、自分も爵位や領土を剥奪されかねないと危機感を強く抱いた。追放したザイベルトに、モルガン男爵の暗殺を命じた。

リヒター伯爵
シャンリー女伯爵
ベルツ伯爵
テスティーノ伯爵
ブラウエル伯爵
ストラウク伯爵
ロンダール伯爵
フェルベーク伯爵

伯爵の爵位は、何らかの理由で後継者がなく血筋が途絶えた場合、王から伯爵の爵位を与えられた者が後継者となり、その領地もまた引き継がれる。
ターレン王国の法では、確かにそう定められている。また、反乱を起こした場合も爵位と領地を剥奪されるとある。
しかし、それは他の貴族、たとえば王都の名門貴族などが後継者となるものと思われてきた。または、王族などから選ばれるものと考えられてきた。

伯爵は、地主の子を妻妾とすることが許されている。また、他の伯爵の血縁者と婚約して、友好関係を維持するなど工夫しながら伯爵の爵位が途絶えないように維持してきた。

「リーフェンシュタール、国王が平民階級の女性を妻妾とし、さらに、伯爵の爵位を与えることを諌めることができる者がもう今の宮廷には誰もいない。これでは、貴族が平民階級よりも上の階級の特別な存在ではないと、ランベール王自身が示してしまったようなものだ。志願兵の募集、伯爵領の剥奪。リーフェンシュタール、国王と宮廷議会のモルガン男爵は、君の父上リヒター伯爵が挙兵してターレン王国の王とならないように、かなり警戒している」

学者モンテサントは、弟子のリーフェンシュタールにそう言った。
大規模に志願兵を集めた後、挙兵のための兵力をすぐに集めるのは難しい。どんなにリヒター伯爵が、人望のある人物だとしても。

「伯爵領からの挙兵を防ぐため、志願兵の募集をした結果、獣人族の行商人たちの商隊はターレン王国から逃げた。これはターレン王国に、他国からの知識や品物が入ってくる機会が、さらに減ったということだ」

学者モンテサントの心痛に、追い討ちをかけたのが、奴隷取引に関する規制緩和が発布されたことであった。
モンテサントは身分のちがいはあってもいい、平等はない、と教えていた。


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