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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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思想家モンテサント-2

騎士ガルドと、モルガン男爵の養女であり、王佐の能吏ヴィンデル男爵の血縁でもあるソフィアが遠征軍の残留兵の訓練を終えた頃、モルガン男爵がパルタの都のベルマー男爵の官邸を訪れていた。
モルガン男爵は、自ら帳簿を確認したあと、ベルマー男爵に提案した。

「ベルマー男爵、貴殿の後任を、私の娘に任せようと考えているのだが、パルタの都の管理を娘に引き継いではもらえないだろうか?」
「慎んでお引き受け致します」

モルガン男爵としては、離れたパルタの都にベルマー男爵を置いておくよりも、宮廷に置いておくほうが始末しやすい。また、ソフィアを使ってパルタの都を掌握しておけば、伯爵領からの動きを王都にいながら最速で知ることができる。
ベルマー男爵は、念願の宮廷への出仕と名門貴族の地位を得るまであと一歩だと考えて、モルガン男爵を疑う判断力を失っていた。

パルタの都には、宮廷から出向して官邸に駐在する管理官が置かれている。
さらに、8人の伯爵領官邸の地区や王都に邸宅を持つことが許されていない中流貴族の邸宅の地区がある。
現在は王と王都の名門貴族によって実権か握られており、伯爵たちや、中流貴族たちは王都トルネリカの王や宮廷議会に政策を進言するには、直接王へ謁見したり、宮廷へ出仕は許されず、パルタの都の宮廷官邸を通じて行われなければならなかった。宮廷からの公布も、パルタの都の宮廷官邸から、中流貴族たちは知らされ、伯爵領官邸を通じて領主たちに知らされる。

王都トルネリカではなく、パルタの都に官邸が置かれて、伯爵領から人を滞在させる制度になっている理由は、ターレン王国の歴史に関わっている。
伯爵領では「宮廷は伯爵領からパルタの都へ定期的に収穫物を上納させるだけでなく官邸を維持させているのは、伯爵たちの財力を削って力を弱めておくつもりなのだ」とひそひそと悪態かつかれているが、これは正確ではない。
かつて、ターレン王国は建国したが、各地に王に従わない支配者たちがおり、平定のための戦が各地で行われた。
平定の戦が終わり、8人の伯爵に地方を分割して領主とした。納税分の4割の収穫物を上納すれば、残りは伯爵の資産とすることを許された7つの伯爵領、戦の時の本拠地で、城塞都市であったバーデルの都を有する伯爵領は、収穫物でなく上納金を納めることになった。
それまでは、命がけでターレン王に従わない者たちを討伐することで忠義を示してきた。平定後は戦がなくなり、伯爵たちは、忠義を示すために、王都に赴き王の廷臣として参勤して国政を行うようになった。しかし、そうなると王や宰相が地方の領地の政務まで指示を出すことになり負担が大きい。そこで、王は8人の伯爵たちに伯爵領の自治権を与えた。
パルタの都に伯爵たちが私財を投じ官邸を置く制度は、王が必要な時には伯爵たちを呼んでもらえるようにするために、伯爵たちが進言して制定されたものである。それが、現在のランベール王の時代まで続いているのだった。

王の直轄領の罪人が、パルタの都の伯爵領官邸に逃げ込んだ場合、パルタの都の衛兵は罪人を官邸に踏み込んで捕らえることができなかった。
伯爵領では伯爵に自治権がある。伯爵領官邸の建物と敷地内は、伯爵領とされ、罪人を裁くのは、それぞれの伯爵たちに権限があった。逆に伯爵領の罪人が宮廷官邸に逃げ込んだ場合も、裁くのは宮廷議会であり手が出せない。
例外は国王のみで、国王自身、または王命であれば、伯爵領でも捕縛することができる。バルテット伯爵の捕縛は、ランベール王自身がバーデルの都まで踏み込んで行われた。

罪人のザイベルトは、パルタの都でリヒター伯爵領官邸に潜伏していた。モルガン男爵を暗殺するために、リヒター伯爵官邸を頼るようにベルツ伯爵から命じられている。
リヒター伯爵とベルツ伯爵にはつながりがある。ベルツ伯爵が画策した暗殺計画に、リヒター伯爵は協力していた。

「ゼルキス王国との戦が繰り返せば、このままでは、ターレン王国は滅ぼされてしまう。だから今の実権を握っている王都の名門の宮廷から、伯爵領に実権を取り戻す必要がある」

リヒター伯爵は、ローマン王崩御後、すぐに新王候補としてバルテット伯爵に推薦された。
そのリヒター伯爵の子爵リーフェンシュタールは、パルタの都で学者モンテサントの影響を強く受けていた。

学者モンテサントは、この国難に対して我々はどうあるべきかと、話を聞きに来た子爵リーフェンシュタールに、まず質問した。

モンテサントは、バルテット伯爵領の官使だった。伯爵領に戻ったバルテット伯爵に、ゼルキス王国に行って見聞を広めておきたいと、外交官の使節団に同行を願い出ている。
伯爵領の各地で起きる領土不足の問題をモンテサントは、すでに見抜いていた。いずれゼルキス王国とは、領土をめぐって戦になる。今のうちに敵情視察しておきたいと願い出たのである。

モンテサントは、獣人族の行商人から、ゼルキス王国の王都には魔法の転送の仕掛けがある、魔石を資源として便利な道具を人々は使っている、などの噂を聞いていた。自国との魔法技術力の差を感じていた。
モンテサントは、魔法技術力による戦力差のあるゼルキス王国と戦となった時、どのようにターレン王国を守ればいいのか、途方に暮れた。

この国難に対し、対応できる優れた人材を育成する必要かあると、モンテサントはバルテット伯爵に主張した。

伯爵派閥の宮廷官僚と、名門出身の貴族官僚の派閥争いで、我々が実権を握るにためにはどうするべきか?
バルテット伯爵に問われたモンテサントは、こう答えたと伝えられている。

「それは王が決めることでございます。だから、我々が次に誰を王として選ぶかということがとても大切なのです」
「それが、そなたの答えか?」

6年間の謹慎処分のあと、モンテサントはリヒター伯爵領へ招かれた。
バルテット伯爵は、モンテサントが出奔する時に引き止めなかった。


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