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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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賢者マキシミリアン-4

そのエルフ族の少女にかけられた隷属の呪いを解呪したマキシミリアンが、少女が家に帰りたいと言うので、エルフ族の隠れ里へ少女を連れてきた。

「なぜ、辱しめられた時に死ななかったのですか?」

セレスティーヌは、少女に言い放ったことがある。少女は追放、少女を辱しめた人間族の奴隷商人がいる街をひとつ、エルフ族の力を見せつけるために滅ぼしてしまおうと計画したこともあった。

エルフ族の少女を奴隷にすれば、報復のために、エルフ族が街を襲撃する。
それこそが狙いで、エルフ族と戦をしてエルフ族の領域へ攻め込み、さらに多くの女性たちを奴隷にするという計画が立てられていたのである。
隷属の呪いがあれば、エルフ族を服従させられると信じて疑わなかった。

しかし、マキシミリアンがエルフ族に、解呪の術を教える、そのかわりに、少女の追放はなし、街の襲撃ではなく、奴隷商人だけを捕らえて引き渡すという条件で、エルフ族の女王と交渉した。
ただし約束の期限の日までに奴隷商人を引き渡すことができなければ、今後は、エルフ族は人間族と敵対すると女王から告げられた。
マキシミリアンと、女王から協力者として任命されたセレスティーヌが、奴隷商人を捕らえるために旅に出た。

そうした過去のなれそめも、セレスティーヌは、錫杖に語りかけてリーナに聞かせた。

リーナは女僧侶として、村人たちが連れ去られたりしなくなるのなら、自分の命が犠牲になるぐらいと思っていても、やはり、こわかった。

それ以上につらいことがある。
自分の宿っている錫杖を破壊してもらいたい。亡霊になったら、聖騎士ミレイユの剣で消滅させてもらいたい。
そんな考えが浮かぶたびに、自分のことしか考えられない最低の人間だと感じ、リーナはやりきれなかった。

(私、自分がこわいんです。でも嫌なんです、助けてほしいてす)

女僧侶としての自分は純潔を失うことで捨てなければならなくなる。
リーナが錫杖として、魔物のそばにいても、傭兵ガルドの行ったような残虐な行為が再び行われたら、異界の門は開かれる。女性たちは連れ去られて、淫獄で苛まれる。それを錫杖の中で見続けさせられるのは嫌だった。

「それでいいと、私は思います」

セレスティーヌは、泣いている幼児を抱きしめるように、錫杖を抱きしめた。

「リーナちゃん、私の話をたくさん聞いてくれてありがとう。今は眠って、休んで下さい」

錫杖を抱えて、セレスティーヌが寝室から戻ってきた。

「リーナちゃんは眠ってるのかな?」

セレスティーヌがうなずいて、マキシミリアンに錫杖を手渡した。

「傭兵団が村を焼き討ちにした。これって、マキシミリアンはどう思う?」
「ゼルキス王国が喧嘩を売られた、って感じだね。領土争いの火種としては充分な口実だろう。
まさか、ミレイユちゃんとリーナちゃんの女の子がふたりだけしか、ゼルキス王国からの動きがないとは、ターレン王国も予想外だったかもしれないが」

実際に戦闘をする兵士というのは、その国の貴族ではない。平民である。

傭兵団を討伐するためにゼルキス王国から出兵していたすれば、ターレン王国はゼルキス王国が侵略のために出兵したと自国の民衆を煽動できる。

自分たちに正義があると民衆を煽動できる大義名分がなければ、貴族たちは兵を集められない。

「ゼルキス王国とターレン王国のどちらにも、ニアキス丘陵とその周辺は、もともとは自国の領土だと主張する貴族はいるだろう。レアンドロ王が、ゼルキス王国の貴族には説明できる。ターレン王国には、過去の歴史を知る王はいない。ダンジョンができてから、ターレン王国は建国したからね。戦が始まるとすれば、ターレン王国から出兵するだろう。おそらく、傭兵団の襲撃は、戦を始めるための準備だろう」

マキシミリアンは、大陸各地で領土争いが起きているのを見てきた。
エルフ族でさえも、人間族の領土争いに巻き込まれそうになったことがある。

「大陸の中心には、エルフ族の王国が広範囲を世界樹の樹海を支配して、多くの王国の均衡を保っているが、残念ながら均衡を保つ王国はここにはない」

「マキシミリアンはどうするつもり?」

セレスティーヌは、ゼルキス王国にマキシミリアンが戻って、戦に参戦する気があるのか確認した。
マキシミリアンは、それは絶対にしないと言った。
マキシミリアンが参戦して戦果を上げるほど、アレンドロ王はマキシミリアンと比較され、王が民を統治するために必要な威厳が下がる。
しかし、アレンドロ王の性格では、戦が終わったあとで、マキシミリアンを追放したり、殺害できない。

「僕はリーナちゃんを復活させる。ただし、気がかりがひとつだけあるんだ」

妖魔ノクティスの神具が剣で、具現化して肉体を得れば竜となる。
ミレイユが嫁いで、おとなしく漆黒の魔剣となっていなければ、やがて巨大な黒竜となっていたと思われる。

「ねぇ、セレスティーヌ。この蛇神が欲しがるリーナちゃんの錫杖が、異界で具現化すると何になると思う?」

セレスティーヌは、わからないと夫の賢者に答えた。

「蛇神を信仰していた神官が持っていた祭祀書、うちの倉庫にもあるけど、セレスティーヌ、読んでみる?」

マキシミリアンから手渡された書物を読んで、セレスティーヌが顔を赤らめた。
交わりの愉悦の果てに不老不死を得るという儀式が詳しく記されてある。

「不老不死の霊薬を授かりて、蛇神のしもべとなる。最後に書かれてある詩の意味が、やっとわかった」

不老不死の秘儀。それは、最後には蛇のような触手に成り果てる儀式であった。

「蛇神の異界へ取り込まれたら、蛇神が滅びる日まで、しもべとして不死不死の蛇になる。蛇神のお嫁さんを取り込んでいるこの錫杖が、蛇神の異界に持ち去られて具現化するとしたら、半人半蛇の女王になるのかも」


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