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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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賢者マキシミリアン-3


「リーナちゃん、それは私が説明してあげます。マキシミリアン、絶対に盗み聞きなんてしないで下さいね」

セレスティーヌが錫杖をつかむと、バタンと強く扉を閉めて、どこかの部屋に行ってしまった。

セレスティーヌは、寝室のベッドに腰を下ろして、錫杖を抱えて話しかけた。

「ねぇ、リーナちゃん、ここにはマキシミリアンがいないから聞くけど、恥ずかしがらないで教えて欲しいの」

好きな男性はいるのか。
初体験はまだなのか。

リーナは、ハンターのレナードのことが気になっているけれど、僧侶なので一生処女で過ごさなければならないことを、セレスティーヌに伝えた。

「それで、蛇神がリーナちゃんに夢中になってしまったのね」

セレスティーヌは、マキシミリアンが蛇神から、リーナを横取りするつもりなのだと説明した。

「純潔の乙女でなくなれば、蛇神は、リーナちゃんのことをあきらめる。でも、リーナちゃんの子孫の女の子を狙って来る可能性がある。だから、蛇神の祟りをずっと忘れないように、リーナちゃんの一族は、蛇神の錫杖を、女の子が生まれると受け継いできた」

(私の体は、むこうで奪われてしまいました。ひどいことをされているかもしれません)

「リーナちゃん、交わるってことは、体だけじゃなくて、心も相手と交わるってことなの。マキシミリアンが、ダンジョンから錫杖を出したら、蛇神のしもべが錫杖を持ち去ろうとするって言っていたでしょう。蛇神は、リーナちゃんの心と交わりたいってことなのね」

(心と交わる……ですか?)

「好きな人のことが、世界で一番大切に思うようになる。だから、その人との子供ができて産むと、半分は自分で、半分は好きな人なんだと思えて、やっぱり大切に思えるの。女神様が一番じゃいられなくなる人も多いから、交わりを禁止にしてるんだと思う」

(錫杖になった私をどうするつもりなんでしょう?)

「ずっと肌身離さず持っているとか。たまに、舐めてみたりして」

(それは嫌ですね)

「マキシミリアンは、錫杖から、どういう方法なのかはわからないけど、リーナちゃんを、別の物に移しかえるつもり。たぶん、女の子の体みたいなものを作って用意するんじゃないかしら。それで、マキシミリアンは、リーナちゃんに手を出すつもりなのよ。処女のままだと狙われるから、とか言いそうな気がする」

(えええっ?! マキシミリアンさんには、奥さんも子供もいるのに)

「あの人はすごい人だけど、そこだけが欠点なの。困っている女の人をほっとけないお人好しなんだけど。でね、命がけでも助けようとするの。それで、感謝したり、感動した女の人に好きって言われると、断れなくて手を出すから、困るのよ。相手の女の人は本気でマキシミリアンのことが好きだから」

(それは、困っちゃいますよね)

「でね、今回はリーナちゃんがすごく困ってるから、錫杖をダンジョンで拾ってきて、私に気まずいから、倉庫にこっそり隠してたの。でも、扉の向こうで、誰かと話していたから、おかしいと思って昨日の夜、白状させたの」

扉の向こうを、魔法で盗み聴きしていた用心深く、嫉妬深い妻のセレスティーヌなのであった。

「ハンターのレナードくんは、夫の大親友の息子さん。前に会ったときは、お姉さんの後ろに恥ずかしがって隠れてた、かわいい男の子だったけど」

奴隷商人シャンリーのことを調べるために、ターレン王国にレナードは残り、リーナは傭兵ガルドのことや亡霊だらけの廃墟の村のことを聖騎士ミレイユに伝えて、リーナは従者として聖騎士ミレイユの傭兵ガルド討伐に同行中に、異界に連れ去られ、錫杖になってしまったことをセレスティーヌに説明した。

「村を焼き討ちにしたら、蛇神のしもべを召喚されるとは、きっとその傭兵ガルドは考えもしなかったでしょうね」

かつて、世界樹に守護されていたエルフの領域以外は、大陸は魔物が跳梁跋扈するところだった。
魔物が獣人族や人間族を餌にしているだけでなく、エルフ族の領域を侵犯する前に、魔物を滅ぼしていった。
しかし、生物の思念に強く結びついていた魔物だけは、異界の門の向こう側へ滅びることなく残った。
魔物を全滅させるということは、すべての生物、もちろん、エルフ族もふくめて死滅させることだと悟ったので、エルフ族は、生き残った種族たちに協力を求められた時、エルフ族にも被害が及ぶと判断した時だけ協力し、世界樹の維持管理に徹してきた。

「人間族は、私たちエルフ族とは少し違う信仰を持つようになったけれど、同じ魔法の知識を持っていたり、言語も似たものを使っている。獣人族は魔法は使わないけれど、言葉や道具は似ている。だから、大昔は、それぞれの種族とエルフ族は交流があったのでしょう」

セレスティーヌは、ほとんど知られることのない大陸の歴史について、子供の頃のミレイユに母親として教えたように、錫杖の中のリーナに語りかけた。

「信仰に殉ずる生き方を、私は否定は致しません。異界の魔物のそばで、錫杖の中で女神に祈りを捧げながら、いつになるかわからないすべての生物が死滅する日まで、魔物と共に暮らすのも、それは自由です。
信仰は、気持ちをわかり合えたり、他人に思いやりを持って接したりするコツを教えてくれるそうです。
何も考えず、自分が犠牲になればいいと行動するだけなら、それは利用されている道具で、生きていると言えない。
自分が幸せでなくて、他人を幸せになんかできない。
そんなことをマキシミリアンは、私やミレイユに話してくれたことがあります」

マキシミリアンと出会う前のセレスティーヌは、エルフ族の女王となる者として自分の自由など、どうでもいい小さなことだと思っていた。
エルフ族の掟に従えない者は許せず、敵のようにさえ感じた。
エルフ族の少女が、奴隷商人に辱しめられ、奴隷として売られたことかある。


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