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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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実家での語らい-1

 ○子姉から、実家で一人で暮らしている母が久しぶりに会いたがっていると聞いて気になっていたが、集まれるときには集まっておこうということで話がまとまり、3人で実家を訪ねることになった。

 ○子姉は実家から車で30分ほどの町に住んでいるから、たびたび母の様子は見に行っているとのことだったが、△子姉やわたしはそれぞれかなり間が空いてしまった。姉妹3人が実家で揃うのはいつ以来だったか…。記憶をたどらないとすぐには思い出せない。

 8月のある日、新幹線をおりるとホームの前方で同じ新幹線から降りてきた△子姉を見つける。

 「相変わらず若々しいね、△子ねえちゃん」

 色白な○子姉よりも浅黒く見えるが、綺麗に並んだ白い歯が映える。

 「あんたも変わらんな。元気そうやね」

 普段は大都会に暮らして標準語を喋っているはずの二人だが、顔を合わせてみれば若いころの言葉に戻る。

 在来線に乗り換えて小一時間ほどのところの駅に着く。

 ○子姉の娘の○○が迎えに来てくれるとの話で駅前のロータリーに立っていると、Tシャツにジーンズの男が手を振って近づいてくる。

 「どうも、お久しぶりです」
 「えー、○○ちゃんの旦那さん?」

 ○○の夫…つまりは○子姉の婿が迎えに来てくれた。

 「すいません、ウチのは仕事に行ってまして、かわりに来ました」
 
 ○子姉は家で待っているという。
 車に乗り込みこの町に娘夫婦と暮らしている○子の家に向かう。

 ○子の婿は、快活な口調で、○子姉が若い夫婦のことをいろいろ気遣ってくれていることなどを話している。

 姉が住む家に着き、玄関先には仕度を整えた○子姉が立っている。
 よく来てくれたとでも言うように深々と頭を下げてお辞儀する。
 車の中のわたしたちもついお辞儀を返す。

 「○子ねえちゃん、お婿さんに肩揉んでもらってるって本当?」
 「○子ねえちゃん、いいお婿さんもろうたよねえ。すぐにおばあちゃんになってしまいそうやね」

 わたしは助手席に座り、二人の姉は後部座席で景色を眺めている。
 すぐに市街地が途切れ、田園風景が広がる。
 青い空に夏雲が浮かんでいる。
 冷房が嫌いな五十路の女3人を乗せた車は、窓を開けて風を入れながら進んでいく。
 高校に通うバスの中から見ていた遠くの山並みは昔と変わらない。

 「わー、あの自販機小屋、まだ立ってるんやね」

 高校時代、同級生の真由美が道路拡張を契機にモーテルを建てるなどと言っていたが、結局モーテルが建つことはなく、いかがわしい雑誌などを売る自販機を何台か置いた小屋が建っただけだった。

 二人目の子供が産まれて両親や○子姉に見せに行ったとき、軽トラを運転している真由美に会った。結局、真由美は、自販機小屋の管理を任されており、商品の補充のためにしばしば小屋に行っているとのことだった。

 真由美は、今でも自販機小屋の管理を続けているのだろうか。人目につきたくないからと夜に行きたいものの、暗いところでおかしな男と鉢合わせするのも怖いとか、いろいろ言っていた。どこか満更でもないような感じではあったが…。

 小屋が立っているということは今でもそれなりに収入があるということなのだろうか。

 「でも、ウチへの入り口は通り過ぎちゃったってことなんじゃない?」
 「あ、ほんとだ」
 「大丈夫ですよ、この先にいい道ができて、そっちの方が車も飛ばせるので。あ、でも、昔を懐かしむんだったら戻りましょうか?」

 道路脇の空き地で向きを変えて、実家への入り口に戻る。
 もう一度自販機小屋の前を通ると、入口にはベニヤ板が打ち付けてあった。
 真由美が商品補充から解放されたのだろうと思うと何だかおかしかった。

 「ほら、曲がり角はあそこだよ、あそこ」
 「よろずやもバス停も何にもなくなっちゃったんだね。通り過ぎるのも仕方ないわ」

 バスは数年前に廃止されたと○子姉が教えてくれた。

 「よろずやでかき氷食べたかったんだけどなあ」
 「あのおばさん、まだ生きてるんかなあ」
 「いつもカリカリしてて、あんまり長生きする感じでもなかったよなあ」
 
 わたしはよろずやのおばあちゃんを思い出している。

 「○子ねえちゃん、自分にそっくりな人に会ったことある?」
 「なに? 藪から棒に」
 「あたしはあるよ」と△子姉。
 「えっ、どこで?」

 有名な美人女優の名前を口にした△子姉にみなが大声で笑う。

 「あんたはあるんか?」

 ○子姉がわたしに訊いてくる。

 「似ている人はいたけど、そっくり、ってほどではなかったわ」
 「ふぅん。ばったり会ったんか?」
 「ううん、テレビかなんかに出てた人。何って言ったかなぁ、まあ、どっかのおかあさんやわ…」

 車は広い道路から実家のある集落に向かう道を進んでいく。

 「相変わらずなんにもないのねえ」と△子姉。
 「なにか耕作してる風でもないねえ」とわたし。
 「農機具小屋も見当たらないねえ」
 「あはは。あんなんわたしが子供の頃こ台風で潰れてしまったやないの」
 「そうそう。『兵どもが夢のあと』やったねえ」
 (ちょっと、△子姉…、お婿さんの前だよ…)

 「バカ」という返事を期待しないでもなかったが、○子姉は黙って景色を眺めている。

 結局、○子姉は「よろずやのボン」とは違う男と結婚した。
 △子姉も口が滑ったことを悟ったらしく静かにしている。


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