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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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実家での語らい-2

 「あ、八幡様が見えてきた」
 「あるなあ。あん鳥居は前のまんまやなぁ」
 「あんなしょぼい鳥居やったかねえ」
 「しょぼいなんて言うたら罰が当たるわよ」

 「創建して4百年だそうですよ」
 「あら、そうなの。よく知ってるのねえ」

 (神社の狛犬たちも、4百年もの間、男女あるいは同性同志が「アオカン」しているのを見守っていたのだろうか…。京子とも久しぶりに逢ってみたい…)

 農機具小屋の跡のところでは黙って景色を見ていた○子姉が口を開く。

 「百合子先生ね、中学校の校長先生務めてこの前退職されたんよ」
 「えーっ!」

 △子姉とわたしが声をそろえて驚く。

 美人なのに男運に恵まれず、淫乱女のような噂までたてられていた百合子は、早々に学校から去って、不幸を極めているものと勝手に想像していたのに、男女平等の世の中になったとは言え、まさか、校長まで上り詰めたとは正直思わなかった。

 ○子姉は(二人が驚くのも無理はないわね)とでも言うように笑っている。

 ○子姉の婿が一緒でなかったら、△子姉はアケスケな言葉を口にしたのではないかと思うとなんだか可笑しくなる。

 「ボクも創建4百年っていうのは百合子先生に教わりました」
 「え! あんた、百合子センセに教わったん?」
 「はい。八幡さんに何かあるんですか、寄りましょうか?」
 「いい、いい!」

 婿の問いかけにと△子姉とわたしが声をそろえて答える。

 「寄ってお参りしてったらええやないの。ご利益あるんじゃないの?」

 ○子姉は可笑しそうにしている。

 ほどなく実家に到着する。自転車に乗ってバス停まで走っていた距離はこんなものだっただろうか。

 「ただいまー、来たよ」

 古希もとうに過ぎた母が家の中から出てくる。父が亡くなってもう十数年になるだろうか。以来、ひとりで暮らしている。

 「元気にしてた?」
 「元気そうやね」
 「よかった、よかった」

 「あんたらも元気そうで何よりや」

 姉妹3人で仏間で仏壇の父に手を合わせる。

 「おかあちゃん、いまもここで寝てるん?」
 「ああ、そうやね」
 「ひとりで寂しない?」
 「別にどうってことないわ。みんなおらっしゃるでな」

 仏間には白黒の何枚かの写真が並んでいて、そのいちばん端に1枚だけカラーの父の写真が掲げてある。

 「じゃあ、ひとまず僕はこれで。なんかあったら電話ください」

 婿が運転席から言い残して帰っていく。

 「ありがとねー」

 姉妹で並んで婿を見送る。

 ○子55歳、△子52歳、わたし50歳。

 この部屋で父と母が毎晩のようにまぐわっていたのももう数十年前のこと。あの頃の両親の年齢をとっくに追い越した自分たちがたどってきた道をそれぞれ思い起こしている。


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