権利-11
『事件解決の糸口を手にしておいて……ククッ…クククッ!なあ、ホントに風花ちゃんは能無しの間抜けだよなあ?あのボイスレコーダーを持って、いったん帰ってりゃあ今頃は……クククッ!』
「ッ〜〜〜〜!!!」
毎日のように〈事件〉が起き、それはニュースとして報道される。
殆どの人は自分とは無関係だと思って其れを聞いている。
それが身近な交通事故であってもだ。
風花は後悔していた。
一連の女性失踪事件に首を突っ込んでいながら、自分がその事件の当事者になる危険性を考えてはいなかった。
迂闊……軽率……無警戒……。
ミイラ取りがミイラになったこの事件≠ェ報道されたなら、間違いなく風花は叩かれるだろう。
この男の今の台詞と変わらぬ、罵詈雑言の雨に打たれるはずだ……。
『クククッ!俺の好きなマンガの台詞を借りれば『謎は深まった』『この事件は迷宮入りだ』ってヤツかなあ?ホント俺らに《捕まらなけりゃ》なあ〜……クックック!』
彩花は沈黙したまま。
男共のターゲットは、風花しかいない。
今にも触れてきそうな無数の指は触手のように蠢き、曝け出されっぱなしの男根は涎を滴らせて怒張をみせている。
四方八方からカメラが風花を捉え、突き刺さる視線の矢は全身を貫いている。
(……助けて…ッッッ)
もう助からない……。
奇跡が起こらなければ、ここには救世主は現れてはくれない。
分かっていても風花は(助けて)と心の中で何度も叫ぶ。
願う《権利》だけは、男共にも奪えないのだから。