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銀彩(ぎんだみ)
【SM 官能小説】

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銀彩(ぎんだみ)-3

鬱蒼とした密林が夕陽を浴びはじめたとき、誰もいないと思っていたこんな時間に人の気配を感じるとは思わなかった。
庭園の中に佇む男は全裸だった。おそらく二十歳前後の若い青年だった。黒い髪をした鳶色の眼をした彼は、初々しい顔にあどけなさを残し、濃厚な甘さを匂わせる蜜のような色をした艶やかな肌は、このあたりの男たちと違ってとても美しく清潔だった。
樹木の根元に座り込み、すらりとした美しい脚を縮めた彼は、ほっそりとした顔の額をまるで樹木の体温を嗅ぎ取るように幹に寄せ、まるで眼をあけながら夢を見ているような潤んだ瞳をしていた。
何かを語ろうとしてわけでもなく、怯えているわけでもなく、もちろん、わたしに襲いかかろうとしてわけでもない。彼は唇を動かすことができるのに言葉を語ることができなかった。何かを伝えようとしながら咽喉の奥から搾り出される音は言葉にはならなかった。
わたしは彼の美しく可憐な顔をとても気に入った。戸惑いや甘酸っぱさ、それにちょっとすねたような表情、そして彼の頬にあてたわたしの指には、露で湿った彼の体温が微かに感じとられた。
わたしは彼がこの密林の中で生まれ、この場所で育ったのだと思っている。なぜなら彼の艶やかな肌理の細かい肌は、まるで太陽の光をたっぷりと吸い込んだ果実をナイフでさくっと切り裂いたような面のように濃密で、甘く、そして純潔と無垢を湛えていたのだから。

彼には名前が必要だった。もしかしたら名前はあるのかもしれない、でも彼は自分の名前を言うことはできない。わたしは彼に、フランス語で銀色を示す《アルジョンテ》という名前をつけ、銀色のイヤリングと首輪、そしてあのときの修道院で買った銀細工の貞操帯をつけた。彼はとても美しい銀色の男になった。
ペニスは美しく細工された貞操帯の中で静かに息を潜めていた。男性器を模った美しい輪郭を描き、特殊な合金には細かい穴が細工してある貞操帯は、美しい彼のペニスを着飾るように優雅に包み込んでいる。もちろん勃起も射精もできず、特殊な堅い金属は決して砕けることがないし、砕くこともできなかった。細工された金属の輪は彼の性器の根元を絞るように締めつけ、鍵がかけられている。
何よりもその貞操帯は光を含むと銀色に変幻する。貞操帯に覆われた彼のペニスは、きらきらと銀色に輝き始め、真珠色に変化し、少しずつ熟成し、彼の肉体と同化していく。それは彼のペニスだけでなく彼の心にやどる欲望を熟成させる。肉体はやがてつやつやと輝き始め、彼の顔や身体は変幻し、肌艶は色あいを濃くしていく。
その色は、わたしが愛用するナイフと同じ色だった。ナイフはわたしが欲情するためのものだった。わたしは銀色のナイフの、鋭く尖った刃先が孕んだ光に自慰的に酩酊した。ナイフを手にして自らの淫唇の溝をゆるやかになぞることで疼き、欲情をいだいた。ナイフの銀色の光と冷たさがわたしを犯し、刃先から零れた光は肉襞の中に吸い込まれる。渇いた肉襞の空洞に光を含んだ滲み出る蜜の滴り………。

 生あたたかい風が頬をなでる。水平線は密林に覆われ、湖に映える朝の太陽は澄みきった讃美歌の旋律を奏でるように燦々と降りそそいでくる。樹木の葉がたっぷりと雨露を含み、今年はつかのまの雨季が終わり、夏が訪れていた。
目の前に拡がる湖の水面は、わたしの遠い記憶をどこかに漂わせるようにゆらいでいた。わたしは色をもたない男のそそり立ったものに嫌悪感をいだいている。その理由はわたしの遠い記憶の中に刻まれていた。


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