第二十二章 地獄の風景-2
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『もう、大丈夫です王妃様』
ディオンは喜びに表情を輝かせてマチルダ王妃を縛っている縄を解いていった。
幼い頃から憧れ、崇拝してきたのだ。
勿論、ルナから王妃とアズート司教との関係は知らされてはいなかった。
無理やり脅迫されていたものと思っている。
早くに母を亡くし、マチルダ王妃の事を自分の母のように思っていた。
いや、初恋の相手といっても良い。
神聖な女神のように崇拝していたのだ。
『ありがとう、ディオン・・・』
だから、その美しくしなやかな手を頬に当てられ、透通る声で礼を言われた時にディオンの心は全く無警戒であった。
『王妃様・・・』
(ディオン・・・)
その声は金色の光と共にディオンの心に直接飛び込んできた。
一瞬の内にディオンの心は甘い心地良い香りに包まれてしまった。
(ディオン。可愛いディオン・・・。
愛していますよ、ディオン)
逆らう事は出来なかった。
マチルダ王妃の金色の瞳はディオンの心を捕らえて放さない。
『お、王妃様・・・』
憧れの王妃の唇が妖しく濡れている。
プックリと朱色をとどめ徐々に近づいてくる。
頬を撫でていた指がしっとりとした感触を連れて、ディオンの首筋を這う。
ディオンの目蓋が重くなっていく。