覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織@-1
友達の母親は未亡人
本間佳織編ー『覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織』
*
(気が重いなぁ…)
本間佳織は憂鬱だった。
佳織の勤める会社の部署の、社員研修会を終えたところだった。
その社員研修会には、静岡支社からも参加者がおり、静岡支社からは佐藤理央ーー以前体の関係を持った、佳織より一回り年下の男性社員が参加していたのだ。
先程の社員研修会で挨拶さえされたわけでもなかったのだが、落ち着くことができなかった。
そして、この気持ちは佳織にとってどういうものなのかわからなかった。
恋仲になった悠斗に悪いと思っているのか。
それともーー
あと三十分ほどしたら懇親会がある。
そこでおそらく、どうしても理央と話をせねばならないタイミングがあるのではないか…
佳織はそのことが怖かった。
会社の近くの居酒屋の、座敷の部屋で懇親会が開かれていた。
静岡支社から来た社員に日帰りで帰った者もおり、参加者は二十名程度と、そんなに多くはない。
この人数ならばこそ、理央に話しかけられるのではないかと気が気ではなかった。
だが、理央は特に、佳織の側に寄ることもしなかった。
(向こうの方が…気を使ってくれてるのかな)
正直その状況に佳織は安堵していた。
会もそろそろお開きになりそうなときのことだった。
佳織の臀部を撫でられたような感覚があった。
(えっ…)
佳織の隣に座っていた四十代半ばくらいの男性が、佳織とは反対側の社員と話をしつつ、さわさわと、佳織の臀部に指先を宛がったらしい。
ちらり、とそちらの方を見やる。
(な、なに……)
東京本社の社員ではなく、その日は席が隣になったために挨拶をした程度で、元々知らない社員だった。
お互い、その日は背を向けたようにして話をしており、その男性とは特に話をしていなかった。
いたずら心のつもりなのだろうか、その男性はすぐさま手を引っ込める。
(気持ち悪いな…。もうすぐ終わるだろうし…)
ふぅ、とため息をついたとき。
次は佳織の膝上あたりにその指が伸びてくる。
(え……)
スカートという布を隔てていても、強烈な不快感が佳織を襲う。
膝上あたりに意識が集中し、パニックになった佳織は、席での話が頭に入ってこなくなる。
腰辺りから膝上にかけて体温が上昇する感覚があった。
隣の男は佳織に背を向けて何食わぬ顔で、指先だけでなく、その手を太ももへと這わせてくる。
汗で粘ついた、じっとりとした感触がスカート越しに感じられて、内臓がしくしくと痛み、吐き気をもよおしてしまいそうだった。