不毛な説得-1
起き上がって必死で逃げようとする美奈子の足を掴んでゆかに転がした。ドア横にある建付けの本棚の脚元にしがみつく美奈子の手を強引に引っ剥がすと足をつかんで部屋に引きずり込んだ。急いで部屋のカギを掛けた。美奈子はドアから少し離れたところの壁を背にして立った。逃げたいが亮介がドアのところにいるのでドアに近づけない。それでも美奈子は母の威厳を示そうとした。
「やめなさいッ。お父さんには言わないからやめなさいッ」、「何やってるか分かってるのッ」、恐怖に顔を引きつらせて震える声で虚勢を張った。亮介は美奈子が大声を上げないことから(大ごとにしたくないんだ)と確信した。
引きずった際に、捲れ上がったワンピースの裾から露出した太腿を見たときから亮介の獣欲は何があっても止められない状態になっていた。白い太腿を目の前にした亮介には美奈子の説得なんて耳に入るはずもなかった。
美奈子は亮介が自分を抱えてドアを押し開いた時に、亮介が自分を犯そうとしていることを瞬間的に察知した。若い性欲は制御が効かないことも知識として知っていた。中学生だと侮っていた自分を悔やんだ。目の前にいる亮介は父親をはるかに凌ぐ体力を持った‘男’そのものであった。
(何としても逃れなければ)。(診療が終わればきっと3階に探しに来てくれるはず)。望みの綱はそれだけだった。だがそれは甘い考えだった。力の差が歴然な二人に与えられた時間は助けを待つには余りにも長かった。