社内秘 飯塚冴子@-6
「ビールでいい?」
「うん、ありがとう」
冴子は先にソファーに座り、近くのスーパーで買い込んだツマミをテーブルの上に広げていた。
「久しぶりね、来たの…」
「最近忙しかったからな。ま、泊まってけよ」
缶ビールと、グラスを持った知親は、テーブルの上にそれを置くと冴子の横に座った。
「ふふ、泊まっていいの?彼女とか、最近いないの」
「いたら泊まれとか言わない…。ってか、いつも泊まってるだろ。今更、何」
肉体関係を持たない一方で、知親とは何度も同じベッドで朝を迎えている。
「乾杯」
かちん、とグラスをぶつけた。
「冴子……本当に大丈夫なの。強引にされて、嫌だったろ。あんな誰もいないとこで」
「そりゃあ、嫌よ。だけど、結果的にそれ以上は何もなかったから」
「ごめん……俺が仕事振ったりしなければ」
「謝らないの。タカギが悪いわけじゃない。……ん。仕事したあとのビール美味しい」
冴子は知親の肩をポンポン、と叩いた。
「ムカつくよな」
「んもう。大丈夫よ。気にしないで」
「ーー違う」
知親は、持っているグラスの中身を飲み干すと、グラスをテーブルの上に置いた。
そして、冴子のグラスも奪い取り、テーブルの上に置く。
「どしたの…。タカギ」
「ムカつくんだよ。ずっと大事にしてきたのに」
「えっ…ん、んんんっ…」
知親の唇が冴子の唇に押し当てられて、冴子の口腔内に舌が入ってくる。
冴子は、こんな知親をーーこんなにオスを感じさせる彼を見たことがなかった。
「俺、ゲイでも何でもないよ。冴子が好きだ。だから、許せない」
「…えっ…え……?」
黒革のソファーの上に冴子の体が沈む。
「ヤリマン…なんだろ。俺のこと鎮めてくれよ。あいつ、直接、冴子のこと触ったの…?どこまで触られたの…?」
「ん…胸、触られただけ……だよ。タカギ、本当はあたしとエッチしたかったの……?我慢してくれてたの?」
「したかったよ。エロいこと…」
知親はジャケットと、シャツを脱ぎ捨てる。
ボタンで留められ、襟で隠れて見えなかったが、首元にはシルバーのシンプルなネックレスがつけられていた。
ーー十年前、冴子が異動になった際、お詫びにとプレゼントしたものだった。
「え、それ…つけてくれてたの…。そんな、若い時にあげた安っぽいもの……」
「はは、恥ずかしい。泊まる時とかバレないようにしてたけど、仕事の時もずっとつけてるよ。
ーー今日は優しく出来ない、ごめん。ワガママ言わせて欲しい。強引なことしてるってわかってる…」
「ふふ、いいよ。しよっか……」
冴子は知親の正直な申し出にクスクスと笑って、頬に手を添えてじっと見つめる。