L平井加寿美35歳-8
「もうこんな事は今日でお終いよ。明日からは普通の隣人として親しくお付き合いしましょ。
主人やご近所の目があるから変な馴れ馴れしさはご法度よ。じゃーね。」
だが少年は玄関には向かわず本立て横のコンセントを抜いた。
コードの先端は本と本の間に伸び少年はそこから小型のビデオカメラを取り出す。
「高画質だとバッテリ−で2時間しか取れないんだ。凄いのが鮮明で5時間バッチシだな。」
そうつぶやきながら笑顔で帰る少年をぼんやり見送るしか出来なかった。
ドアーの閉まるバタンという音にハッと我に返る。
(とっ撮られた。スパイダー騎乗位の杭打ちピストンも、快感に震えながらの激しい絶頂も、
「チンポをマンコにハメて!」の恥ずかしい言葉も。)
しかし少年はそれ以後何も言ってこなかった。
また悠馬の誕生日の時と同じように忽然と現れるのだろうなと想像していた。
だが2カ月がたち3カ月がたっても平穏な近所付き合いが続いている。
一度マンションの入り口でバッタリ出会った事があったが当たり障りのない会話に終始した。
すれ違った住人の目には貞節な人妻と勉強熱心な学生に見えた事だろう。
しかし加寿美はあの日の出来事を考えない日はなかった。
あの日の出来事だけではなかった。
翔がこのマンションに引っ越して来た時からの出来事を毎日何度も思い出してしまうのだ。
加寿美の頭の中は翔少年で占められていると言っても過言ではなかった。
当然あの日感じた気持ち良さも思い出す事になる。
しかもその記憶は日が経つに連れて鮮明になっていく。
あの強烈な快感を感じた後、加寿美は夫とのセックスやオナニーでは感じなくなっていた。
それは3カ月のセックスレスを意味し欲求不満の原因になる。
(そうだ。あの録画を消してもらう為にはあの子の部屋へ行ってお願いするしかないわ。
その見返りにセックスを要求されても消して貰う事の方が大事だわ。
あの日は催淫剤を飲まされたため不覚にも何度も逝かされたけれどもう大丈夫よ。
でも今あの子を訪ねたら変に勘違いされてしまうわ。
あの子が我慢出来なくなって脅迫してくるまで待つのよ。)
しかし表面上は平穏な日々が毎日続く。
(相手はまだ16歳の少年だ。あの子にとって35歳の人妻を落としたことは大きな勲章のはずだ。
自慢して友人たちにあの映像を見せるかもしれない。
友人ならまだしも見せる相手が近所の住人だったら・・・・・・・・恐ろしい。)
そう考えると悠長に構えておれなくなった。
その夜夫や息子が寝入った後、腹をくくってそっと部屋を出た。
瞬間、翔の部屋のドアが開き入っていく人影を見た。
2軒隣の浦井さんの奥さんだ。
浦井夫婦は結婚してこのマンションを新居と決め入居してきてまだ6カ月だ。
その新婚の那奈さんが深夜の1時に独身男性の部屋尋ねるなんて。
そう言えば美人だし25歳のその身体もピチピチして魅力的だ。
あの後何にも言ってこない理由が分かったような気がした。
彼女を堕とすのに夢中で私の方まで手が回らなかったのだ。
というよりあの盗撮映像を持っている限り何時でもどうにでも出来るとなめられたのか。
35歳の女より25歳の女を選んだとは考えなかったがちょっと悔しい思いもあった。
(でももし私より那奈さんに夢中ならあの録画を消させるチャンスだわ。)
翌日は深夜ではなく悠太を塾へ送り出してすぐ翔を訪ねた。
「やぁ加寿美さん。来てくれたんだ。嬉しいよ。」
と言って乱れたベッドをかたずけ始める。
「君と那奈さんの事ご主人が知ったらどうなるかしらね。」
「浦井さんの奥さんとは何でもないよ。ゴミの分別の事で注意され教えて貰っただけだよ。」
「ふーん。ご主人が寝た後の深夜に独身男性の部屋で何を教えて貰ったって?」
「チェッ、見られたのかい。でも証拠がある訳じゃないだろう。」
「馬鹿ね。新婚夫婦の不倫に証拠などいらないわ。
ちょっと耳元で囁くだけで理性を失った夫が君の家に怒鳴り込んでくるのは明白よ。
逆上していたら刃傷沙汰になるかもよ。さぁ、どうする?」