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「大人の雰囲気のバー」
【SM 官能小説】

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(5)縛られて晒される典子-1

「さて、どうですか?」
「はい。さっきよりも苦しいです」
「ふむふむ。苦しいだけ?もう少しで下着が見えちゃいそうだけど?」
「あっ、はっ、はい。それは・・・。すごく恥ずかしいです」
「そうですか。ちょっとボキャブラリーが少ないようですね」
マスターはまだ不満げだった。
「もう少し良いお言葉をいただきたい所ですが、どうしましょうかねぇ・・・」
マスターが典子の足を引き上げる縄を掴んでさらに引っ張ろうとする。
「あぁっ、いやぁっ・・・」
まだ大丈夫だが、もしさらに足が引き上げられたら麻里子のいる位置から典子のスカートの中がギリギリ見えるか見えないかもしれないくらいになっていた。
マスターの立っている位置の関係でカウンターの他の客からは見えないだろうし、後ろソファー席は少し高くなっているので見えないだろう。
敢えてそこまで計算してやっているのかもしれない。

「いやぁっ。助けて・・・」
はっきりとは聞こえないが麻里子には典子の口がそう動いているように見えた。
(いくらなんでもちょっとやり過ぎなんじゃないの・・・)
ここまではまだ余興で済むかもしれないが、これ以上はそうも言っていられない。
(こうなったら私が・・・)
酔っている事もあって、少し大胆になっているのか、麻里子は典子を助けようと意を決した。

「ちょっ、ちょっと・・・」
典子の苦境を見るに見かねて麻里子が立ちあがる。
しかし、まだ店内の他の客は麻里子には気付いていないようだった。

「おっと、どうされました?」
マスターの声に客達も麻里子に気付いたようで、少しザワザワと騒々しくなっていた。

「これはこれは、確か、典子さんのお連れの方ですね」
麻里子は無言で頷いた。

「まあまあ、とりあえず貴女もこちらへどうぞ」
マスターは麻里子にステージに上るように促す。
「はい」
一瞬躊躇したがここで引き下がるわけにはいかない。
麻里子は毅然とした態度を示そうと背筋をスッと伸ばすとステージに上がる。
その頃には事態を把握したのか、客達も静かになっていた。

「先輩さんのお名前は?」
麻里子が口を開く前にマスターが麻里子に問い掛ける。
「ま、麻里子です」
典子を助けると決めて出てきたがそれでも大勢に見られている事で麻里子は緊張してしまう。

「麻里子さんもこういうお店は初めてですか?」
「はっ、はい。もちろんです!」
麻里子は顔を真っ赤にしてそう答える。
「そうですか、さすが見た目も中身も清純派って事ですね」
マスターが茶化すように言うが、麻里子はそれどころではなかった。
「そ、そんな事より・・・」
「ところで、なんで割り込んでこられたのですか?」
「もしかして、麻里子さんもこういう趣味があるとか?」
そんな麻里子をはぐらかすかのように矢継ぎ早にマスターから質問が飛んでくる。

「ち、違います」
「そうですか。じゃあ、なんで?」
「えっ、典子を助けに・・・」
「典子さんが助けを求めたんですか?」
「えっ、いっ、いや、でも、さすがにこれはやり過ぎだし」
「やり過ぎ?」
「何かまずい事やっています?」
「どこがどうまずいか説明していただけますか?」
「えっ、そっ、そんな事は・・・」
完全にマスターのペースだった。

「ところで、お2人はどういう御関係でしょうか?」
「か、会社の先輩です」
「そうですか。『可愛い後輩を助ける為に立ちあがる先輩』と言う構図ですね」
「・・・」
麻里子は無言でうなずく。

「そう言われてもこれはあくまでも余興ですので、助けるも何もないんですよね・・・」」
マスターがマイクから口を外すとわざと困ったように麻里子だけに話す。
「お客様方もちょっと興醒めされているようですし・・・」
確かに店内の雰囲気はあまり良くはない。

「何しているんだよ!」
「今良い所だったのに!」
少し怒ったような怒号にも近いような呟くような声が聞こえてくる。

「困りましたね・・・」
マスターはまたしても困ったように麻里子の方を見る。
「わかりました。では、麻里子さんが典子さんの身代わりになるのであれば、この場はなんとか収められるでしょう。そうしましょう」
マスターは麻里子の了解を得ずに一人で小さい声で呟きながらうなずくとマイクを手にする。


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