ただのPBじゃない-1
睨み合うマギーらと覆面男達。3対10、マギーらの劣勢は明らかだ。しかし元治はこんな不利な状況でも落ち着いていた。
「警察の応援はまだなのかよ?」
小声で言った。
「多分あと10分ぐらい…」
「10分はキツいなー。そこまで時間稼げねーよ。」
覆面男らとのやり取りも応援がかけつけるまでの時間稼ぎだったのか、そう思うマギー。それを考えていたとは思わなかった。
「やっちまうか?3人で」
「無理よ。あっちは10人はいるでしょ?」
「いるがなー、果たしてあの中に何人まともに銃を扱える奴がいるかな。あいつら殆どが辿々しいじゃないか?」
マギーが覆面男達を見ると、たしかに銃に不慣れであるような構えをしている。堂に入っているのは2人ぐらいか。そもそも日本ではよほど特殊な訓練を受けた者、もしくは頻繁に銃を撃つ機会は殆どない。銃に慣れている人間などそんなにはいない。この状況でその判断力、元治と言う人間は自分が抱いているイメージの男ではないような気がした。
「あなた、ただのプレイボーイじゃなさそうね?」
マギーの言葉に元治は少し口元を緩めた。
「プレミアムプレイボーイさ。」
「フッ…」
マギーは鼻で笑う。
「俄然あなたに興味が湧いてきたわ?」
「じゃあベッドで俺を色々調べてみろよ?」
「ベッドじゃなくて取調室で、ね?」
そんな2人を見て覆面男が怒鳴る。
「何をコソコソ話してるんだ!さっさと佐川明子の居場所を教えないとコイツらみんなぶっ殺すぞ!」
事務員の頭に銃口を当てる。悲鳴を上げる事務員らは怯えていた。
「大丈夫だ、あいつらにそんな勇気があるとは思えない。もう応援なんか待ってらんねー。仕掛けるぞ!」
「そうね。まずは人質の安全が先よ。人質に銃を向けてる2人を先に始末してから他のを狙う。」
「さすが。考えドンピシャだわ、俺と。」
「それは光栄でございます。華英、いいわね?」
「オッケー。私は他の奴らをやっつける。」
「頼むわ。」
作戦実行だ。
「分かったから、最低俺のかわい子ちゃんから銃口を離せ。」
「あ??」
「かわい子ちゃん殺しても何の意味もないだろ。」
「指図は受けねーんだよ!」
覆面男は思わず威嚇の為、銃口をかわい子ちゃんの顳顬から離し、元治の方に向けた。そのチャンスを逃さないマギーと元治。まず銃声が2回響いた。まさか発砲してくるとは思っていなかった覆面男達は完全に意表を突かれた形になる。
「ぐおっ!」
膝上に被弾した、かわい子ちゃんに銃口を向けていたリーダーらしき男が顔を歪めて崩れ落ちる。続いて人質に銃を向けていた男の、銃を握る右腕に被弾、そして華英がひるんだ覆面男らに向かい発砲、そしてマギーと元治も参戦し覆面男らの腕を次々に撃ち抜いた。
「ぐおー!」
腕を押さえて崩れ落ちる覆面男達。マギーはすぐさま接近し、リーダーの手から銃を蹴り飛ばした。