ただのPBじゃない-7
「長い因縁…、もしかして3億円強奪事件に何か関係あるのかしら？」
マギーがそう言うと、元治は一瞬驚いたような顔をした。
「さぁね。」
素っ気なく振る舞う元治だが、マギーは脈ありだとよんだ。
「金成和弘とか、知ってる？」
今度は固まった。どうやら関係しているようだ。だがマギーは元治と、3億円強奪の実行犯である金成和弘が何かで繋がっていると言う証拠がある訳ではなかった。キーワードを出し、引っ掛かれば儲けものぐらいの気持ちで言った言葉が見事にヒットした。元治はこのまま惚けようか、それとも白状するか迷っているような様子であった。
「金成和弘は事件後に亡くなってる。私のよみだと、金成和弘は誰かに消されたんじゃないかと思ってる。例えば当時の警視総監木田康介、とか。」
「…」
元治は固まったままだ。マギーは推理が核心をついていると感じた。ここは攻め時だ、自分の中で見えたものをそのまま口にする。
「金成和弘の父親、金成達夫は巡査部長、警官。私達の調べでは金成和弘が3億円を強奪した実行犯だと言うことが分かってる。私は警察官の息子がそんな事件を起こしたとなれば大問題だと考えた警察が彼を抹殺して犯人を闇に葬った…とは思わない。」
「…」
元治はマギーに顔を向ける。
「警察の威信を守るためではなく、金成和弘に3億円を強奪させた人物を守る為に、いや金成和弘に指示を出した高島謙也に犯行を促した木田康介自身を守る為に金成和弘は消されたんだと思ってる。木田康介が高島謙也に強奪させた3億円を元に目立を立ち上げ、将来横芝を奈落の底に落とす為に仕組まれた計画、いや復讐。何の復讐か…、それは妻を横芝社長に略奪された復讐。その復讐劇の犠牲になったのが金成和弘…、私はそうよんでるけど？」
「…」
元治は何かを言いたそうなのをグッと堪えているようにも見える。よみは当たっていると言う確信が持てた。
「当時、マスコミも金成和弘が犯人なのではないかと騒いでいた。しかし証拠は出てこない。そりゃそうよね、警察が逃走の手助けをして、おまけにその証拠をことごとく消して行ったんだから。警察は似ても似つかないモンタージュ写真を公開し世の中を混乱させる事に成功した。金成和弘が犯人か、そうじゃないのか…、世の中が騒いでる中、金成和弘は死亡した。その時点でこの事件が迷宮入りするのは必至だった。数々の証拠とともに犯人はこの世からいなくなったんだから。犯人は…」
マギーは金成和弘＝犯人を意識した言葉で元治に話した。その挑発に元治は乗って来た。
「…犯人じゃ…ねぇ。」
そう言った瞬間にニヤッと笑ったマギーを見て、しまった、と言う表情を元治は見せたのであった。