家族旅行での出来事 夫婦交換 3-6
「子どもたちが寝付いてから、意気投合して、4人で飲み始めて……。
まあ、おもてなしというよりは、プライベートな感じでね。」
「ええ。で、そのうちに、自然に、夫婦交換になったの。」
「えっ?じゃあ、史恵と哲郎も?」
「ああ。ボクたちも、結構お互いに気に入ってたんだけどね。」
哲郎と史恵は顔を見合わせたまま、しばらく黙り込んだ。
「……。でも、子どもを捨ててとか、離婚して、
なんてことまで考えなかったわ。」
史恵はホッと大きく息を吐いた。
「でも、二人は違ったのさ。
翌日、子どもたち4人が山に遊びに行っている間に車で出かけて、
路肩に停めて、車の中で……。」
「この辺り、少し車を走らせれば、人通りもほとんどなくなるからね。
昼間であっても、誰かに覗かれる心配もないってわけさ。」
「ただ、なにかあっても、なかなか発見してもらえない、
って言うことでもあるんだけどね。」
「で、サイドブレーキが外れたらしくて、そのまま谷底へ……。」
「きっと激しく動いたのよ。それでサイドブレーキが外れたんだわ。」
「鑑識の結果も、そういうことだった。つまり、人為的なミスというか……。」
「まあ、そんなこととは予想もしていなかったこっちは大騒ぎさ。
お客様が行方不明になったってね。
しかも、旅館の女将も一緒。子どもたちは置いたまま。」
「で、捜索願を出しの。結果、捜索隊まで出ることになってね。」
「結局、車が発見されたのが3日後だったかな。」
「二人とも、全裸で、即死状態だったそうなの。」
「こっちもいろいろと事情を聴かれたり……。」
「まあ、互いの親も、結構こじれたりして……。」
「告別式だ、なんだかんだ、一区切りついたら、
急にこの人のことが恋しくなって……。
気がついたら、子どもたちを連れて、ここに戻ってきたいたの。」
「まあ、ボクも同じ気持ちだったからね。」
「気がつけば、どちらかともなく抱き合っていたわ。
朝から晩まで、仕事も子どももそっちのけで。」
「そしたら、子どもたちの方が勧めたのさ。
一緒になっちゃえってね。」
「史恵……。いろいろあったのね……。」
「ばかね。香澄。いろいろあるのが人生なのよ。」
「ああ。生きているっていうことさ。」
「こうなるのも運命だったのかしらって思ってね。」
「ボクと史恵は、出会うべくして出会い、一緒になるべくして一緒になった……。」
「初めてのおもてなしの時、わたし、哲郎のことを運命の人だって思ったのよ。」
「ああ。ボクも史恵のことを、理想の女だと確信した。」
「でも、わたしたちはその気持ちをお互い口にはしなかったの。」
「じっと身体を重ね合わせるだけ。
一夜限りの関係だと思い込むことで、感情を押し消そうとしていたのさ。」
「でも、わたしの夫も、哲郎の奥さんも、そうじゃなかった。
お互いの感情までも確かめ合ってしまったの。」
「うちのやつは、史恵の旦那と身体を合わせるだけじゃなく、
心まで合わせてしまったのさ。」
「でもね。二人が行方不明になって、発見されるまでの間、
わたし、ずっと考えていたわ。
それで思ったの。
わたしと哲郎は、
哲郎の奥さんとわたしの夫よりも、
勇気がなかっただけかもしれないって。」
「ああ。それだけじゃないさ。
欲望のために家庭を捨てるなんて、
非常識だと思ったし、世間体も考えた。」
「うちの人も、哲郎の奥さんも、
自分に正直だっただけなんじゃないかって思ったのよ。」
「そしてその思いに素直に従って行動しただけのことさ。
まあ、事故に遭うというところまでは考えてもいなかっただろうけどね。」
「でも、結果的には、ボクも、子どもたちも、
隠していた自分の本当の気持ちに正直に生きることができたっていうわけさ。」
「そうね。結果的には、あの人や哲郎の奥さんに感謝しなくちゃね。」
「まあ、4人でうまくやっていくっていう選択肢もあったとは思うんだけどね。」
「今だったら、そういう提案もできたかなって思ってるの。本心から。」
「今は……。幸せ、っていうこと?」
香澄は史恵の顔を見ながら、ゆっくりと言った。
「そうね。でも、やっとそう思えるようになったっていうところかしら。」
「子どもたちが勧めてくれたのさ。
新しい家族になったんだから、新しい形の家族を作ろうってね。」
「新しい形の家族?」
「ええ。家族全員で、一番楽しい時間を送るっていうことよ。」
「簡単に言えば、家族交歓さ。」
「家族交歓?」
「つまり、ボクたち夫婦は、子どもたちともセックスをする。
子どもたちも、兄妹同士でセックスをする。
「わたしたち、6Pをしているの。
もう、かなり前から。」
「それで、家族そろっておもてなしをすることを思いついたんだ。」
「そうすれば、楽しみの可能性がもっと広がるでしょ?」
「現に、今も真央ちゃんと、利彦と雄大が楽しい時間を送っているわけだ。」
「ねえ、どう?もしも香澄たちが望むなら……。」
「ああ。明日のお客様も交えて……。」
「明日のお客様も交えて?そんなことが可能なの?それに、娘さんたちまで……。」
「明日いらっしゃるお客様はご夫婦二人きりでね。お子さんはいないんだ。」
「そうなの。でも、お二人とも、わたしたちとの交換だけじゃなく、
子どもたちも交えての交歓を毎回ご希望されて。」
「雄大や利彦、沙織に奈々美も、顔見知りというか……。
身体も知っている方たちなのさ。」