屠られる甘熟体-5
悔しくて目尻がピクピクと引き攣る。
怒りが込み上げて口元がグニャリと歪む。
グラビアアイドルという幻想を捨て去って十数年を経た今でも、自分はそういう風に≠オか見られない女なのだと思うと哀しくて悔しくて、そして執拗に欲情の目を向けてくる男共が憎らしくて堪らない。
抑えきれぬ感情のままに張り手でも喰らわせてやろうか……それとも視界に入るドアノブに飛び掛かって逃げ出そうか……一人の男がデジタルカメラを持ち出してきたのを見た雪絵は立ちあがろうとしたが、娘の事を思えば其れ等は選択肢にはなり得なかった……。
『イヒヒッ!?身体に聞くのが一番早いよなあ?今からDVDの初回限定品を撮ってやるからポーズ決めてくれよな』
「〜〜〜〜ッッッ!」
デジカメを構えた吉田は舌をベロリと伸ばして雪絵を煽る。
やはりグラビアアイドルとしての川上ゆきえ≠撮らなければ……世の男共のオナペットとしての需要しか無かった一人の女性に、なにやら奇妙な腹立たしさを感じていた吉田の思いは、言葉を交わさずとも此処に集う連中の総意であった。
『どっちから脱ぐ?胸かケツか聞いてんだよ。あ〜、別に答えなくてイイよ、態度で示してくれれば』
「……ぐッ…!」
カメラのレンズと男共の瞳が冷たく輝いている。
自分は道具だ……ただの見世物だ……最初の頃は誇りを持って挑んでいた《撮影》を、性の掠取だと思い詰めるまでにしたのは汚らわしい男共のせい……様々な感情が湧き上がり、ブルブルと落ち着きなく震える両手でジャケットとYシャツのボタンを外した……じっとりと汗ばむ肌が露わとなり、淡いピンク色をしたブラジャーに抱えられる柔肉の巨大な山並みが現れた……。
『……はあ?何がレジェンドグラドルだよ。腕組みして胸を持ち上げるとかなんかポーズ取れよ?』
「くッ!う…うッ」
雪絵の胸の中の何処かが痛みを感じた。
グラビアアイドルとしてのプライドなど完全に捨てたはずなのに、ズブの素人の指図がグサリと刺さってきた。
『思わずチンポ握りたくなるようなポーズ決めてみろよ。それともこんなショボいカメラじゃ気分が乗らねーかあ?』
『俺らがシコってザーメンぶち撒けりゃ姦られねえで家に帰れんだぜ?少しは本気出してみろよ』
「ッ……!」
この胸の痛みはグラビアアイドルとしてのプライドが傷ついたからではない。
一人の女性としてのプライドが嘲られる怒りの感情が放つ痛みだ。
Yシャツを開け、腕を組んで自慢の豊かな乳房を持ち上げた雪絵は、パシャパシャとシャッターを切るカメラをキッと睨んだ。
『お〜!イイ表情してるじゃないか。こりゃあチンポにくるぜえ?』
『ギラついた垂れ目が堪んねえなあ?「わたしでシコりなさい。この童貞!」とか思ってそうだぜ。ククク!』
今まで感じた事がないくらいの怒りの感情がこの険しい表情を作っていた。
だが、それから感じられるのは艶かしいほどの《挑発》だった。
見る者を魅了してきた川上ゆきえ≠フ幻想は未だ健在……性的な昂りを見事に与えてくる、グラビア女王の尊大さと狂おしいほどの媚態がそこにはあった。